いま、町場の弁当店がかつてない危機に直面している。背景にあるのは社会の変化、さらにはスーパーやコンビニの台頭だ。そこに物価高が直撃する昨今、経営者の悩みは尽きない。

地域で愛され20年 こだわりの無添加・手作り弁当

静岡市葵区馬場町の地で、地域から20年以上にわたって愛されている「たんぽぽ」。

こだわりは手作りかつ無添加の弁当で、保存料や着色料は一切使っていない。

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常連客は「添加物が入っておらず、おいしいのでよく来る」「ひとつひとつが丁寧に作られていておいしい」と太鼓判を押す。

倒産は過去最多 社会の変化やコンビニの台頭で大逆風

しかし、こうした町場の弁当店はいま、かつてない苦境に立たされている。

帝国データバンクによると、仕出しやテイクアウトを中心とした弁当店の倒産は去年1年間で55件。

2年連続で過去最多を更新した。

背景にあるのはリモートワークの一般化に加え、会議や法要などの大口発注の減少、さらにはスーパーやコンビニとの熾烈な価格競争も影響している。

予想を超える物価高 経営を直撃

たんぽぽの店長・鈴木信也さんは3年半前に前オーナーから店を引継ぎ、現在は妻の綾子さんと二人三脚で店を切り盛りしているが、綾子さんは「3年半前から現在に至るまで、いろいろなものが予想を超える値上がりとなっている。特に去年は米がなく、価格が倍以上になった。いまは少し落ち着いて値段が下がっているが、それでも高止まりしている状況で、さらにここに来て資材不足から資材の値段も高くなっている」と表情を曇らせる。

原材料費の高騰に伴い、唐揚げは鶏のモモ肉の使用をやめ、むね肉へと変えたが、信也さんによれば業者から油の値段が一気に上がると伝えられていることから提供自体をやめるかもしれないという。

また、衛生管理の観点から必要不可欠な手袋や弁当容器など石油由来の製品も軒並み3割から4割の値上げを伝えられているため、やむを得ず5月からは弁当の販売価格を引き上げていて、綾子さんは「しなくていいならしたくない。お客さんにも負担がかかってしまうので、踏ん張りたいところではあるが、いろいろな工夫をいくつもやってきた中で、ここまで想定を超える値上げをされると、もはや太刀打ちできない」と肩を落とす。

その後、早朝から5時間にわたる仕込みを終えると、休む間もなく配達や販売会へと向かった綾子さん。

人件費を削るため、スタッフの人数を最盛期の3分の2へと減らしたことで夫婦の負担も以前より増している。

支えは客の声 貫く信念

ただ、どんなに厳しい状況であっても無添加・手作りというこだわりを捨てることはない。

それが長年にわたって多くの人から支持されている、たんぽぽのアイデンティティだからであり、綾子さんは「お客さんが温かく『お互い頑張っていこう』と言ってくれるので、それを励みにやっていて、お客さんを裏切ってはいけないという思いが力になっている。こういう時だからこそ、お客さんと一緒に乗り越えたい」と前を向いた。

たんぽぽ・鈴木綾子さん
たんぽぽ・鈴木綾子さん

特に個人経営の弁当店にとっては冬の時代とも言える昨今。

先が見えない中ではあるが、たんぽぽの名に込められた「地域に深く根差す」という願いを体現するためにも、夫婦はきょうも店に立ち続けている。

テレビ静岡
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