札幌市東区でクマが人を襲った事故から6月18日で5年。
140針も縫う大けがをした男性には今も深刻な後遺症が残っている。
クマを警戒する体制は変わったのか。
「非常に危険、非常に危険です」(記者)

2021年6月18日、札幌市東区。
「目の前で見た。正面に走ってきた」(付近住民)
クマが現れたのはJR札幌駅から約4キロ離れた市街地だ。

クマは8時間にわたって付近を移動し続けた。
「自衛隊の門に入ろうとしています。自衛隊員が逃げています」(記者)
クマに襲われ、自衛隊員や付近の住民らあわせて4人が重軽傷を負った。

「このあたりで後ろから一撃されて。とっさに頭を守った時にここをかまれて、その時にここにクマの顔があった。初めてクマだと認識した。自分、死ぬのかなと思った」(安藤伸一郎さん)
襲われた4人のうちの一人、安藤伸一郎さん(48)。
いつも車で通勤していたが、この日は仕事の関係でたまたま地下鉄で会社に向かうところだった。

「これから先ずっと付き合っていかなければいけない痛み。まだこの痛みが5年間しか経っていないんだなと」(5年前クマに襲われた 安藤さん)

肺に穴が開いたほか、全身であわせて140針を縫う大けがをして5年経った今も治療を受けている。
「膝にクマの前足か後ろ足の爪が刺さり、中で炎症が起き、この炎症はなくならずずっと痛い。二の腕もこんな感じ。ここもかまれたが肉がそがれている状態。(手術を)してもらって、これ以上良くならない」(安藤さん)

安藤さんたちを襲ったクマは駆除されたが…
「夜になるとどこからかまたクマが出てくるのではないかと、暗くなると外に出ないように心がけている」(安藤さん)
ひどい痛みで体の自由がきかず、勤務日数を減らさざるを得なくなった。

「金銭的に行政に助けをもらっていることはない。支援が何もなく、病院へ行っている分も3割負担の自分の支払い」(安藤さん)
通勤途中だったため労災と認められたが、思うように働けず収入は減った。
手術は2024年にも行われ、自己負担の治療費は約300万円にも上る。
「クマに襲われたのは『自然災害』だと思っている。襲われた人に対して何かしらの対策があった方がいいのではないかと思う」(安藤さん)
「札幌市東区の丘珠空港近くのこのあたりでは明治時代、住民がクマに襲われる被害が発生していました」(木村洋太記者)

明治時代の1878年1月に起きた「札幌丘珠事件」だ。
現在の札幌市中央区の山で猟師から逃げたクマが、現在の東区丘珠町にたどり着いた。
そして小屋にいた家族を襲い、乳児を含む3人が死亡した。
「丘珠事件」から140年以上が経って東区で発生したクマによる人身被害。

クマは川や水路などを通って市街地へ侵入したとみられている。
「当時まさかと思った。ここまで出てきていて油断できない」(付近の住民)
「通り道なので歩いていたら人だかりができていて、消防車や救急車が止まっていた。鮮明に覚えている。一生懸命血をふいてたのを覚えている。もう(クマは)出ないだろうと勝手に思っているが、当時はすごく怖かった」(当時現場にいた女性)
「(5年前の事故が)大きなターニングポイント。『まさか』という形で動いてしまった」(道猟友会札幌支部ヒグマ防除隊 玉木康雄隊長)
普段は日本茶専門店の経営者としてお茶を販売をしている玉木康雄さんは、札幌のヒグマ防除隊の隊長だ。

「創成川は流域は広い原野とつながっていて、いろんな可能性はある」(玉木隊長)
中心部に川が流れ自然に囲まれた札幌だからこそ、どの市街地にもクマが出没するリスクはあると考えてきた。
「ここで道路の端から撃てるかと言われたら撃てない。水平だから。下の川の中にいたら撃てると思う。いろんなシチュエーションがある。この組み立てでいきますか、こういうふうにお膳立てしますよとか、高所作業車を呼びましょうとか、連携が全部出来ている」(玉木隊長)
被害を繰り返さないために、体制づくりの強化が進んでいるという。
「最後にトリガー(引き金)に指を置くのは私たちだが、行政・警察と一緒にトリガーを引く感覚がなければ出来ないミッション。そこにまで考えが至るようになったのは東区の事案がきっかけ。『まさか』ではなくて、起こったらこうやって対処しようという形を4年間かけて行政・警察・ハンターで密にした」(玉木隊長)
5年前の6月18日、会社に向かう途中で突然クマに襲われた安藤さん。
訴えたいことがあった。

「北海道でも札幌でも本州でもクマ被害が増えているので、『いつどこで出てもおかしくない』という心構えをしておかないと。僕みたいにケガをしてからでは遅い」(安藤さん)
