選手がいなくなっても、部を離れなかった。「辞めそうになったのを止めてくれた先生方にも、受け入れてくれた魚津工業の皆さんにも感謝しかない」—上市高校3年・原美羽さんは今、10人の選手を1人で支えるマネージャーとして、連合チーム「魚津工業・上市」の夏に臨んでいる。

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「今は選手0人でマネージャー私だけ1人でやっている」

夏の高校野球富山大会が10日から始まる。今大会に出場する連合チーム「魚津工業・上市」には、少し特別な事情がある。上市高校からの参加者は、マネージャーの原美羽さん(3年)ただ1人なのだ。

毎週末、原さんは魚津工業高校へと向かう。そこに上市高校の仲間はいない。「原ちゃん」とチームメイトから声をかけられながら、記録や準備をこなす様子はやる気に満ちていた。

先輩が引退し、部員は原さん1人に

3年生が引退して原さん1人が残った上市高校野球部
3年生が引退して原さん1人が残った上市高校野球部

昨夏の富山大会、魚津工業は単独で、上市高校は雄山・中央農業との連合チームとして出場したが、ともに初戦で敗退した。大会後、上市高校野球部の3年生2人が引退すると、残ったのは原さん1人になった。

「いざ本当に(先輩が)いなくなってしまうと、自分1人でどうしよう、選手ありきの部活なので、困惑が強かった」

選手なしで部活を続ける意味を見出せず、野球部を辞めることも頭をよぎった。そんな原さんに手を差し伸べたのが、魚津工業だった。

「最後の夏を一緒に見届けてほしい」と監督

「原さんも野球が好きでがんばってきたので、魚津工業の3年生の最後の夏を一緒に見届けてほしいと思い、こちらから声をかけた」と沢辺監督は語る。

その言葉が、原さんの背中を押した。もともと小学生のころから自らプレーするほど野球好きで、頭の中は野球のことでいっぱいだ。「私の家、みんな巨人が好きで…ショートの坂本選手が好きなんですけど、サードでもカッコいいかな」と話すその表情は、野球への純粋な愛にあふれている。

チームに加わった原さんを、魚津工業の選手たちも歓迎した。國枝輝虎選手は「野球のこと話せる女の子が少ないから野球の話ができて楽しい」と笑顔で語り、選手たちからは「めっちゃかわいいです!」「大好きです!」と人気の存在だ。それに対して原さんは「こういう優しさがありますね」と照れ臭そうに話す。

甲子園で幼少期に食べたという「つぶつぶアイス」の話を笑顔でチームメイトに語りかける原さんの姿は、チームの雰囲気を明るくする存在そのものだ。

「上市」の名前がチーム名に入ることへの葛藤

それでも原さんの心には、しばらく引っかかりがあった。自分が加わることで、チーム名に「上市」が入ることへの申し訳なさも。選手として貢献するわけでもない自分の参加が、チームの名称に影響を与えていいのか—。

しかし、監督や選手たちの言葉に何度も救われ、今ではその葛藤は「感謝」へと変わっている。「辞めそうになったのを止めてくれた先生方にも、本当ならここにいなかったのに、受け入れてくれた魚津工業の皆さんにも感謝しかない」。

開会式で先導者の大役、手には「上市」の旗

大会直前に行われた開会式では、アナウンスが場内に響いた。「先導者は上市高校野球部、原美羽さんです」。原さんが堂々と先導役を務め、魚津工業の選手たちが手に「上市高校」の旗を携えて続いた。そのシーンには、互いを認め合い、支え合う連合チームの姿が凝縮されていた。

練習試合では高朋高校Bチームを相手に夏の大会を想定した熱のこもったプレーが展開され、原さんもベンチから声援を送り続けた。

「楽しくニコニコした試合でがんばってほしい」

10日からいよいよ本番が始まる。田尻祐季也主将は「厳しい戦いになると思うが、諦めずに最後まで守備中心にロースコアでやっていけたら」と力を込める。

原さんはこう願う。「一番緊張するとは思うが、今まで通り楽しくニコニコした試合でがんばってほしい」。

1試合でも多く、みんなで一緒に野球をしたい——その思いが、連合チーム「魚津工業・上市」を1つにまとめている。なお、原さんは高校卒業後も野球への情熱を持ち続け、社会人チームのマネージャーを目指しているという。

(富山テレビ放送)

富山テレビ
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