2026年も始まった富士山の夏山シーズン。さっそく国内外から大勢の人が詰めかけている。しかし、忘れてはいけないのは、富士山は活動を続ける「火山」ということだ。
富士山は活火山 火口は100個以上
2014年、御嶽山で起きた水蒸気爆発は、死者58人・行方不明者5人という事態になった。当時、危険度を示す「噴火警戒レベル」は1。その表現は「平常」だった。安全だとイメージされかねないとして、その後レベル1は「活火山であることに留意」に改められた。現在、富士山の警戒レベルは「1」。他の山と違うのは、火口が100個以上あり、レベルの運用が異なることだ。富士山の場合、火口の場所がわからないので、噴火警戒レベルは2を使わず1から3に上がる。静岡大学の小山真人名誉教授は「1から3に上がる前に出される火山の解説情報に気をつけてほしい」と呼びかけている。
「解説情報」のうち特に注意すべき「臨時」の情報
気象庁は51の活火山について、24時間365日常時観測をしている。地下で起きる地震の回数や地殻変動、温度変化といったデータを取り、異常がないか「解説情報」として発信している。特に気をつけるべきは「臨時」で出される情報だ。小山真人名誉教授は、「いま臨時というラベルが付くと、登山者に対して下山指示が出る。観光客に対しては(一定エリアの)富士山麓にいても帰宅指示が出る」と説明し、気象庁からの情報に気を配るよう呼び掛けている。
噴石・火砕流・溶岩・火山灰の影響も懸念
富士山では、大きな噴石が2km~4km程度、飛び交う可能性がある。続いて起こり得るのが火砕流だ。数百度の岩石や破片が火山ガスと流れ下る現象で、長崎・雲仙普賢岳では、多くの人の命や住まいを奪った。富士山では数kmに及び、山麓の市や町に到達するおそれがある。溶岩は900℃から1200℃で、山を下る可能性がある。さらに火山灰は、静岡県中部から首都圏まで広く降り積もり、交通機関や水道、農業など、社会生活に甚大な影響が予想されている。
前兆的な地震から数時間以内に噴火するおそれも
気にかけるべきなのは富士山・直下の動きだ。小山真人名誉教授は可能性が高いケースとして、低周波地震活動が高まってマグマが上昇してくると、地下数kmくらいの浅い場所で地震活動が起きやがて噴火に至るケースを挙げた。
2000年2001年にかけて、富士山の地下深くで、人が感じられない程度の低周波地震が起き、その地震活動が頻発して、社会に緊張が走ったことがある。低周波地震が噴火につながる兆候かどうか、調査が続けられるとともに、各市町村や住民への伝達、富士山を監視する訓練が行われた。山梨県では、被害、犠牲者が出た事態を想定し、実践的な対応も確認された。気象庁では、ハザードマップの策定も進められたが、その後、事態は終息していった。ただ今後、急激に危険度が高まる可能性は否定できない。マグマに粘り気が少ないことが共通する、他の火山の例を考えると、予兆が出て短時間で噴火という事態も考えられる。小山真人名誉教授は「粘り気が少ない火山の例から考えると、前兆的な地震が起き始めてから数時間以内に噴火というのはあり得る」と指摘した。
9月まで続く夏山シーズンに、例年20万人以上が訪れる富士山。登山者はもちろん、それ以外の人も火山情報に注意しておく必要がある。

