2026年5月19日。仙台地裁の 306 号法廷に入ってきたのは、白シャツにグレーのパンツ、生え際に白髪が目立つ細身の男。一見どこにでもいるおとなしそうな男が問われているのは、複数回に及ぶ盗撮の罪だ。
起訴内容認める
起訴状などによると、仙台市の不動産会社代表取締役の男(51)(肩書は犯行当時)は、2026年3月24日、女性(当時19)が住むアパートの脱衣所で、洗濯機の下部に小型カメラを設置して、女性の裸を撮影した性的姿態等撮影の罪などに問われている。
証言台に立ち、検察官の起訴状読み上げを静かに聞く男。裁判官に「事実や起訴状に違うところがないか」と問われると、小さな声で「いえ、ないと思います」と答えた。弁護側も起訴内容はおおむね争わず、情状酌量を求める方針だ。
不動産会社の立場悪用か
検察官の冒頭陳述で、犯行に至るまでのいきさつが明らかになった。
犯行当時、男は父親が経営する不動産管理会社の代表取締役を務めていたが、この立場を悪用したとされる。
被害に遭った女性(当時19)が住んでいたのは会社が管理するアパート。
2026年3月18日ごろ、女性から「電球が切れた」「脱衣所のカーテンレールが壊れた」などと親族を通じて連絡を受けたことから、女性が住む部屋を訪れた男。
翌19日、浴室の電球の交換を行い、カーテンレールの修理は後日行うことになった。
検察側は、この交換日から24日までの間に「裸を見たいと考え、被害者方にカメラを設置することを決意した」と指摘している。
24日、カーテンレールの修理に訪れた際に、洗濯機の下部に小型カメラを設置し、女性の裸を撮影したとされている。
翌25日、女性は脱衣所の洗濯機の下に、あるはずのないものを見つけた。小型カメラだ。カメラは、USBケーブルでモバイルバッテリーとつながっていたという。不安に感じた女性が警察に110番通報したことで事件が明るみになった。
男は25日、小型カメラを回収するために合鍵を使い女性のアパートに侵入したとして、建造物侵入の罪でも起訴された。
管理するビルのトイレでも盗撮か
男は余罪でも追起訴された。小型カメラに挿入されていたマイクロSDカードに、ほかの盗撮映像が収められていたのだ。男は5回にわたり女性用トイレの個室の床上に置かれたかごの中に設置した小型カメラで、女性4人の下半身などを撮影したとされている。
男が小型カメラを設置し盗撮したのは、会社が管理するビルの女性用トイレ。
6月25日に開かれた2回目の裁判で男は、この追起訴分の罪についても裁判官に「違うところがないか」と問われると「いえ、ありません」と認めている。
性的姿態撮影等処罰法違反 法整備の背景は

「盗撮」行為については、主に各都道府県の迷惑防止条例に基づいた取り締まりが行われてきた。
しかし、スマートフォンの普及やSNSなどでの画像拡散の深刻化などを背景に、2023年に性的姿態撮影等処罰法が成立。密かに性的な部位や身に付けている下着を撮影することを罰する「性的姿態等撮影罪」などが新設された。
これにより、同意のない性的な姿態の撮影に対しては、全国一律で重い刑罰(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)が科せられるようになった。
ほかにも、撮影行為そのものだけではなく、不特定多数の者に提供することなども処罰対象となった。
性的姿態撮影等処罰法違反で抑止効果も

「性的姿態撮影等処罰法」違反事件の宮城県内の検挙件数は、施行された2023年は21件で、翌年には141件にまで増えた。
「盗撮行為」は県の迷惑防止条例違反でも検挙対象だ。「公共の場所」での公衆の平穏を守るための迷惑行為防止条例。盗撮行為をめぐっては、各都道府県で規制場所を拡大する傾向にある。宮城県では、盗撮を規制する場所として公共の場所のほかに住居や浴場、更衣室を挙げ「人が通常衣服を着けない状態でいるような場所」などについても対象としている。
一方で捜査関係者によれば、迷惑防止条例違反は都道府県で規定が異なるため解釈しきれないところもあり、性的姿態撮影等処罰法の整備によって全国一律で盗撮行為が厳罰化された効果は大きいという。
「性的欲求を満たすため」「スリルを味わいたい」盗撮行為をする者の動機は複数考えられる。
しかし、その自己中心的な行為によって深い心の傷を負う被害者がいることを忘れてはならない。

