熊の目撃情報が相次いでいた栃木県宇都宮市。
今月6日からきのう=9日にかけて、少なくとも20件の目撃情報が寄せられ、9日午後、住宅街でついに1頭が捕獲されました。
「あと1秒でも2秒でも早く行ってたら、きっと私死んでましたよね」
犬の散歩中にクマと遭遇した住民が、震えながらそう語りました。
クマの足取りを追っていくと、川を泳ぎ、塀を乗り越え、住宅に侵入する、恐怖の実態が明らかになりました。
■「1メートル50センチの塀を軽々と飛び越えてきた」
関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」では、坂元龍斗リポーターが、捕獲現場のすぐ手前にある民家の庭から中継で詳細を伝えました。
庭には今もなお、クマの足跡が生々しく残っており、壁には手形がついています。
深く沈み込んだ土の跡、折れたトウモロコシ、そして踏みつぶされた硬いプラスチック製の仕切り板…。その光景が、クマの重みと力強さを物語っています。
住民によると、家に帰宅した際、塀の向こうにクマの顔だけが見えたといいます。
「『うわ、クマがいる』と思った次の瞬間に、クマが1メートル50センチぐらいある塀を軽々と飛び越えてきた」ということです。
クマは、食べ物を取ろうとするでもなく、怯える様子もなく、庭の中を歩き回った後に塀をよじ登って出ていきました。
捕獲直後、住民は震えながら「本当に怖かった」と話していたということです。
■川を泳ぎ、フェンスをよじ登り 捕獲までの一部始終
9日のクマの動きを振り返ります。
午後1時ごろ、クマはJR宇都宮駅から約2キロの工場の駐車場に姿を見せ、その後、隣の畑を横切り住宅街へと移動しました。
住宅の畑を歩いた後、行き場がなくなり川に飛び込んだということです。
その後、クマは器用に川を泳ぎます。
目撃者が「まさか上がっては来ないだろう」と話していた直後、クマは水面から顔を出し、背よりも高いブロック塀を前足と後ろ足を使って軽々とよじ登りました。
「余裕で上がれちゃうんだ」と、目撃者からは驚きの声が上がりました。
■「チャンスは1回しかなかった」緊迫の瞬間
午後1時半ごろには、住宅街に警察や猟友会が次々と集結。
さすまたと盾を持った警察官が7、8人で列を作り、周辺を封鎖しました。
住宅密集地では、流れ弾の危険からライフル銃での駆除が難しく、麻酔銃で捕獲することに。
麻酔銃を計3発打ち込み、3発目が命中。クマは動きが鈍くなり、捕獲されました。
捕獲されたのはオスの成獣で、体重は約100キロ、体長は1メートル20センチから1メートル40センチほどでした。4、5人がかりでなければ運べないほどの重さだったといいます。
【麻酔銃を撃った動物園の職員】「クマから僕まで5メートルくらい(の距離)。僕の方を見ていてチャンスは1回しかなかった」
■もう1頭クマがいる可能性も?
1頭が捕獲されて市民の不安が収まったわけではありません。
最初にクマが目撃された6日以降、20件以上の目撃情報が寄せられており、“複数のクマ”がいるという情報もあるためです。
クマの生態に詳しい岩手大学の山内貴義准教授は、7日に商店街を横切ったクマの映像を見ると、「それほど大きくない」と分析。
9日に捕獲されたクマとは「体の大きさが異なる可能性」を指摘しました。
ただし「宇都宮の繁華街周辺に2頭、同時期に出てくるのは確率的にはあまりない」とも述べており、判断には慎重な姿勢を示しました。
宇都宮市も、複数のクマがいる可能性を否定できないとして、10日も市内の小中学校をすべて休校とし、今後3日間はパトロールを継続するとしています。
■「建物に入られないよう施錠を」 今後の注意点
岩手大学の山内貴義准教授は、今後市民が注意すべき点として次のことを挙げます。
・ちょうど繁殖期にあたり、クマの行動が活発になっている
・子グマが独り立ちする時期でもあり、突然街中に迷い込む可能性がある
・人慣れした個体は建物に侵入しようとする恐れがあるため、確実に建物は施錠する
・目撃情報をこまめにチェックし、最新情報を把握する
■都市部ならではの対策の難しさ
さらに、都市部でのクマ対策には特有の難しさがあると、別の専門家も指摘します。
福島大学の望月翔太准教授によれば、住宅街は引火物が多く、住民もいるため、ライフル銃を容易に撃つことができません。
実際に今回の宇都宮のケースでも、猟友会は現場に駆けつけたものの、ライフル銃は使用されず、最終的に動物園の職員が麻酔銃で捕獲にあたりました。
坂元リポーターは「普通のどこにでもある庭、どこにでもある川、どこにでもある住宅街」と中継で繰り返し強調しました。
これまで「クマが出るのは山に近い場所」というイメージを持っていた人も多いかもしれません。しかし今回の事態は、その認識を根底から問い直すものとなりました。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」2026年6月10日放送)