6月23日に発生し、わずか2時間足らずで多くの建物を焼き尽くした島根・出雲市の商店街火災。「延焼の範囲がなかなか読みにくい」と語る防災の専門家が独自調査に訪れ、消火活動を困難にさせた構造的な要因を明らかにした。

現場に広がる焼け焦げた瓦礫

出火から一夜明けた商店街(6月24日)
出火から一夜明けた商店街(6月24日)
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一夜明けたアーケード商店街には、焼け焦げた瓦礫が散乱し、道をふさいでいた。前日の午後まで人々が行き交っていたはずのその場所は、見る影もなく変わり果てていた。

今回の火災は、出雲市の商店街「サンロードなかまち」で発生。わずか2時間足らずのうちに火の海となり、合わせて24棟が被災する大規模火災となった。地域の人々の生活に深く根ざした商店街が、これほどの被害を受けたことは、地域社会に大きな衝撃を与えた。

「延焼は非常に早い」 専門家が独自調査へ

防災・危機管理アドバイザーの林さんが独自調査へ
防災・危機管理アドバイザーの林さんが独自調査へ

6月24日午後、消防隊がなおも消火活動を続けるなか、防災・危機管理アドバイザーの林繁幸さんが現場を独自に訪れ、調査を行った。林さんは消防署の署長などを歴任してきた防災の専門家だ。

現場を目の当たりにした林さんは、「延焼するその範囲というのが、なかなか読みにくい。延焼は非常に早いんですよね、こういうところは」と率直に語った。

なぜ、これほどまでに火が広がったのか。林さんが最初に挙げたのが、商店街ならではの「区画割り」の問題だ。

「路地がない」ことが消火活動を困難に

密集した配置が消火活動にも影響
密集した配置が消火活動にも影響

一般的な住宅地や商業ビルとは異なり、アーケード商店街では店が路地もなく隣り合って立ち並んでいる。この密集した配置が、今回の消火活動に大きな制約をもたらした。

消防による消火活動(6月23日夜)
消防による消火活動(6月23日夜)

消防隊は通常、建物を複数の方向から包囲するように放水することで効率的に火を制圧しようとする。しかし、店舗が隙間なく並んでいる商店街では、消防隊が一つの方向からしか放水できない状況になりやすい。林さんはこの点を問題として指摘する。実際、今回の消火活動の映像でも、地上からの放水が炎に届いていない場面が確認されている。

「一軒一軒が路地もなく隣り合っている」という商店街の構造は、賑わいと利便性を生む一方で、火災発生時には消防隊の動きを大きく制限する。これが、延焼のスピードに対して消火が追いつきにくくなった一因と見られる。

アーケードが「二重の壁」に

「アーケード」が大きな障壁に
「アーケード」が大きな障壁に

さらに林さんが指摘したのが、アーケードの存在だ。雨や風を防ぎ、買い物客を快適に迎えるアーケードは、商店街の象徴ともいえる構造物だ。しかし火災が発生すると、この屋根が消火活動の大きな障壁になる。

「アーケード全体が燃えてしまうと消防車も燃えてしまう。だから、基本的にはアーケード火災のときは消防車を離れたところに止めて、そこからホースを伸ばす」と林さんは説明する。

アーケードを包むほどの火の勢い(6月23日)
アーケードを包むほどの火の勢い(6月23日)

消防車をアーケードから離れた位置に置かざるを得ないということは、放水の射程が限られ、火元に直接水を届けることがさらに難しくなることを意味する。「そういう状況を考えると普通の火災よりも消火活動が困難」と林さんは言い切る。

路地のない密集構造と、上方を覆うアーケード。この二つが重なることで、消防隊にとって「四方を囲まれた」に近い状況が生まれ、消火の難易度が格段に上がったと考えられる。

「屋根が自動で開く」 備えが機能した側面も

自動的に屋根が開く排煙の装置備える
自動的に屋根が開く排煙の装置備える

ただし、林さんは「サンロードなかまち」が火災への備えを持っていた点も評価する。

「火災報知器が作動すると自動的に屋根が開くようになっていて、これが排煙の装置になる。これは今回の火災では有効に機能したのでは」と林さんは述べた。

「アーケード火災」防災設備の重要性
「アーケード火災」防災設備の重要性

アーケード火災では、煙が充満することで視界が遮られ、避難や消火がさらに困難になる。自動排煙装置が正常に作動したことで、煙の拡散をある程度抑制できた可能性があるという。大規模な延焼が発生したなかでも、こうした設備が一定の役割を果たしていたことは、防災設備の重要性を改めて示すものだ。

地域住民に求められる「防火意識」

「初期消火」の大切さを語る林さん
「初期消火」の大切さを語る林さん

今回の火災から得られる最も重要な教訓は何か。林さんは、住民一人ひとりが「商店街には大規模火災のリスクがある」ことを日頃から理解しておくことの大切さを強調する。

「こういう条件の悪いような場所であったら一層、防火意識を高めておいていただいて、何かあった時にはすぐこういうふうに行動するんだということを、まず考えて行動に移してもらわなければいけない」

そのうえで、林さんが特に訴えるのが「初期消火」の重要性だ。「万が一起こってしまったといった時には初期消火ですね。火は小さいうちに叩いてしまうと」。

プロの消防隊でも手を焼く商店街の構造的リスクを考えると、火が小さいうちに対処することが、大規模延焼を防ぐうえでいかに重要かがわかる。消火器の設置場所を確認すること、異変に気づいたらすぐ通報すること、そうした一つひとつの備えが、最悪の事態を防ぐ鍵となる。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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