むし歯は、甘いものを食べる量だけで決まるわけではありません。

問題は食べ続けること、いわゆる「だらだら食べ」です。

口の中のpH(ピーエイチ(酸性とアルカリ性の度合い示す指数))は、糖分を摂取すると低下して酸性に傾いてしまいます。一定以下の数値までpHが下がると、酸によって歯が溶けてしまう可能性があります。

通常は、唾液などが酸を中和してアルカリ性へと戻してくれるのですが、だらだらと甘い物を食べ続けると、口の中を中性に戻す時間を確保することができず、むし歯になってしまうのです。

「だらだら食べ」は虫歯の元凶(イメージ)
「だらだら食べ」は虫歯の元凶(イメージ)

ただでさえむし歯になりやすい食べ物が多くなる災害時は、なるべく決まった時間に食事をして、おやつを食べる際も午後3時ではなく昼食直後にするなど、「食べない時間」をしっかり作る、「シュガーコントロール」を心がけるようにしましょう。

日頃から口腔ケアに慣れておくことが最大の備え

子どもの場合、歯磨きを嫌がることがありますが、これは当然のことです。口の中に異物が入ってくるわけですから、不快に感じる子どもがいてもおかしくはありません。

ただ、私は歯磨きそのものよりも、口腔ケアは気持ちいいものだと感じてもらうことが重要だと思っています。

歯が生える前であっても、お父さんやお母さんの膝の上で口に触れたり、歯ブラシに慣れたりする経験は、「歯磨きって気持ちいいものなんだ」と思ってもらうという点において、とても意味があることなのです。そうした積み重ねが、災害時にも無理なく口腔ケアを続けられることにつながります。

「歯磨きは気持ちいいもの」と思わせることが非常時の口腔ケアにもつながる(イメージ)
「歯磨きは気持ちいいもの」と思わせることが非常時の口腔ケアにもつながる(イメージ)

非常時に特別なことをする必要はありません。日頃から続けている習慣を、できる範囲で維持すること。それこそが子どもの口と健康を守る最大の備えだと私は考えています。

足立了平(あだち・りょうへい)
ときわ病院歯科口腔外科部長。災害時の口腔(こうくう)ケアの重要性や、災害関連死予防の研究・啓発活動に長年携わる。

取材・文=内山直弥

足立了平
足立了平

ときわ病院歯科口腔外科部長。前神戸市健康局歯科専門役。阪神・淡路大震災以降、東日本大震災、能登半島地震など数多くの被災地で歯科支援活動に従事。災害時の口腔(こうくう)ケアの重要性や、災害関連死予防の研究・啓発活動に長年携わる。