大きな災害が発生すると、水や食べ物、避難場所の確保にばかり意識が向きがちだ。しかし、被災地で繰り返し問題となってきたのが「口腔(こうくう)ケア不足」。

阪神・淡路大震災や東日本大震災、能登半島地震などの被災地支援に携わってきた、ときわ病院歯科口腔外科部長の足立了平さんは、「口腔ケアは命を守る行為」と語る。

災害時こそ口腔ケアが必要な理由と、子どもから高齢者まで、各年代ごとに注意すべきリスクを聞いた。

非常時こそ口腔ケアが不可欠

私は、阪神・淡路大震災以降、多くの被災地で歯科支援に携わってきました。その経験から強く感じているのは、災害時の口腔ケアは「命を守る医療」だということです。

災害関連死というと、エコノミークラス症候群や持病の悪化が注目されますが、実は肺炎による死亡も大きな割合を占めています。実際に、阪神・淡路大震災では災害関連死が900人以上確認されていますが、その約4分の1が肺炎だったといわれています。

その肺炎の中でも、特に問題になるのが誤嚥(ごえん)性肺炎です。誤嚥性肺炎は、口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に気道へ入り込み、肺で炎症を起こす病気です。

災害時に口腔ケアを怠ると誤嚥性肺炎のリスクも高まる(イメージ)
災害時に口腔ケアを怠ると誤嚥性肺炎のリスクも高まる(イメージ)
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健康な若い人であれば、唾液や食べ物を誤嚥して多少の細菌が気道に入っても咳で排出できます。しかし高齢になると飲み込む力や咳をする力が低下します。飲み込む機能は徐々に衰え、80代~90代の場合、本人が気付かないまま誤嚥している人も少なくありません。

ただ、これは平時の話で、災害時は事情が異なります。避難生活では睡眠不足、栄養不足、精神的ストレスなどによって免疫力が低下します。加えて、水不足によって歯磨きの回数が減り、口の中の細菌が急激に増加し、結果として、平時であれば肺炎にならないような60代~70代の方でも、命を落とすリスクが高くなるのです。

20代~40代は歯周病に注意

もちろん、口腔ケアを怠ることで深刻な病気になるのは高齢者だけではありません。20代から40代の働き盛り世代にも大きなリスクがあります。