大阪地検特捜部にいた現役の検事が起訴された異例の刑事裁判がついに始まりました。
「検察なめんな」などと威圧的な取り調べでえん罪を生んだ検察組織の責任が問われています。
きょう=10日、報道陣のカメラが待ち構える先には、初公判に出廷する被告の姿が。その被告とは、現役の検事でした。
■「検察なめんな」
ことの始まりは、不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長・山岸忍さんが土地取引をめぐり部下らと共謀して21億円を横領したとして逮捕・起訴された冤罪事件。
(取り調べ映像より)
【大阪地検特捜部(当時)・田渕大輔検事】「なんで嘘ついたの」
【Kさん】「嘘っていうか同僚…」
【田渕検事】「嘘だろ。嘘をついて、まだ言い訳するなんてひどいだろ!」
裁判の過程で発覚したのは、大阪地検特捜部にいた田渕大輔検事(54)が山岸さんの部下をどう喝し、「山岸さんが関与していた」という嘘の供述を引き出したことでした。
【田渕検事(取り調べ映像より)】「失敗したら腹切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ。検察なめんなよ」
■「再び冤罪事件が起きてしまうのでは」国に損害賠償を求めて提訴
山岸さんは、違法な捜査があったとして、国に損害賠償を求めて裁判を起こします。
【プレサンスコーポレーション元社長 山岸忍さん】「きっとこのまま変わらず再び冤罪事件が起きてしまうのではないかと」
裁判では、事件を担当した4人の検事への証人尋問が行われましたが、結局、検察の組織的な関与がどこまであったのかは、明らかになりませんでした。
■「付審判請求」で現役検事が被告人となる初めての判断
特捜部の中で何があったのか。このまま闇に消えてしまうと思われましたが…大阪高裁は、取り調べを行った田渕検事の「起訴」に踏み切ったのです。
「付審判請求」(ふしんぱんせいきゅう)は、公務員が職権を濫用する犯罪等に限っては裁判所に“起訴”するよう求めることができるという手続きです。この手続きで、現役検事が被告人となる初めての判断でした。
また、大阪高裁の村越一浩裁判長は、検察組織の問題点を指摘。
【村越一浩裁判長(決定文より)】「本件は個人の資質や能力にのみ起因するものと捉えるべきではない。取調べの運用の在り方について、組織として真剣に検討されるべきである」
この判断に対して、山岸さんの弁護団は…
【西愛礼弁護士】「すごいな…なんか弁護団の思い、山岸さんの思いが(裁判所に)通じてる気がしますね」
裁判の“検察官役”として裁判所に3人の弁護士が指定され、およそ1年にわたり補充の捜査が行われました。
【検察役の指定弁護士・山口昌之弁護士】「(取り調べの)組織的な背景なり関与なりについては、当然あるものだと理解しています」
■異例の裁判の初公判で田渕検事は無罪を主張
そして、異例の裁判は10日、初公判を迎えました。
落ち着いた様子で裁判所に入った田渕検事は起訴内容について問われると…
【田渕検事】「今回、私が裁判を受けることになった言動に間違いありません。陵辱、加虐に当たる行為ではなかった」
田渕検事は「陵虐にはあたらない」と無罪を主張しました。
■「取り調べのあり方が根底から変わることになる」検察官役の指定弁護士
続いて、検察官役の指定弁護士はこの裁判の判断で「取り調べのあり方が根底から変わることになる」と話しました。
さらに、特捜部の副部長と取り調べをチェックする役割を担う2人の検事が、田渕検事の取り調べ映像を見ていたにもかかわらず、組織の中で問題視することなく起訴に至ったと指摘。
【検察役の指定弁護士・山口昌之弁護士】「組織として監視の体制があったにもかかわらず機能していなかったということが立証できた」
■「こんな人権侵害って本当にあるんですか」プレサンスコーポレーション元社長の山岸さん
山岸さんと弁護団も会見を開きました。
【プレサンスコーポレーション元社長 山岸忍さん】「本当に驚きました。かなり、我々一般国民と彼ら(検察)の中で意識・常識の乖離があるんだなと感じました。何の客観証拠もなかったわけですよね。
ところが彼らは私のことを本当に悪い奴ということを断定して、私の逮捕に突っ走ったわけですんで、こんな人権侵害って本当にあるんですか」
次回の公判で取り調べの録画映像が法廷で再生される予定です。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年7月10日放送)
