中国の習近平国家主席が北朝鮮を訪問し、金正恩総書記と会談した。注目されていたのは、日本の安全保障にも関わる北朝鮮の核問題だ。
発表から消えた「非核化」の文言
6月8日に行われた首脳会談後、中国外務省が発表した内容では「北朝鮮の核問題」や「朝鮮半島の非核化」について全く触れていない。
7年前の2019年6月に習氏が訪朝した際の首脳会談では「中国側は朝鮮半島の非核化実現と地域の恒久的な安定の実現に向け、積極的かつ建設的な役割を果たす」と発表している。
それ以前に行われた習主席と金総書記のほとんどの会談で中国側発表に「朝鮮半島の非核化」という文言が確認できる。「朝鮮半島の非核化」が消えたのは、前回2025年9月に北京で行われた首脳会談からだ。今回行われた首脳会談と合わせ、中国側は2回続け「朝鮮半島の非核化」を言わなくなったことになる。
中国外務省の報道官は、9日、今回の首脳会談で「非核化」の議論があったか問われ「朝鮮半島問題における中国の立場と政策は一貫している」と答えるにとどめている。
北朝鮮側も「非核化」に触れず
一方、北朝鮮側の公式報道でも「朝鮮半島の非核化」との表現は見当たらない。

ただ、北朝鮮側は「会談では、国際および地域問題に対する意見交換が行われ、複雑な世界政治情勢の中で朝中両党、両国間の戦略的調整と協力を強化し、両国の主権と安全、発展利益を固守し、地域と世界の平和と発展を共同で守る問題が議論され、『満足な見解の一致』が遂げられた」としている。
「両国」を対象にした表現だが、北朝鮮にとって「主権」「安全」「発展利益」などは金氏が「核」について語る際のキーワードだ。首脳会談には中朝双方の国防相も出席しており、軍事分野や安全保障について何らかの議論が行われた可能性がある。
今回の首脳会談で中国側の発表を見ると「非核化」の表現が消えた一方、強調されているのは各分野の交流と実務協力の拡大だ。習氏の発言には「中国側は北朝鮮側と発展戦略の連携を強化し、経済貿易、農業、建設、科学技術、医療衛生などの実務協力を拡大」とあり、外交・治安・軍事分野などの交流強化も提案している。コロナ禍で停止していた人やモノの交流などを拡大することで中国としては、冷え込んでいた北朝鮮との関係を強化し安定につなげたい思惑が見える。
北朝鮮の後ろ盾とみられている中国が「朝鮮半島の非核化」について言及しなくなったことは、中国が北朝鮮の核保有を事実上黙認したとも受け止められることになり、北朝鮮が核開発計画を更に進め、核兵器の強化につながる懸念がある。北朝鮮の核開発は、地域の安全保障に関わる問題のひとつで、日本としても注視していく必要がある。
(FNN北京支局長 垣田友彦)
