少子高齢化が進む日本で、いま“無縁死”が深刻な社会問題となっています。

身寄りのない高齢者が亡くなった後、遺骨が引き取られないまま。そんな現実が、静かに広がっています。

身寄りのない高齢者への公的支援制度の不在は、長年にわたる課題で、公的な支援制度がこれまで存在しないことが長らく課題とされてきました。

関西の自治体では身寄りのない高齢者を対象にした“終活”の支援が始まっています。

■大阪市では市内で亡くなった人のおよそ10人に1人が「無縁死」

大阪市立北斎場では、この日、およそ30件の火葬が行われていましたが、そのうち3件が身寄りのない人の火葬でした。

担当する大阪市環境局の宮田幸二郎・斎場霊園担当課長は、斎場内の保管室について「引き取り手がないご遺体が斎場に運ばれた際に、一旦こちらの保管室で遺骨を預からせていただく」と説明します。

棚に並ぶのは「無縁遺骨」です。

大阪市では昨年度、過去最多となる3618柱が納められました。この10年ほどで1.7倍に増加しており、市内で亡くなった人のおよそ10人に1人が「無縁死」となる計算です。その多くが1人暮らしの高齢者とみられています。

■名古屋市の市営受託では「遺品部屋」が増加

無縁死が増える中で、行政が抱える別の深刻な課題も浮かび上がっています。

名古屋市の市営住宅では、住人が亡くなってから遺品がそのまま残された「遺品部屋」が増加しています。

住人が亡くなり、2年ほど経った部屋を案内してもらうと、机の上には薬や眼鏡が無造作に置かれ、亡くなった状態のままになっていました。

一昨年の時点で、こうした部屋がおよそ20件あるといいます。

なぜ片付けが進まないのでしょうか。

身寄りのない住人が亡くなると、遺品の権利は「相続人」に移ります。片付けを行うためには、数カ月をかけて相続人を探し出す必要があり、その間は家賃収入が1円も入ってきません。

名古屋市住宅管理課の岡田課長補佐は「(相続人の)調査が必要になる場合、調査資料等も膨大になってくるので、期間もかかってまいります」と述べ、行政側の負担の大きさを明かしました。

■「孤立死」公的な支援制度が存在せず

身寄りのない高齢者への公的支援制度の不在は、長年にわたる課題とされてきました。

内閣府によると、昨年、自宅で1人で暮らしていて「孤立死」した人の数はおよそ2万2000人。その7割を高齢者が占めています。

一方で、こうした状況に対応する公的な支援制度がこれまで存在しないことが長らく課題とされてきました。

そんな中、先週、国会で新たな法案が可決されました。身寄りのない高齢者に対して、葬儀の手続きや遺品整理などの支援を、全国にある社会福祉協議会が担うというものです。

■神戸市は「エンディングプラン・サポート事業」の支援を

法案可決に先行する形で、関西の自治体では同様の支援が始まっています。

神戸市は一昨年から「エンディングプラン・サポート事業」を開始しました。

頼れる親族のいない高齢者が、生前に葬儀や納骨の契約を済ませておくことをサポートする取り組みで、現在31人が契約しています。

神戸市健康局の瀬田吉則さんは「頼れる親族がいらっしゃらない方については、葬儀や納骨の契約を結ぶのを神戸市の方で支援する」と説明します。

このサービスを利用する1人が、神戸市内で理容店を営む74歳の新開光男さんです。結婚しておらず子どももおらず、きょうだいが遠方にいますが疎遠になっていて、いざというときに頼ることは難しいと言います。

新開さんは「70歳過ぎてきたら、不安ですわ。孤独死したらどないしようと思って。これを頼りにしないとあの世いかれませんわ」と率直な言葉で語りました。

■民間の「身元保証サービス」も

公的な取り組みと並行して、民間の「身元保証サービス」も広がりを見せています。

大阪府内で1人暮らしをする83歳のムカイさんは、「あかり保証」のスタッフと、もしものときに延命治療を希望するかどうかなどの意思確認を行いました。

延命治療に関する意思確認書類には、人工呼吸器や心肺蘇生などの選択肢が。

「あかり保証」は、葬儀などの死後対応だけでなく、入院時の身元保証や24時間の駆けつけ対応など、幅広いサービスを提供しています。

■家族はいても頼れない現実も

妻に先立たれ、離れて暮らす息子2人とも疎遠になったムカイさん(83)。

妻に先立たれたムカイさんには離れて暮らす息子が2人います。それでも、「仕事一辺倒で(息子たちを)あまり構ってなかった。(妻の死後、息子たちと)全然会ってないんです。1人だから今、身内もなにもないから、ここに頼んだ」と語ります。

サービスを利用したムカイさんは「面倒見てくれるところがあるということわかった時点で、生きるだけ生きるという希望がまた湧いてくる。朝運動もできるし、できることは目いっぱいやって、それで死んだらもう満足やから」と話しました。

「あかり保証」代表取締役の清水勇希弁護士は、このような状況にある人は珍しくないと指摘。「家族がいるんだけど保証人までは頼めないとか、子どもいるんだけれども障害を持たれていたりとか、本当にいろんなニーズがある」と話します。

■民間サービスの利用には平均で147万円かかるとの調査結果も

民間サービスの利用には平均で147万円かかるとの調査結果(国民生活センター)もあります。国が公的サービスの整備を目指す背景には、所得が低い人でも利用できる仕組みを作るという狙いがあるとみられます。

しかし、公的サービスを担う社会福祉協議会の対応にも限界があると専門家は指摘します。

日本総研の沢村香苗さんは「(社協は)今ですら手いっぱいっていうところが多い中で、どこまで担えるのかな。『呼ばれたらいつでも行きます』というようなことはおそらく難しい。内容としては絞ったものにならざるを得ない」と述べ、法整備が進んでも現場の体制が追いつかないリスクがあることを示唆しています。

誰もが迎えることになる「老い」と「最期」に、社会としてどう向き合っていくのか。その答えを早急に模索し続けることが、いま私たちに問われています。

(関西テレビ「newsランナー」 2026年5月29日放送)

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