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プレスリリース配信元:ミサワホーム株式会社

国士舘大学とミサワホーム総合研究所による共同研究

 国士舘大学(学長 田原淳子)とミサワホームグループのシンクタンクである株式会社ミサワホーム総合研究所(代表取締役社長 千原勝幸、以下 ミサワ総研)は、国士舘大学の小久保彰 准教授を研究代表者とする「昭和基地 地学棟木質パネルの耐久性に関する研究(以下 本共同研究)」に取り組みました。
 本共同研究は、大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所(以下 極地研)が実施する「令和7年度 一般共同研究※1」に採択され、同制度の枠組みを活用して実施したものです。

「地学棟」 高床式木質パネル構造(延べ面積約101平方メートル ) 写真提供:国立極地研究所

■調査の対象:46年間、極限環境に耐えた「地学棟」
 日本の主要観測拠点である南極・昭和基地は、最低気温マイナス45℃、最大瞬間風速60m/s前後の地吹雪を伴う強風、激しい紫外線などにさらされる極限環境にあります。また、この基地は、半世紀以上にわたり維持・管理・運用が続けられています。本共同研究の対象となった「地学棟」は、この厳しい環境条件下で、1978年の建設から2024年の解体まで約46年間にわたり運用された、木質接着複合パネル(以下 木質パネル※2)構造の建物です。今回の共同研究では、国内に持ち帰られた木質パネル(壁パネル2枚、床パネル1枚)から試験体を採取し、各種試験により耐久性を検証しました。これらの結果は、今後の南極建築の設計資料として活用することを目的としています。

■調査方法と結果:すべての試験項目で強度の基準値を上回る
 JIS(日本産業規格)およびJAS(日本農林規格)に基づく4種類の材料強度・接着強度試験を実施しました。その結果、木質パネルは過酷な環境で長期間運用された後でも、構造部材としての力学的性能および接着性能に有意な低下は認められず、すべての項目で強度の基準値※3を上回り、高い耐久性を保持していることが実証されました。



■技術的検証:構造的一体性を支える「ストレススキン効果」
 特筆すべきは、木質パネルの接着性能です。木質パネルの強度は、格子状の芯材と表面の合板を接着剤で強固に一体化させる「ストレススキン効果※4」によって生み出されます。今回の検証では、合板-芯材間の接着強度は強度の基準値を上回る水準で維持されていました。
 さらに、接着層の剥離ではなく木材自体が破壊される「木部破断率」が86.4%~94.5%という極めて高い結果を示しており、半世紀近い歳月を経てもなお、木質パネルが構造体として健全な状態を保っていることを科学的に裏付ける結果だと考えられます。





■耐久性維持の要因:昭和基地における「配置計画」の重要性
 「地学棟」の外壁仕上げは、後の標準仕様となる表面鋼板による補強がなく、構造用合板に油性調合ペイントを施したのみの「露出仕様」であり、木質パネル自体の耐久性が直接試される極めて過酷な条件下にありました。それにもかかわらず良好な結果が得られた背景には、「地学棟」の配置環境が大きく影響したと推察されます。建物が密集するエリアでは、ブリザードの後に雪の吹き溜まり(スノードリフト)が発生しやすく、融雪水によって木質パネルが長期間水分に晒されるリスクが高まります。
 しかし、「地学棟」は昭和基地の主要部から若干離れた場所に配置されていたため、雪の吹き溜まりができづらく、また高床式による床下の通風確保も比較的容易となり、融雪水の影響が少なかったことが今回の結果につながったと考えています。【写真:昭和基地の建物配置状況、昭和基地主要部のブリザード前後の様子(2016年)を参照】

 本共同研究により、適切な配置計画や建物形状の工夫によって、雪の吹き溜まりの発生を抑え、融雪水の影響の軽減を図ることで昭和基地のような極限環境下においても、木質パネル建築が46年を超える極めて高い耐久性を維持しうるという重要な知見が得られました。

□昭和基地の建物配置状況



□昭和基地主要部のブリザード前後の様子(2016年)

※写真提供:国立極地研究所

■今後の展望:46年の実績が裏付ける信頼性を、さらなる極地建築へ
 本共同研究で実証された極限環境下での高い耐久性は、ミサワホームが培ってきた木質パネル技術の信頼性を改めて科学的に裏付けるものです。この技術検証を通じて得られた確かな知見と品質を礎に、引き続き施設建設のサポートを通じて南極地域観測隊の安全・安心な生活基盤を確保し、日本の極地観測活動の発展に貢献してまいります。

■本共同研究を主導した国士舘大学 小久保 准教授による見解
国士舘大学 理工学部 理工学科 
准教授 小久保 彰(こくぼ あきら)
 博士(工学)、一級建築士、1級建築施工管理技士。日本大学大学院修士課程修了後、大成建設株式会社において施工管理業務に従事。退職後、日本大学において博士(工学)を取得。建築技術教育普及センター参事、及び、昭和女子大学、日本女子大学等の非常勤講師を経て、現職。専門は耐震設計、防災工学、教育工学。





「国立極地研究所の『一般共同研究』という枠組みのなかで、学術界と産業界が連携し、南極建築の持続可能性を検証できたことは大変意義深いことと感じています。南極という極限環境において、半世紀近い歳月を耐え抜いた『地学棟』の構造耐久性に関する調査は、木質接着複合パネルの構造的健全性を検証する極めて貴重な機会となりました。本研究を通じて得られた知見は、今後の南極観測拠点の整備のみならず、国内における建築物の長寿命化や持続可能な建築技術の発展に大きく寄与するものと考えています。」

国士舘大学 URL:https://www.kokushikan.ac.jp/information/about/

■参考文献
1) 福田真人,小久保彰:南極昭和基地地学棟における木質パネルの耐久性調査について, 日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),pp.291~292,2025.9
2) 小久保彰,福田真人,他:昭和基地地学棟木質パネルの耐久性に関する研究, 国立極地研究所令和7年度共同研究報告書,2026
3) 日本規格協会:JIS Z 2101 木材の試験方法,2009
4) 日本規格協会:JIS K 6852 接着剤の圧縮せん断接着強さ試験方法,1994
5) 日本農林規格協会:合板の日本農林規格,2014
6) 日本農林規格協会:集成材の日本農林規格,2012

※1:極地研では、極圏における科学の総合研究および極地観測を行うとともに、全国の大学等の研究者に南極・北極での観測データや施設・設備を提供する「共同利用・共同研究」を実施しています。本件はその枠組みを活用し、学術界と産業界が連携して極地建築の持続可能性を検証するものです。
※2:木質パネルは、木芯材を格子状に組み、芯材間に断熱材を充填し、両面に構造用合板を接着したミサワホームの構造体。
※3:平成12年建設省告示第1452号に規定される基準強度。JAS(日本農林規格)構造用合板の基準値。
※4:ストレススキン効果とは、骨組みと面材を一体化させることにより、全体の強度を高めようとする効果のことです。両者をより強固に結合するほど、高いストレススキン効果が働きます。

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