秋田県内でクマの出没が相次ぐ中、「これから出る可能性」を示すAI予測マップが実用化された。開発したのは上智大学・深澤佑介准教授の研究チーム。河川や森林、人の暮らしなど多様な要素を分析し、遭遇リスクを可視化することで、被害の未然防止に役立てようとしている。

AIが示す「遭遇の可能性」

秋田県では近年、クマの目撃が市街地でも相次いでいる。県の情報マップシステム「クマダス」では、出没場所や状況を確認できるものの、あくまで過去の情報にとどまる。

上智大学の深澤佑介准教授の研究チームが開発した「クマ遭遇AI予測マップ」
上智大学の深澤佑介准教授の研究チームが開発した「クマ遭遇AI予測マップ」
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こうした中、「事前に遭遇リスクを知らせることで被害を減らしたい」と研究を始めたのが、上智大学の深澤佑介准教授のチームだ。

黒のバツ印が目撃情報があった場所、色分けされた丸印が遭遇確率を示している
黒のバツ印が目撃情報があった場所、色分けされた丸印が遭遇確率を示している

「クマ遭遇AI予測マップ」は、過去5カ月の目撃地点を黒いバツ印で示し、将来的に遭遇しやすいエリアを丸印で表示。色の濃さによって5段階のリスクが示される。

手形地区(左)は遭遇リスクが「非常に高い」赤紫の丸印、保戸野地区(右)は「やや高い」オレンジの丸印が複数表示されている
手形地区(左)は遭遇リスクが「非常に高い」赤紫の丸印、保戸野地区(右)は「やや高い」オレンジの丸印が複数表示されている

秋田市中心部では、手形地区が「非常に高い」、保戸野地区が「やや高い」と予測され、いずれも実際に目撃情報が寄せられている。

多様なデータから導く予測

このシステムは、地図を1km四方のメッシュに分け、様々なデータをAIに学習させている。

クマの目撃情報や人口分布に加え、衛星画像を使ったブナなど落葉樹の分布も分析。餌となる木の実が多いエリアには目撃が集中し、人の居住地と重なるとリスクが高まると判断される。

さらに、標高や気候、現地調査で得た土地の特徴も反映されている。

「川」が精度向上のカギに

試行錯誤の中で、2025年10月以降に取り入れられたのが河川の要素だ。

川を泳いで渡るクマ(視聴者撮影)
川を泳いで渡るクマ(視聴者撮影)

深澤准教授は「クマは川を伝って移動するという情報を得た。上流の出没を下流でも活用する必要がある」と説明する。

遭遇リスクが高い川を赤い線で表示
遭遇リスクが高い川を赤い線で表示

クマは基本的に人目を避けようとするため、やぶが多く身を隠しやすい河川敷は移動経路として利用されやすいと考えられ、マップではリスクの高い川が赤い線で示される。

この分析により、予測精度は約70%まで向上した。

水路や地域環境も影響

さらに調査からは、米どころならではの特徴も見えてきた。

上智大学・深澤佑介准教授
上智大学・深澤佑介准教授

深澤准教授は「冬は川が流れていないため、水路を使って移動することがある」と指摘。農業用水路も重要な経路となる可能性があるという。

また、AI分析では、高齢化が進む地域で耕作放棄地や空き家が増えることが、クマの行動域拡大につながる可能性も浮かび上がった。

予測情報を被害防止へ

公開から約半年で4万件超のアクセス
公開から約半年で4万件超のアクセス

この予測マップは2025年11月に一般公開され、2026年5月時点で4万件を超えるアクセスがある。

深澤准教授は「まずは県の公式情報を確認した上で、これから出そうな場所の情報として活用してほしい」と呼びかける。

過去の目撃に加え、「未来のリスク」を知る新たな手段として、AIの活用がクマ被害の抑制につながることが期待されている。

(秋田テレビ)

秋田テレビ
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