食パンが2斤で620円。安くておいしいと評判のパン屋さんが北海道・江別市にある。
店は障害のある人たちがスキルアップしながら働ける場所である。
4月、江別市にはまだ雪が残っていた。

温泉施設やサ高住、さまざまな施設が集まる「ココルクえべつ」。
施設の一つにパン屋さんがある。
この日から一人の男性が働き始めた。

5月に二十歳になった斉藤琉維さん。
真新しいユニホームのボタンをはめるのに手間取り、着替え終わったのは15分ほど後であった。
「(ボタンが)きついですね」(斉藤琉維さん)
斉藤さんが厨房に入ると、エプロンの締め方を先輩に直された。
斉藤さんには軽い知的障害がある。

店は火曜日を除く、週6日の営業で毎日約50種類のパンを焼き上げる。
食パンが2斤で620円、つぶあんパンは140円、クリームパンは150円。

物価高の今「価格が安い」と評判。
「レーズンブレッドがおいしかったから食べたくて」
「ブルーベリーパイ、信じられない値段(580円)です」(いずれも客)
「おいしい」(サンドイッチを食べた女の子)

初日の仕事は先輩が袋詰めしたパンをテープでとめること。
しかし、流れ作業のスピードについていけず、目の前には大量のパンが…

「こっちやってみる?」(先輩)
先輩が助けてくれた。

斉藤さんは普通高校を卒業した後、1年間、砂川市にある「障害者職業能力開発校」で流通販売を学んだ。
この学校はさまざまなコースを設けているが、就職した後もスキルアップが必要だという。
「就労して終わりではなく、就労した後にも障害のある人がさらなる自立を高められるような施設が必要になってくると思っている」(北海道障害者職業能力開発校 中嶌貴嗣校長)
ココルクえべつは、その受け皿。

10年前に運営が始まり、天然温泉の入浴施設やレストランなどが次々とオープン。
パンの店も含めて計43人が働いていて、そのうち障害のある人は18人。
半分近くにまで増えた。
入社4年目の池田貴弘さんは絵を描くのが得意なので、店のポップをすべて任された。

「(絵を描いたのは?)私です。(上手ですね)どうもありがとうございます」(池田貴弘さん)
同じ作業を繰り返すのではなく、それぞれ少しずつできることを増やしていく。
「今焼けたのは期間限定のメンチカツカレーパンでございます」(佐々木大悟さん)
焼きたてのパンを説明しながら並べるのは佐々木大悟さん。

お得意の説明で視察に訪れた鈴木知事も喜んでパンを買ったという。
佐々木さんはココルクえべつの中のグループホームで暮らしていて、以前はできなかった洗濯もできるようになった。
「(将来は)江別の活性化につながるパン屋をめざしたいなと思います」(佐々木さん)
スタッフにパンづくりを教えているのは、50年以上パンを焼いてきた職人の鈴木康弘さん。

任せられる人材が増えてきたというが、まだ教えたいことが残っていた。
「自家製のカスタードクリーム作って、最初やろうと思っていたけどなかなか教える機会がなくて。本当はおいしいかスタード作りたかった」(鈴木康弘さん)
斉藤さんは午後からパンの袋にシールを貼った。
「疲れました。クリームパンが好きです。将来はパンを作る人になりたい」(斉藤琉維さん)
職人歴50年以上の鈴木さんがカスタードクリームの作り方を教えるのは斉藤さんかもしれない。

5月7日、スタッフはココルクえべつの中のリハビリ施設でパンを販売していた。
できることを少しずつ増やしていく。
そんな場所が江別市にあった。