福岡県議会で、自民党県議団の幹部から約2000万円を「カツアゲ」されたとする現職県議の告発から始まった「カネの闇」をめぐる疑惑。
告発された側は金銭の授受を全面否定し、主張は真っ向から対立しています。
そんな中、数少ない客観的証拠になりうるのが、当時のやり取りとされる音声データ。
“声の主”とされる中尾正幸副議長は「よく似ているが記憶にない」と説明していました。
そこで、音声データの鑑定を専門機関に依頼したところ「99.99%以上、中尾正幸副議長の声とみられる」ことが判明したのです。
13日放送の関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では長年にわたり福岡県議会を取材してきた福岡県出身のジャーナリスト・鈴木哲夫氏が「音声鑑定は非常に大きな1つの証拠になると思う」としつつも“言い逃れできる可能性”について指摘しました。
■「記憶にない」と説明された音声データを鑑定すると…
事の発端は、2020年から1年間議長を務めた吉松源昭県議が、議長就任をめぐって、他会派への根回しのゴルフ代などの名目で、当時の副議長と合わせて約2840万円を支払ったと証言したことです。
吉松県議が示した中尾副議長の声とされる音声データには「あす松本会長が『荷物』を預かります。『大金』やけんね、管理しとかんと」といったやり取りが記録されていました。
中尾副議長はこれまで「(自分の声に)よく似ているが記憶にない。そもそもお金は受け取っていない」と話してきました。
そこで今回、テレビ西日本と西日本新聞が共同で「日本音響研究所」に声紋鑑定を依頼。
すると、「99.99%以上、中尾副議長の声とみられる」ことが判明したのです。
■99.99%以上“本人の声”でも、言い逃れできる?
この新事実を受けて、長年にわたり福岡県議会を取材してきた福岡県出身のジャーナリスト・鈴木哲夫氏は「音声鑑定は非常に大きな1つの証拠になると思う」と評価しつつも、中尾副議長が否定し続けられる余地があると指摘しました。
【鈴木哲夫氏】「会話の中身で、確かに『大金』という言葉は出てくるんですが、それ以外が非常に曖昧な言葉のやり取りになっている」
例えば、音声データに登場する「荷物」という言葉が、現金の隠語であったとしても、「そんなものは知らない」と言い逃れられる余地が残されていることになるといいます。
■真っ向対立する双方の主張
この告発をめぐっては、福岡県議会の”ドン”と呼ばれる蔵内勇夫議長も「これまで2度議長選挙に立候補したが、金銭の話は一切ない」と全面否定しています。
鈴木氏は「完全な水掛け論で、言い合っている限り解決しない」と断言しました。
そのうえで「どっちかは嘘をついている」という構造を明確に指摘し、もっと別の証言が出てくるか、徹底した調査がなければ真相には近づけないとの見方を示しました。
■“県議会のドン”蔵内議長は「麻生太郎氏と影響力を競い合う」
この疑惑の中心人物の1人、蔵内勇夫議長(72歳)について、かつてテレビ西日本の報道記者として取材経験もある鈴木氏が詳しく解説しました。
1987年に県議初当選、現在10期目を迎えるベテランで、2001年と去年からの2期、福岡県議会議長を務めています。
職業は獣医師で、鈴木氏は「初当選のとき私が福岡県庁の記者クラブを担当していました。新人として面白い存在だった」と振り返りました。
鈴木氏によると、長年にわたって議会内の人事や県の予算に影響力を持つようになり、いまや「県議会のドン」と呼ばれるに至ったということです。
鈴木氏によると、麻生太郎元総理(福岡8区)や武田良太元総務大臣(福岡11区)といった国政の大物と影響力を競い合うほどの存在感を持ち、「福岡では大物政治家と肩を並べる存在」だということです。
自民党の福岡県議の主流派は蔵内氏を中心に形成されているといいます。
■「しがらみのない元検事を」第三者委員会への厳しい注文
福岡県議会は第三者委員会による聞き取り調査を行う方針を示していますが、鈴木氏はその実効性に疑問を呈します。
【鈴木哲夫氏】「蔵内さんに近いような弁護士を選んでもだめ。東京から元検事の厳しい人みたいな人を呼ばないとこの調査に意味はない」
さらに鈴木氏は、取材を通じて得た情報として「北関東のある県議会、九州の他の県議会でも同じような話が流れている」といいます。
こうした状況を踏まえ、「今回きちんとけりをつけないといけない」と強調しました。
福岡の疑惑が全国の地方議会の問題を映す鏡になるのでしょうか。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年7月13日放送)
