「着衣泳」体験 水難事故から身を守る術とは

衣服を着たまま水に落ちたとき…人はどれほど動けなくなるのか。
島根・松江市で開かれた「着衣泳」の講習会で、中学1年生58人が、その現実を体で体感した。
そして空のペットボトル1本が「命綱」になるという、シンプルだが役に立つ「自己防衛」術を学んだ。

服を着たまま水中へ…動きにくさを体感

松江市宍道町の屋内プールで開かれたこの講習会は、日本赤十字社島根県支部が主催した。
義務教育学校「玉湯学園」の中学1年生58人が参加し、4つの班に分かれて実際に衣服を着たままプールに入った。

普段とは全く異なる感覚が、参加した生徒たちを待ち受けていた。
「浮き身」の姿勢をとろうとするが、衣服が水を吸って重くなり、口と鼻を水面から出して体を水平に保とうとしても、思い通りに体が動かない。

「いつもより重くて泳ぎにくかったです。浮くのが下手なので全然浮けなかった」…生徒の率直な言葉が、着衣状態の水中での危険性をありありと伝えている。

服を着たままでは“浮き身”の姿勢も難しいことを体験
服を着たままでは“浮き身”の姿勢も難しいことを体験
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あごの下にあてるだけ…浮く力を補う身近なアイテムとは

講習では、身近なアイテムを活用した救命法も体験した。
空のペットボトルをあごの下にあて、体を浮かせる支えにするという方法だ。

日本赤十字社・水上安全法講師の松本祥一さんは「ペットボトルをあごの下にあてます。口と鼻だけ水面下で出ていて、呼吸ができるよというところで、浮かびにくい人もこれで浮く助けをしてくれます」と説明する。

小さなペットボトル1本…それだけで、浮くことが難しかった生徒たちも体を水面に保てるようになる。
もし河原や川岸にペットボトルが1本転がっていれば、それが命を救う道具になり得るとことが、生徒たちに強い印象を残したようだ。

日本赤十字社・水上安全法講師・松本祥一さん
日本赤十字社・水上安全法講師・松本祥一さん

“善意”が危険に…二次被害防ぐための救助のルール

講習ではまた、誰かが水に落ちた場面での対応についても学んだ。

まず声をかけて落ち着かせること。
そして、自分が飛び込んで助けようとするのではなく、急いで大人の助けを求めること。
救助する際には、ペットボトルや竹竿などの道具を使うことが有効だと学んだ。

水難事故の現場では、助けようとした人が二次被害にあうケースも少なくない。
「道具を使って岸から救助する」という方法を知っているかどうかが、生死を分けることもある。

おぼれた人を見たときは飛び込まず、道具を使って救助すること
おぼれた人を見たときは飛び込まず、道具を使って救助すること

水難事故は身近に潜む危険 わずか2か月で535人が遭難

水難事故は決して遠い話ではない。
2025年7月から8月の2か月間だけで、全国で535人が水難事故にあっており、そのうち103人が中学生以下の子どもだった。

松江市でも5月15日、14歳の男子中学生がボールをとろうとしてため池に転落する事故が発生している。
身近な場所で、ちょっとしたきっかけで起きてしまうのが水の事故だ。

「泳いでも大丈夫だよというところで泳ぐ、それ以外のところで泳ぐということはとても危険なことで、決してやってはいけないことというのをお伝えしたい」と、講師の松本さんは言う。

水辺の危険について語る松本さん
水辺の危険について語る松本さん

事故を防ぐカギは「備えと判断」 “自己防衛”の重要性

講習を終えた生徒からは「川遊びとか、服を着て水に入るときは講習が役立ちそう」という声も上がった。
実体験を通じて得た知識は、頭で覚えたものとは重みが違う。

松本さんをはじめ講師陣が最後に強調したのは、「自己防衛」の重要性だ。
適切な準備とルールを守ること、そして危険な場所にそもそも近づかないこと。
それが水難事故を未然に防ぐ最も確実な方法だという。

夏に向けて川や海に出かける機会が増えるこれからの季節、今回の講習で学んだことが生徒たちの記憶に刻まれ、いざというときの行動につながることを願うばかりだ。

講習を受けた学んだことを話す生徒
講習を受けた学んだことを話す生徒
TSKさんいん中央テレビ
TSKさんいん中央テレビ

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