科捜研の元職員がDNA鑑定で不正を行っていた問題。これまでの経緯を振りかえります。
「日本中の皆様に鑑定の公平性、信頼性疑念を抱かせてしまうような事態を引き起こし心底申し訳なく反省しています」
問題が明らかになったのは去年9月。
佐賀県警は科捜研の職員がDNA鑑定で7年以上にわたり不正を行っていたと発表しました。
【佐賀県警 福田英之本部長】
「県警察に対する県民の信頼、警察活動への信頼を大きく損なうものであり、重く受け止めており、県警察の責任者として深くお詫び申し上げます」
証拠隠滅などの罪で起訴された元職員冨永剛弘被告42歳はDNA型鑑定業務の手間を省こうと考え不同意性交や窃盗などの事件に関する鑑定について不正を行ったとされています。
具体的には実際は実施していないのに鑑定したように見せかけるウソの記録をしたり鑑定後の資料を紛失したことを隠そうと別のガーゼ片などを保管し事件に関する証拠を偽造したりしていました。
県警の聴き取りに対し冨永被告はその理由について「自分の仕事ぶりを上司によく見せたかった」などと話していました。
一方、県警は捜査・公判への影響はないとし第三者による調査は「必要ない」と繰り返しています。
そして去年10月…。
【吉冨】
「午前9時半ごろの県警察本部です。警察庁の首席監察官らが今、県警本部へ入っていきます。これから特別監察が始まります」
警察庁は佐賀県警の特別監察に入り17人態勢で原因などを分析。
4日、最終報告にあたる「調査結果」を公表しました。
【吉富】
約8か月にわたり行われた警察庁による特別監察では県警が発表していた不適切な鑑定130件に加え冨永被告が担当していたDNA型鑑定632件全てを対象に捜査・公判への影響や不正の要因などについて調査が行われました。
その結果、239件、県警が発表していたもの以外にさらに110件の不正な鑑定があったことが分かりました。
【キャスター】
かなり差がありますね。なぜそんなに開いたんでしょうか。
【吉富】
警察庁はこの結果について「佐賀県警察における調査結果に不十分な点が認められた」とする一方で専門性の高い分野の調査で調査対象や調査方法の検討、体制において1県警察で対応に当たることには限界があったと説明しています。
引き続き調査結果を見ていきます。
不正の開始時期についてこれまで2017年6月とされていましたが、調査の結果2016年8月からで冨永被告は約8年間にわたり不正をしていたことも新たにわかりました。
そして、検察に送った件数も16件から41件と大幅に増えています。
【キャスター】
約8年間不正が行われていたんですね。
新たに判明したものも含め捜査に影響はあったのでしょうか。
【吉富】
239件のうち、37件が「本来、判明するはずの被疑者を判明させることができなかった」かどうか影響不明とされています。
冨永被告が適切に鑑定を行っていればDNA型が検出できた可能性、またできなかった可能性もあり、捜査への支障があったかわからないということです。
刑事事件に詳しいフジテレビの平松解説委員は次のように指摘します。
【フジテレビ報道局 平松解説委員】
「警察庁とはいえ行政機関なので科学的に断定できないことまで断定できない以上「影響不明」とせざるをえなかった。ただ、慎重な表現に見えるのでそもそも慎重な表現は責任回避と受け止められかねない。結果的に影響不明という表現で信頼回復につながるか、私は疑問に思う」
また、検察に送られた41件の鑑定結果は全て公判で使用されておらず影響がなかったとしています。
【キャスター】
不正が行われた要因は何だったのでしょうか。
【吉富】
警察庁は大きく3つの要因があるとしています。
1.本人の倫理観の欠如、周囲のサポート不足
2.不十分なチェック、管理
3.幹部による監督不足
特に注目したいのが1です。
特別監察での聞き取りの結果、冨永被告は検査結果が自分の予想通りになるように「DNA型鑑定を実施しなかった」。
また、上司から指摘を受けないように「ワークシートに虚偽の記載をした」と話していて、倫理観の不足が指摘されています。
また、サポート体制について、科捜研の職員は当時他部署への人事異動や他の県警との人事交流などがなく、少数の職員で閉鎖的な環境にあったとしています。
冨永被告自身も相談のしづらさや十分な指導が受けられていないと感じていたほか、5~6名で多数のDNA鑑定を行うため業務負担があったとされています。
【キャスター】
そうはいっても8年間誰も気づけなかったというのはどういう環境だったんでしょうか。
【吉富】
今回の調査結果では組織的に業務を管理する仕組みがなく、鑑定資料やデータの管理体制が不十分だったとしています。
具体的には、冨永被告が昼休みに鑑定機器を使用していることを知りながら特に使用状況を確認しない。鑑定資料の管理や作業台の整理整頓は個人任せになっていたことなどがあげられ、要因と考えられるとしています。
平松解説委員は今後のついて次のように話します。
【フジテレビ報道局 平松解説委員】
「個人の不正だけれどもそれを長年チェックできずに見逃してきたということは組織の責任ということ。今回の特別監察の報告書を出して終わりではなくて、ここからが始まり。かなり高度な知識が必要な分野、外部の専門家もつれてこよう。機能面から変えていくんじゃないか。科捜研という制度から変えていくのではないか。それくらいの構造改革が進んでいくのではないかと思う」
警察庁は最終報告としましたが県民からは第三者による調査を求める声もあります。
今後再発防止を進め一刻も早く県警への信頼を回復させることが求められます。