”推し活”ブーム真っ只中!山陰で広がる企業グッズ熱
鳥取県の地元民なら誰もが知る「白バラ牛乳」のロゴが入ったTシャツ、靴下、トートバッグ。
それを休日のジムにも着ていくほど愛用する社員がいる。
同じく鳥取・琴浦町では、中学1年生が「ふろしきまんじゅう」のキーホルダーを肌身離さず持ち歩き、スマホにはステッカーを貼っている。
“推し活”という言葉がすっかり定着した今、その熱量は山陰の企業グッズビジネスにも確実に波及し、新たな収益の柱と地域ブランドの発信源を生み出しつつある。
「誰にも負けない…」 Tシャツもバッグも“白バラ”尽くし
琴浦町に本拠を置く大山乳業農業共同組合。
その工場に併設された直売所「カウィーのみるく館」のグッズコーナーには、ぬいぐるみ、文房具、バッグなど、白バラロゴをあしらった約30種類の商品が並ぶ。
このグッズを担当するのが、商品開発担当の長谷川尚之さん(28)だ。
鳥取県出身で、給食で毎日「白バラ牛乳」を飲んで育った。
幼いころからロゴ入りグッズにも親しんでいたという長谷川さんは、“白バラ”への愛着が高じて大山乳業への就職を決めた。
しかし、入社1年目は営業担当。
グッズに関わりたいという思いを胸に異動を希望し、翌年ついに企画課へ配属された。取材当日も、白バラロゴのTシャツ・靴下・トートバッグというスタイルで登場。
「これが正装です」と語り、ジムにもそのまま通うという。
タンブラーにプロテインを入れて飲むのも、もちろん大山乳業オリジナルのものだ。
「誰にも負けないくらいの愛を持っている」…長谷川さんのこの言葉が、グッズ開発への姿勢をそのまま表している。

SNSで話題のTシャツが転機に 県外販売せず“来訪促進”へ
大山乳業がグッズ販売を本格化したのは約10年前。
当初は企業キャラクター「カウィー」を中心に展開していたが、転機となったのは2017年のことだった。
「白バラ牛乳のパック柄を印刷したTシャツを販売したところ、SNSを中心に大きな話題になった」と、総合企画課の乾裕一さんは振り返る。
「白バラ牛乳パックの柄がすごく人気があるというのを私たちも初めて知った」…この反響をきっかけに、白バラロゴを積極的に活用した商品開発へと舵を切った。
現在は年間10種類ほどの新商品を製作しており、グッズの年間売り上げは約700万円に上る。
「販売開始即完売というグッズもある」と乾さん。
注目すべきは、その販売戦略だ。
商品は店舗とオンラインのみで展開し、県外への出荷は行っていない。
「鳥取県に足を運ぶきっかけづくり」を明確に狙っているからだ。
「グッズの売り上げは大山乳業全体の0.1%に満たない。しかし、グッズを開発することで白バラファンの拡大であったり、牛乳の販売促進につながっているところを重要視している」と乾さんは話す。
売り上げの数字よりも、ブランドへの愛着を育てることに価値を見出しているのだ。

「あんこが苦手、でもハマった」…週1で食べるほどのファンに スマホもカバンも“まんじゅう尽くし”
もう一つの事例が、同じく琴浦町にある山本おたふく堂だ。
「おたふくさん」「ふろしきまんじゅう」で知られるこの老舗菓子店に、熱烈なファンがいる。
地元の中学1年生、羽原瑠良くんだ。
羽原くんが「ふろしきまんじゅう」に目覚めたきっかけは、家族がイベントから持ち帰った一個だった。
「元々あんまりあんことか好きじゃなかったけど、ふろしきまんじゅうのあんこは美味しい」と衝撃を受け、それ以来「ふろしきまんじゅうがほしい、買って~」と何かにつけ家族にねだるようになり、今は週1ペースで食べているという。
その熱量はグッズにも及ぶ。
スマホにはステッカー、ポケットにはボールペン、カバンにはキーホルダー。
「あ、これまんじゅう見えるんだ、とびっくりした」と羽原くん。
さらに、友人に見せると「なにこれ?こんなものあったんだ」と驚かれるそうで、グッズが口コミの起点にもなっている。

SNS投稿で一気に話題 “全点買い”ファンも出現
山本おたふく堂が本格的なオリジナルグッズ販売を始めたのは、2026年3月のこと。
それまでも琴浦町の本店でひっそりと販売していたが、文房具など手に取りやすいアイテムにラインアップを一新し、販売に力を入れ始めた。
「社長が個人でやっているX(エックス)に投稿したところ、大反響に。SNSにアップした時点で、電話と来店での問い合わせがすごく多かった」と、販売・事務員の池田亜美さんは話す。
その結果、販売開始から2か月あまりで1000点以上が売れた。
「販売開始当日にいきなり来て、オープン後すぐに『全点ください』という人もいた。需要があるなと感じている」と池田さん。
一度に全種類をまとめ買いするファンが現れるほどの盛況ぶりだ。

“推し活”が地域ビジネスを変える ファンとのつながりが新たな価値に
「好き」なものに積極的に時間とお金を費やす「推し活」の文化。
その市場は拡大を続けており、その熱量は今や山陰の地場企業にも確実に届いている。
大山乳業は県外出荷をあえてしないことで来県動機を生み出し、山本おたふく堂はSNSの一投稿が爆発的な反響を呼んだ。
どちらも、地域に根ざした商品・ブランドへの深い愛着が、グッズという形で可視化されたビジネスモデルだ。
売り上げの規模よりも、ファンとのつながりを育てること。
その姿勢こそが、山陰の企業グッズビジネスを支える核心にある。


