東日本大震災から2020年11月11日で9年8カ月。
宮城・角田市には、犠牲となった人への祈りを込めて、木像を彫り続けている元警察官の男性がいる。
男性は2020年4月、発表された死者数と同じ2万2167体を完成させたが、今もその手を休めることはない。

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震災の犠牲者1人1人を思いながら、像を彫りつづける

宮城・角田市高倉にある一軒の住宅。ギャラリーの中にたくさんの像が置かれている。
作っているのは、大沼敏修さん。

子供を抱いている像。手を胸の前で合わせ合掌している像。木像の姿は様々。

大沼敏修さん:
木のつかんだ瞬間の形といいますか、優しさをそのまま生かせればなと、そんな思いですかね

大沼さんは震災の犠牲者1人1人を思いながら、像を彫っている。

大沼敏修さん:
犠牲になられた方1人1人に声をかける感じですかね。「あなたのことは決して忘れませんよ」と。この辺では「わっしねからね」と言うんですが、「あなたのことは、わっしねからね」と

震災犠牲者の魂を鎮めたい…

宮城県警の警察官だった大沼さんは、現役の頃から事件の犠牲者の冥福を祈り、木彫りの像を彫るようになったという。
2010年に定年退職。その翌年、東日本大震災が発生した。

大沼敏修さん:
南三陸町志津川の総合防災庁舎で、住民に避難を呼びかけている中で、殉職された女性のニュースを見まして、気がついたら朽ちた松の木の根っこをつかんで削りだしていた

好きだった酒を断ち、震災の翌月からほぼ毎日、寝る間も惜しんで木彫りの像を彫り続けた。
そして、2020年4月14日。当時の震災関連死を含めた犠牲者の数と同じ、2万2167体の木彫り像を完成させた。

大沼敏修さん:
震災犠牲者の魂を鎮めることができるかどうかわからないですが、自分の気持ちの中では鎮めたいという思いで、彫り続けてきたと

ギャラリーに飾ることができない約2000体の像は、家の外に並べられている。

大沼敏修さん:
結構これ人気あるんですよ、自分としてはあまり好きではなかったんですけど、粗削りなので。でもお母さんにすがっているのが、なんかお母さん方がね

木像は小さいもので1センチ、大きいものは1メートルほどある。

「忘れまじ 2万の命 魂を」

大沼敏修さん:
体はもう悲鳴をあげていまして、指から手首から腕から肩からですね、ぼろぼろの状態ですかね。腰から背中から、ありとあらゆるところですね

しかし、大沼さんはまだ手を休めない。
それは、関連死にも認定されていない、見えない犠牲者がいると考えるから。

大沼敏修さん:
私の頭の中では、3000人くらいはいるんじゃないかと、残りね。その暗数 プラスアルファを彫ることで、肩の荷をおろせるかなと

並べられた木彫りの像の中に、1体だけ文字が書かれている像がある。
「忘れまじ 2万の命 魂を」
大沼さんの思いである。

(仙台放送)