中東情勢の悪化を背景にした「ナフサショック」の波が、石川県金沢市の食品スーパーにも押し寄せている。揚げ物やコロッケなど惣菜の個別パック包装をやめ、客が自分で袋に詰めるバラ売り方式に切り替えたスーパーが登場した。「価格転嫁はしたくない」という店側の苦渋の決断だったが、買い物客の反応は「ゴミが減っていい」「好きな分だけ買える」とおおむね好意的だ。身近な売り場を静かに変えつつある「ナフサショック」の実態を追った。

「価格転嫁する必要がない」 コロッケ90円のまま守るための決断

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金沢市彦三町にある「マルエー彦三店」。この店を訪れると、惣菜コーナーの様子がこれまでと少し違っていることに気づく。コロッケや焼き鳥、エビフライといった揚げ物類が、透明な蓋付きのプラスチックパックに収まっている姿が見当たらない。代わりに、備え付けの袋を手に取り、自分で好みの品を選んで詰める、いわゆるバラ売りのスタイルに変わっているのだ。

石川県の地場スーパーであるマルエーでは、コロナ禍の2020年以降、感染予防の観点から揚げ物などの惣菜を個別にパック詰めして販売してきた。しかし今回、ナフサを原料とするプラスチック製品が値上がりしていることを受け、今月から全ての店舗でこの販売方法を変更した。

マルエー彦三店の千綾佑弥店長は、この決断の背景をこう説明する。
「価格転嫁する必要がないので、お客様にもメリットがあるのではないかと思っています。パックや包装することがなくなったので、店としてはすごく助かっています。」

プラスチック製の惣菜容器にかかるコストが増せば、当然ながらそれは商品価格に反映されることになる。90円のコロッケをそのまま90円で売り続けるために、包装そのものをなくすという選択肢を選んだという。コスト削減と価格維持を両立させるための、現場の工夫である。

ナフサとは何か 石油化学の「基礎原料」が揺れている

そもそも「ナフサ」とは何か。石油を精製する過程で得られる軽質の液体で、プラスチックや合成繊維、合成ゴムなど石油化学製品の基礎原料となる物質だ。私たちの日常生活に欠かせないプラスチック製品の多くは、このナフサを出発点として作られている。

中東情勢の悪化によってナフサの供給や価格が不安定になると、その影響はプラスチック製品全般に波及する。スーパーの惣菜コーナーで当たり前のように使われてきた透明な蓋付き容器や個別の包装材も、例外ではない。「ナフサショック」という言葉が示す通り、石川県の食品売り場にも、その余波は着実に届いている。

バラ売りに変わった売り場 客は「好きな分だけ買える」

販売方法の変更に対し、店を訪れた買い物客の反応はどうだったか。取材班が現場で声を聞いたところ、おおむね好意的な意見が多かった。
「あ、これになったんですね。絶対こっちのほうが、無駄なものが出なくていいなと思う。プラのゴミがたくさん出るのも捨てるのも大変だし。」
そう話したのは、惣菜コーナーで立ち止まった女性客だ。個別パックがなくなることで家庭から出るプラスチックごみが減ることを、むしろ歓迎している様子だった。環境への意識が高まるなかで、バラ売りへの切り替えは「包装を減らす取り組み」としても受け入れられているようだ。

別の客はこう語る。「便利になる。自分の好きなものを何個でも。袋だと時々いっぱいで残る分があるので、これ(バラ売り)は食べられる分で買える」
パック詰めの場合、あらかじめ決まった数量や組み合わせで販売されるため、「1個だけ欲しいのに3個入りしかない」という状況が生まれることがある。バラ売りであれば、コロッケ1個、焼き鳥2本というように、自分の食べたい量だけを選んで買うことができる。食品ロスを減らしたいという意識とも合致し、利便性の面でも評価されているようだ。

指定ごみ袋への影響は 「買いだめ控えて」と自治体が呼びかけ

ナフサショックの影響が気になる身近なプラスチック製品として、自治体が指定する「ごみ袋」も挙げられる。プラスチックを原料とするごみ袋の価格や供給量への影響を心配する声も聞こえてくる。

この点について、指定ごみ袋やシールを導入している石川県内の自治体のほとんどでは、今年度の供給量に問題はなく、値上げも現時点では検討していないということだ。一方で、不安を感じた住民が必要以上にごみ袋を買いだめするケースも想定されるとして、各自治体は必要以上の買いだめを控えるよう呼びかけている。

マルエーの決断は、ナフサショックという外部的な要因に突き動かされたものだ。しかし結果的に、2020年のコロナ禍以降に定着した「個包装が当たり前」という慣行を見直すきっかけにもなっている。

コロッケ90円という価格を守ること。作業の手間を減らすこと。ごみを減らしたいという客の意識に応えること。これらが一致する形でバラ売りへの転換が実現したマルエーの事例は、ナフサショックの「影響」という文脈を超えて、地域のスーパーが消費者と共に変化していく姿を示している。スーパーの模索は今後も続きそうだ。

(石川テレビ)

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