大井川鉄道が6月から予定している井川線の観光列車化ならびに大幅値上げをめぐり、同社の鳥塚亮 社長が自身のブログで地元に対する怒りをあらわにした。一方、地元町議はブログの記載内容に反発している。
衝撃!定期利用者は過去15年間ゼロ
大井川鉄道の井川線は千頭駅(川根本町)と井川駅(静岡市葵区)を結ぶ全長25.5kmの路線で、1935年に発電所を建設するため資材の運搬用として一部が開通した。
当時は中部電力の専用鉄道だったが、1959年に大井川鉄道が運行を受託する形で営業運行を開始。
途中には国内の鉄道としては最も急な勾配があり、通常のレールでは進めないため、当該区間は滑り止めが付いた「アプト式」と呼ばれる形態で運行しているのが特徴で、“湖に浮かぶ秘境駅”として知られる奥大井湖上駅も景観の良さから人気が高い。
ただ、かつては地域の足として利用されていたものの現在は地元住民による利用は皆無となり、定期利用者は過去15年間にわたりゼロという状況が続いている。
大幅値上げ 観光列車への大転換
そこで、大井川鉄道が6月1日から実施を予定しているのが井川線の“観光列車化”だ。
具体的には旅行商品として事前予約制で発売し、価格は区間にかかわらず大人1人につき1乗車3500円(小児半額)。
現在の区間運賃は160円~1340円となっているため、全区間を乗車した場合、いまの2.61倍となる。
ただ、沿線の温泉に宿泊する観光客などの利便性を図るため、普通乗車券のみで利用できる列車を1日1往復設けるという。
また、将来的に車が運転できなくなった時の地域住民への配慮から、全列車に乗車可能な2年間有効(更新式)の住民パスを手数料1000円で発行することも計画している。
変化のない鉄道に将来はない?
こうした中、大井川鉄道の鳥塚亮 社長は4月27日に自身の個人ブログを更新。
鳥塚社長は廃線の危機に瀕していた千葉県の「いすみ鉄道」を様々なアイデアで有名にしたほか、新潟県を走る「えちごトキめき鉄道」の社長時代にはリゾート列車を貸し切っての結婚式を企画するなど斬新なイベントを次々と打ち出し観光誘客に導いた“ローカル鉄道の再生請負人”として知られ、大井川鉄道の社長には2024年6月に就任した。
ブログの中で、鳥塚社長は井川線を観光列車化する背景や新たな価格設定について国内外の鉄道と比較する形で説明。
現在の運賃については昭和の時代から“地域の足”としての設定になっていることを強調した上で「地域利用者は皆無で乗るのは観光客ばかり。しかもお金は地元民利用と同じ基準。これは果たして正しいのでしょうか」と疑問を呈し、「前例主義にとらわれることなく、やたら時間をかけることなく、世の中の実情に合わせて変化をしていかなければ、鉄道の将来は無いのです」と記した。
再生請負人の本音と葛藤
とはいえ、観光客の減少を心配し、大幅な値上げに否定的な声があることも事実だ。
鳥塚社長はこうした意見を念頭に置いてか、翌28日にもブログを更新し(現在は削除)、「こういうお話を地域の皆様方にしたとたんに、瞬間湯沸かし器のように『お前は何を言っているんだ~!』とか『そんなこと認められるか~!』と沸騰するわけで、そういうのを見て私としては『あぁ、やっぱりここもそうか。』と思う自分がいるのは確かでして、自分の年齢を考えると、そういう人たちに馬鹿にされて、禿げた頭を下げてまでやる必要があるのかなあとか、『そんなに反対されるなら、あとは皆さんで考えて勝手にやってみたらいかがですか?』と言い放ってお暇しようかなあと、ちょっと消極的になる自分も心の中にいる」とこぼした。
町議が猛反発「町民への侮辱」
一方、地元・川根本町の町議7人がブログの内容に反発。
特に問題視しているのが「大井川鉄道は純粋な民営鉄道です。株式会社でありますが私鉄であり第3セクター鉄道ではありません。地域の資本が入っていませんから地域は経営には参画していません。つまり、私の口から『地域のための鉄道』とはっきりと申し上げることができない状況にあります」(27日)、「ふだん田舎の山の中で生活している人たちにも理解していただくことは難しいということを、『やっぱりここもそうだったなあ。』と今回改めて感じているところなのです」(28日)、「『別に井川線が廃止になったとしても、世の中大勢に影響はないし、地域の人たちの観光産業は困るかもしれないけど、自分たちで反対してこの話をつぶすんだったら、それは自己責任だから私が責任を感じることもないし。」とか思う自分もいるわけですよ』(28日)との投稿で、5月7日は中原緑 副議長などが大井川鉄道の本社を訪れ「川根本町の関係者として看過できない記述があった」と抗議書を手渡すとともに、その後の取材に対して中原副議長「社長のブログは町民への侮辱。地域の鉄道であるにもかかわらず、地域の鉄道ではないというようなの表記は訂正してほしい。社長本人による発言意図の説明と真摯な謝罪を求める。山間地に暮らす住民の理解力を否定するような表現だと感じているし、差別にあたると私たちは判断している」と述べた。
これに対し、大井川鉄道経営企画室の池田香羊 課長は「会社としての公式な見解ではなく、私たちも関与していない」と、あくまで鳥塚氏が個人で管理しているブログとの認識を示している。
(テレビ静岡)
