プレスリリース配信元:大正製薬株式会社
大正製薬株式会社[本社:東京都豊島区 社長:上原 茂](以下、当社)は、広島大学 長谷川博教授との共同研究により、暑熱下の労働作業環境における「アイススラリー」(液体に微細な氷の粒が混ざった、流動性のあるシャーベット状の飲料)の飲用が、深部体温の低下と認知機能の改善をもたらすことをヒト試験において明らかにしました。本成果より、夏季の職場環境における熱中症対策として利用されているファン付き作業服に加えて、アイススラリーを併用することの有効性が示されました。
本研究成果は、2026年5月27日から30日に開催された第99回日本産業衛生学会にて発表いたしました。

◇背景
近年の記録的な猛暑を背景に、職場における熱中症対策は喫緊の社会課題となっています。職場の熱中症対策の強化として、2025年には労働安全衛生規則が改正され、事業者による適切な対策の実施が義務付けられました。これを受け、労働作業現場では、作業時間の管理や水分・塩分補給に加え、ファン付き作業服による身体冷却などが広く実施されています。一方で、これらの対策が講じられているにもかかわらず、職場における熱中症による死傷者数は2025年に過去最多を記録しており1)、現場ではより実用的かつ効果的な熱中症対策が求められています。
当社はこれまで、アイススラリーに着目し、その冷却効果について研究してきました※。当社のこれまでの知見を活かしつつ、職場での熱中症対策に関する社会的背景を踏まえ、本研究では、夏季の労働作業現場を想定した環境での、アイススラリーの有効性を評価しました。
※夏の熱中症対策に向けてアイススラリーが効果的に身体を冷やすメカニズムを検証
https://www.taisho.co.jp/company/news/2024/20240523001562/
◇結果
本研究では、実際の夏季屋外労働環境に相当する暑熱環境下において、ファン付き作業服を着用した状態で、労働作業を模倣した運動を実施しました。このような条件のもと、運動前および運動間の休憩時にアイススラリーを飲用した際の、生理指標および認知機能への影響を評価しました。
その結果、アイススラリーの飲用により、深部体温および前額部皮膚温が低下し、運動後半における認知機能が改善されることを確認しました。
本研究成果は、労働作業現場において一般的に用いられているファン付き作業服に加えて、アイススラリーを併用することの有効性を示唆しています。

暑熱環境下において、深部体温の過度な上昇は熱中症の発症につながります。本研究ではプレクーリング(作業前に身体冷却を行うこと)としてのアイススラリーの飲用が約0.3℃の深部体温の低下をもたらしました(図A)。これはアイススラリーの熱中症予防対策としての有効性を示す結果と考えられます。
また、前額部皮膚温は脳温を反映する指標の一つとされており4)5)、本研究で認められた前額部皮膚温の低下(図B)は、中枢性疲労の軽減や認知リソースの確保を通じて、認知機能の改善に寄与した可能性が考えられます(図C)。さらに、本研究において確認された認知機能の改善は、労働作業中の注意力や判断力の改善につながることが示唆されます6)。
暑熱環境下での注意力の低下は、生産性の低下だけではなく、怪我や事故を招く要因となることが指摘されています7)。したがって、本研究結果は、アイススラリーが熱中症対策として身体的負担を軽減するだけでなく、作業効率や作業安全性の改善にも寄与しうることを示しています。
◇研究成果のまとめ
本研究では、暑熱環境下における労働作業を模倣した運動時に、ファン付き作業服の着用に加えてアイススラリーを飲用することで、深部体温の低下や認知機能の改善がもたらされることを明らかにしました。これより、夏季職場環境における熱中症対策として、アイススラリーが有効であると考えられます。
当社は今後も熱中症対策に関する研究を進め、生活者の皆さまの健康で充実した生活をサポートしてまいります。
参考文献
1) 厚生労働省.令和7年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値).
2) 久本博行.関西大学 社会学部紀要.2007;39(1):61-96.
3) 風間彬 他.体力科学.2012;61(5):459-467.
4) Onitsuka S, et al. J Therm Biol. 2015;51:105-109.
5) Onitsuka S, et al. Sci Rep. 2018;8(1):2757.
6) Mazloumi A, et al. Health Promot Perspect. 2014;4(2):240-246.
7) Varghese BM, et al. Safety Science. 2018;110:380-392.
試験概要
対象者:20-50代の健康な男性10名
試験デザイン:無作為化クロスオーバー試験
試験食:22℃の飲料(対照)または-5℃の飲料(アイススラリー)
暑熱負荷条件:室温33℃、相対湿度60%(WBGT29℃相当)の環境制御実験室
運動負荷条件:労働作業を模倣した運動として、35%Wattmaxで40分間の自転車運動を2回実施
飲用条件:運動前に試験食7.5 g/kg体重を飲用(プレクーリング)。運動間の休憩時に2.5 g/kg体重を飲用(パークーリング)。
装用条件:アイススラリー条件、対照条件ともにファン付きの作業服、ヘルメットを着用
認知機能評価:ストループテスト
統計解析:2要因(条件×時間)の繰り返しのある分散分析、Bonferroni法
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