島根・出雲市の人気ラーメン店「かみあり製麺」の看板メニューが、全国のローソンでカップ麺として販売されている。手がけたのは「サッポロ一番」でおなじみの大手食品メーカー・サンヨー食品。突然の電話に店主が「オレオレ詐欺かと思った」と振り返るほど、青天の霹靂ともいえる商品化の舞台裏と、山陰発ご当地ラーメンの全国展開が続く背景を追った。
全国のローソンに並んだ「しじみだし塩ラーメン」
6月2日から全国のローソンで販売が始まったカップ麺「しじみだし塩ラーメン」。
青色のパッケージが棚に並ぶその商品は、宍道湖産シジミの粉末をスープに使用した塩ラーメンで、具材のつみれにもシジミ風味が施されている。
取材した記者は「シジミの風味がしっかりと感じられる。あの名店の味がしっかりと再現されている」と評した。
この「名店」とは、出雲市斐川町に店を構える「かみあり製麺」のことだ。ラーメン専門のクチコミサイトで島根県のランキング1位に君臨する人気店で、今回カップ麺となったのは、その看板商品「しじみ塩ラーメン」だ。宍道湖産の大粒のシジミを贅沢に乗せたこの一杯は、島根への愛情が凝縮されたような存在だ。
常連客からも「月1、2回は来てます。おいしいです」「シジミが大きい」といった声が寄せられており、地元での根強い支持を物語っている。
突然のオファーに「新手のオレオレ詐欺だと思いました」
この人気ラーメンをカップ麺化したいとサンヨー食品から連絡が入ったのは、ある日突然のことだった。かみあり製麺の栂野善彦店主は当時をこう振り返る。
「電話があって、カップ麺の話を伺ったんですけども、もう新手のオレオレ詐欺だと思いました」と、突然のオファーがにわかには信じられなかったという。
大手メーカーからの申し出とは信じがたく、最初は疑ってしまったというのが正直なところだったようだ。しかし、相手が本物のサンヨー食品だと分かると一転、「大喜びした」という。実はカップ麺を出すことは栂野さんの長年の夢だったからだ。
「子供を産んだような気持ち」こだわりのスープを惜しみなく伝授
夢の商品化が決まった栂野さんは、スープの材料やレシピをサンヨー食品に惜しみなく伝授し、こだわりの味の再現に全力で協力した。その結果、完成したカップ麺への評価は非常に高い。
「子供を産んだような、そんな気持ちです。店舗でもこのラーメンを出したいなと思うぐらいの商品になってます」
栂野さんが特に気に入っているのが、具材のつみれだという。「謎肉」ならぬ「謎シジミ」として、その出来栄えを「すごく秀逸」と絶賛している。カップ麺の定番ともいえる「謎肉」になぞらえた表現には、店主自身がこの商品を心から楽しんでいる様子が伝わってくる。
山陰で愛される味に“可能性” 第1弾の大成功が呼び水に
サンヨー食品はご当地ラーメンシリーズと銘打ち、ローソンと協力して全国のラーメン店の味をカップ麺で再現するプロジェクトを進めている。山陰の店の味がこのシリーズでカップ麺になるのは、実は今回が2度目だ。
第1弾は鳥取市の名店「ホット・エアー」のカップ麺で、2025年秋に数量限定で販売された。その結果は大きな反響を呼び、シリーズの中でも屈指の販売実績を記録したという。サンヨー食品マーケティング本部の寺田俊哉さんはその成功についてこう語る。
「とても売れましたので、社内では成功事例として数えられている」
このホットエアーの成功が「山陰で愛される味」に大きな可能性があることをサンヨー食品に実感させ、第2弾としてかみあり製麺のカップ麺化へとつながった。
発売直後から「ホットエアー」に匹敵する売上
今回のかみあり製麺のカップ麺も、発売直後の時点でホットエアーに匹敵する売上を記録しているという。寺田さんは手応えをこう表現する。
「売れ行きがいいと第2弾、第3弾とつながっていく。今回も現時点で売れ行きが良いと報告を聞いているので、期待できる。シジミのおいしさをお客さんに感じていただき、島根県の盛り上げに貢献できればなと思っております」
地域の名店の味が全国の棚に並ぶことで、その地域そのものへの関心が高まる。カップ麺という身近なメディアを通じて、島根・出雲の魅力が全国へと広がっていく構図だ。
シジミでつながるご縁を 店主が願う波及効果
かみあり製麺の栂野さんもまた、このカップ麺化が店への来客増加だけにとどまらない広がりを持つことを期待している。
「もちろん来店していただけると嬉しいのですが、島根県や宍道湖産ヤマトシジミに興味を持っていただいて、そしてこのシジミでつながるご縁が広がることを願っております」
「シジミでつながるご縁」という言葉には、地元の食材と文化を愛する店主の思いが凝縮されている。宍道湖産ヤマトシジミは島根県を代表する特産品のひとつであり、そのシジミを贅沢に使ったラーメンが全国に届くことで、島根という土地そのものへの関心が芽生えるきっかけになれば、という願いだ。
カップ麺を手にした人がシジミの風味に感動し、「本場で食べてみたい」と出雲を訪れる——そうした連鎖を栂野さんは心から期待している。
山陰発の第3弾はあるのか
ご当地カップ麺シリーズとして2度の成功を収めた山陰。気になるのは次なる展開だ。サンヨー食品の寺田さんは慎重に言葉を選びながらも、可能性を示唆する。
「今後の続編はまだなかなか申し上げられないが、山陰の力を実感しているので、今後もご期待いただければ」
今回のかみあり製麺のカップ麺が成功を収めれば、山陰発の第3弾を検討したいとしている。鳥取のホットエアーに続き、出雲のかみあり製麺と、山陰を代表する名店が次々とカップ麺として全国展開されていく流れは、単なるご当地グルメの話を超え、地域ブランドの発信という意味でも大きな意義を持つ。
数量限定販売…来店して一杯を味わうきっかけに
「しじみだし塩ラーメン」は現在、全国のローソンで数量限定販売中だ。発売直後から好調な売れ行きが続いているとのことで、在庫がなくなり次第終了となる可能性がある。
宍道湖産シジミのうま味が溶け込んだスープ、シジミ風味のつみれ——店主自身が「店舗でもこのラーメンを出したいぐらい」と太鼓判を押すほどの完成度を、まずはカップ麺で体験してみてはいかがだろうか。そして機会があれば、出雲市斐川町の「かみあり製麺」を直接訪れ、宍道湖産の大粒シジミがどっさりと乗った本物の一杯を味わってみることをおすすめしたい。
(TSKさんいん中央テレビ)

