「全然バレてますよ」そう断言するのは、20年以上のキャリアを持つ現役の万引きGメンです。
スーパーやファッション店で急速に普及が進むセルフレジ。便利さの裏側で今、そのシステムを巧みに悪用した万引きが増加しています。
しかしGメンの「全然バレる」という断言の背景には、セルフレジ1台1台に防犯カメラが設置され、客を撮影していることなどがあり、対策も進んでいます。
一方、ユニクロの「商品を置くだけ」で計算してくれるレジでは、タグを破くなどしてごまかすという手口が。
対策として最も抑止効果が高かったのは、システムの高度化ではなく、「店員さんがちゃんと声かけること」という「手厚い接客」でした。
■「盗む・隠す」から「ごまかす」へ
国内の小売店でのセルフレジ導入率は、およそ55.5%という調査結果があります。
和歌山市にあるスーパーも4年前から導入し、店長は「レジ台数が増えるぶん、対応できるお客さまの人数も増える」と利点を話します。
しかし、こうした導入の広まりと歩調を合わせるように、万引き被害も拡大しているのです。
全国万引犯罪防止機構の調べによると、「セルフレジ導入によって万引き被害が増えた」と答えた店は、25%にものぼります。
日本警備通信の万引きGメン、石原知典さんはその変化を「店内での万引きは”盗む””隠す”。セルフレジに関しては”ごまかす”の方が主体になっている」と表現しました。
■13点を”ごまかし”する手口を実演
取材班の依頼を受け、石原さんはスーパーの協力のもとで実際の手口を実演しました。
売り場の棚の前で手に取ったのは、安価な小松菜と高額な精肉のパック。小松菜の背後に精肉を重ねてセルフレジへと向かい、バーコードを読み取らせたのは小松菜一品だけ…。
「小松菜でレジ通ってるんですけど、実際これ後ろには高級なお肉が入ってます」と石原さんは淡々と説明しました。
こうした”重ね打ち”を含む様々な手口で会計を試みたところ、レジに通したのは合計6点・723円分。しかし実際に手に入れた商品は13点・5495円分にも上りました。
小さくて高額な商品が特に狙われやすいといいます。
■「スポットで映すので、全然バレてます」
ただし石原さんは、こうした手口は「必ずバレる」と強調します。
【日本警備通信・万引きGメン 石原知典さん】「セルフレジってスポットでその人を映すので、全然バレてますよ」
実際、取材したスーパーでは、セルフレジ1台1台に防犯カメラを設置しています。
さらに店を出る際、客がレシートを機械にかざすと商品の合計点数が読み上げられ、店員が目視で確認する仕組みも導入済みです。
それでも店長は複雑です。
【和歌山市内のスーパー店長】「お客さまのためを思うのであれば、もうちょっと台数を増やしていきたい。でも万引きが増えてしまうところもあるので、今のところは今の台数でいこうかなと」
■ユニクロでも”魔法のレジ”の死角
問題はスーパーにとどまりません。
ユニクロが導入する”置くだけで会計できる”セルフレジでも、万引きとみられる行為が横行している実態が見えてきました。
ユニクロのセルフレジは、商品のタグを非接触で読み取り、点数と金額を判別する仕組みです。
しかしSNS上では「会計したら4点しかないのに5点で計算された。調べてもらったらポケットにタグが入っていた」という投稿が。
タグを破壊・切り取って別の商品のポケットに忍ばせ、代金を払わずに持ち去る…そんな手口が広まっているとみられます。
■レジの前の段階で不正をしていると検知ができない
万引き防止を専門とする香川大学教育学部の大久保智生教授は、このシステムの構造的な問題を指摘します。
【香川大学教育学部 大久保智生教授】「皆さん”魔法のシステム”みたいに思っているところがあるんです。自分でスキャンしないので不正が減るんじゃないかと勘違いしがちなんですけど、実は自分でしないからこそ、レジの前の段階で不正をしていると検知ができないという一番の問題がある」
ユニクロを運営するファーストリテイリングは取材に対し、「無人レジを含む店頭オペレーションについて、日常的に確認・改善を行っております。セルフレジでのご精算時には、必ず点数をご確認いただくようお願い申し上げます」とコメントしています。
■「一番効果があるのはあいさつ」という原点
では、巧妙化するセルフレジ万引きをどう防げばいいのでしょうか。大久保教授が提唱するのは、意外にも”アナログ”な答えです。
【香川大学教育学部 大久保智生教授】「新しいシステムに過大な期待をしすぎてる。やっぱり一番は人の目なんですよ」
教授が行った疑似的な万引き状況を使った実験でも、最も抑止効果が高かったのはシステムの高度化ではなく、「店員さんがちゃんと声かけること」だったといいます。
セルフレジの周辺に店員を配置し、接客を手厚くすることが、万引きを減らす最も現実的な手段だということです。
刑事事件も数多く手掛ける菊地幸夫弁護士は「万引きは窃盗罪にあたる立派な犯罪であり、現在は多くの小売店が発覚した場合に迷わず警察を呼ぶ対応を取っている」と警告しました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年6月4日放送)