1ヶ月ほど前の本コラムで「消費減税の主張をやめるのは難しいけど…。高市総理は2年間の食料品消費税ゼロを実現できるのか」と書いたのだが、どうやらゼロではなくイチなら来年4月には実現しそうな雲行きだ。

“死に物狂い”で上げた消費税

個人的には消費税減税にはあまり賛成ではない。

これまで3人の力のある総理(竹下登、橋本龍太郎、安倍晋三)がまさに「死にものぐるい」でゼロから3に(竹下)、3から5に(橋本)、5から8に(安倍)、8から10に(安倍)上げてきたのだ。

安倍元総理は消費税を2度上げた
安倍元総理は消費税を2度上げた
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消費税は社会保障の安定財源なので、減税するなら社会保障をカットしなければいけない。時限的に下げる案についても「誰かそれを戻す力のある政治家はいるのか」と思ってきた。

今回の減税話については、いつもそうなのだが「どうせ無理だろう」という否定的な話の方が断然多かった。

ただ2つの情報を聞いて「高市さんやるかな」と思った。

小野寺税調会長が乗り気?

1つは自民党の小野寺五典税調会長が「ゼロじゃなくてイチで年度内」案に乗り気という話が1カ月前に広がったことだ。この人は肝心な時の政治判断が非常に優れている。

小野寺税調会長は「イチで年度内」案に乗り気との情報が広がった
小野寺税調会長は「イチで年度内」案に乗り気との情報が広がった

もう1つは高市氏の側近議員が「首相の性格からしてどんな形でもやります」と繰り返し言っていたことだ。

“政治カレンダー”を見てみると

さて高市氏が2027年4月から食料品の消費税率を1%にするとして、2年後の2029年4月には元に戻せるのだろうか。今後の政治カレンダーを作ってみた。

2026年秋 臨時国会で消費税減税法案が成立
2027年4月 消費減税スタート
   4月 統一地方選
   9月 自民党総裁選 
2028年7月 参院選 
2029年4月 消費減税終わり 
2030年2月 衆院任期切れ

今年秋の臨時国会で減税法案が成立し、食料品の消費税率を「ゼロ」でなく「イチ」にするなら2027年4月に減税をスタートできる。その直後の統一地方選にはいい影響が出そうだ。

国力研究会の初会合 5月21日
国力研究会の初会合 5月21日

その後の9月に行われる自民党総裁選だが高市氏の再選につなげる思惑で作られたと言われている勉強会「国力研究会」には総裁候補である小泉進次郎防衛大臣と小林鷹之政調会長が発起人として参加、もう1人の林芳正総務大臣は発起人に入れてもらえなかったが、会には「一般参加」している。

国力研究会には自民党議員の8割超が参加した
国力研究会には自民党議員の8割超が参加した

これで高市氏が出馬したらこの3人は普通出ないだろう。だから統一地方選で大負けしない限り高市氏再選の可能性が高いのではないか。

来年4月消費税減税は“悪くない”

そして2028年7月の参院選が終わった9ヶ月後の2029年4月に消費減税は終わる。衆院の任期が切れるのはその10ヶ月後の2030年2月だ。

もし次期衆院選が任期満了で行われるなら消費減税の終了、すなわち「消費増税」の影響はあまりないだろう。つまり2027年4月から2年間の消費減税というのは「スケジュール的」には悪くない案なのだ。

消費税を元に戻す“力”はあるのか
消費税を元に戻す“力”はあるのか

しかも「一度下げた消費税を元に戻す力のある政治家はいるのか」という心配については、高市氏なら「2年で戻す言うたんやから戻しますわ」とシレッと戻しそうな気もする。

与党の消費減税案に賛成している野党は今のところ日本保守党だけなので、参院で可決されるメドはまだたってないのだが、保守政権が出した減税法案に左派野党は反対できないのではないか。

「元に戻すのはやめよう」に注意

ただこの減税は高市政権にとって吉と出るか凶と出るかはわからない。心配なことが2つある。

1つは減税を始めて2年後に「元に戻すのはやめよう」という声が与野党、メディアなどから必ず上がってくるだろうが、これには財源の議論なしに安易に乗ってはいけない。

橋本龍太郎総理(当時)は所得税減税の復活巡って発言がブレた事も
橋本龍太郎総理(当時)は所得税減税の復活巡って発言がブレた事も

1998年に橋本龍太郎総理が一度やめた所得税減税を復活させるようなことを言ってその後発言が迷走し、直後の参院選で大敗して退陣した。税金の話は中途半端にブレるとドツボにハマる。

2つ目は、消費税は「政治銘柄」なので上げるのも下げるのも、ものすごく政治的エネルギーが必要だ。

消費税にエネルギーを使いすぎて本来高市政権に期待されている保守的な政策の実現が滞ることがあってはいけない。

皇位継承の安定化、夫婦別姓議論に終止符を打つための旧姓使用の法制化、国家の情報機能の充実、そして憲法改正などやらねばならぬことはたくさんある。高市さんは「なぜ私が首相に選ばれたのか」を間違えないようにしてほしい。

その上であえて書く。

日本の“痛税感”は和らぐか

我が家は夫婦共稼ぎで、スーパーでの食料品の買い物は主に筆者の仕事なのだが、一度にまとめて買うために高額になることがある。

以前はまとめ買いすると1万円を超えることがたまにあったのだが、ここ数年、消費税が上がったこととインフレで1万円超えが増えて、その度にイラっときていた。

食料品の消費税が下がれば“痛税感”は和らぐが… イメージ
食料品の消費税が下がれば“痛税感”は和らぐが… イメージ

消費税率が8%から1%に下がれば、たとえば10500円だった買い物が9820円になるわけだ。これはかなり気分がいいと思う。

欧州より消費税率が低い日本で「痛税感」が強いのは食料品の税率が高いからだろう。だから2年間、「食料品の消費税ほとんどゼロ」を楽しみながら、これを続けていくには社会保障をどのくらいカットすればいいのか、などを議論してはどうか。

給付付き税額控除は誰かが文句を言う

高市政権は給付付き税額控除の制度設計をその間にやると言っているのだが、これはどんなやり方をしても誰かが必ず文句を言う制度だ。

だったらこれまで議論の下地ができている「後期高齢者の医療費原則3割負担」や「高額療養費の見直し」「薬の保険適用の見直し」をして、食料品の消費税率をゼロにする方が「王道」ではないだろうか。

【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。