小学校の音楽室で発生した火災。子どもたちが取り残され、爆発音が聞かれ、短時間で黒煙が校舎を覆った。

この火災の何が異常で、何が適切だったのか。元大阪市消防局救助隊・兼平豪氏が、小学校という「最も難しい火災現場」における消火活動について、現場経験に基づいた見解を語った。

■ストーブ点検が「直結する」危険 出火原因を読み解く

ーストーブの点検中に出火したという情報もある。ストーブの点検で大きな火事になることはあるのか。

兼平豪氏:ストーブの点検というのは、取り扱い要領にのっとってやらないと、ストーブ火災に直結します。

皆さん意外と知らないのですが、たとえば灯油、古い灯油をどうすればいいのか、新しい灯油を足していいのか、あるいはどうやって抜き取るのか。なかなかご存じないですよね。

そういった点に加えて、ガスホースの経年劣化なども確認しなければならない。結構簡単なように見えて、実は危険な点検なのです。

ー仮にストーブが出火原因だとしても、今回の燃え方に違和感はあるか。

兼平豪氏:ストーブが原因であれば、燃え方に違和感はないですね。

ただ、危険物の火災というのは爆発現象が起きてしまうので、一気に、短時間で燃え広がってしまいます。通常の火災であれば、紙が燃えて白煙が出て、そこからカーテンなどに燃え移っていくという経緯をたどります。

一方で、この音楽室、小学校という建物には、カーテンや絨毯などには「防炎物品」が使われています。本来、爆燃現象が起きにくい環境なのです。にもかかわらず、子どもも先生もいる状況下で取り残されるほどの火災がなぜこれほど短時間で起きたのかを考えると、危険物の可能性は高いと思います。

ー目撃証言の中に「爆発音がした」という児童もいたが…

兼平豪氏:やはり危険物の可能性が考えられます。通常、紙が燃えているだけでは爆発音は発生しません。

音楽室ということを考えると、リチウムイオンバッテリーが燃えるといった電化製品火災のリスクもあります。ただ、それだけでここまで大きくなるかというと、少し疑問です。

火災のあった小学校
火災のあった小学校
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■外のひさしへの避難は「正解」だった 

―子どもたちが外のひさしに避難している様子が見られた。あの行動は正しい避難方法と言えるのか。

兼平豪氏:はい、私は正しい避難方法だったと思っています。

消防法の観点では、避難口誘導灯に向かって避難することが原則です。おそらく音楽室の出入口に激しい燃焼の実態があったのだと考えられます。外へ退避するルートが炎と煙で塞がれていた。だからこそ、ああいった判断をするほかなかった。子どもたちの命が助かっているのであれば、それは正解だったと思います。

ひさしに避難した児童
ひさしに避難した児童

■数百人規模の安否確認なしに、放水はできない 

―東京消防庁の出動体制や消火活動は。

兼平豪氏:ニュースを見て、これほど早く人命救助ができたのかと驚きました。

小学校での消火活動・救助活動は、通常の火災の百倍難しいと思っています。

一軒家で「6人いてそのうち2人と連絡が取れない」という規模ではありません。学校には数百名がいます。各クラスの子どもたちの安否が確認できているのか。その情報がないと、消火活動に踏み切れないのです。

放水をすると、煙をかき混ぜてしまいます。その結果、消防隊員も侵入できなくなる。しかも煙の温度は1,000度近くにまで達します。全員の安否を確認し、情報統制を整えた上での救助・消火活動を、あの数十分で成し遂げたことは本当に素早い対応だと感じました。

―グラウンドからの放水映像もありましたが、あれは何を目的とした放水なのか。

兼平豪氏:あれは人命救助のための放水ではなく、「延焼阻止」です。

火点、つまり実際に燃えているものを叩くには、建物内部に入り、その燃焼箇所に直接めがけて放水しなければ届きません。一方で、一度屋内に放水してしまうと、もし一人でも恐怖でパニックになって取り残されていた子どもがいれば、その子を救助することはほぼ不可能になります。

私自身、現場でヘルメットが溶けたという経験があります。訓練を受け、装備を持った消防隊員でも容易には近づけない高温の中での活動です。今回の現場も、あの火の手と黒煙を見れば、500度から1,000度はあったと思います。決して簡単な救助活動ではなかったはずです。

―黒煙については。

兼平豪氏:黒煙が発生している時点で、「最盛期」、火で一番、強い状態です。

危険物である石油系のものが燃えたときにも黒煙が出ますし、プラスチックが燃えても黒煙になります。そしてこの黒煙は、ただ黒い煙というだけではありません。一酸化炭素中毒を引き起こすだけでなく、有毒ガスを含んでいます。目も鼻も、一切効かなくなる。本当に恐ろしい煙なのです。

元大阪市消防局救助隊・兼平豪氏
元大阪市消防局救助隊・兼平豪氏

■「予告なしの訓練」が命を守る 

―今回の火災を踏まえて、今後の避難訓練のあり方についてはどう考えるか。

兼平豪氏:「ベルを鳴らして、今から避難訓練を始めます」という形はやめた方がいいと思っています。

子どもたちの中には、実際の緊急時にパニックになってしまう子もいます。一度ベルを鳴らしてみて、そのあと子どもたちがどう動くのか。その動きをしっかりと教訓として積み重ねていくことが重要です。

半年に一度など定期的に繰り返していかないと、いざ本当の火災が起きたとき、また命が奪われてしまうことになりかねません。平常心で訓練の記憶を引き出せるかどうか、それが、命を守ることに直結しています。

(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年6月19日放送)

「旬感LIVE とれたてっ!」より
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関西テレビ
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