代表的な和菓子の一つ「もなか」。そのもなかの「皮」だけを作り続け、創業116年という老舗企業が長野県小諸市にあります。「本物のもなかを」。5代目が語る、もなかの皮へのこだわりと思いを取材しました。
■人気商品を支える「もなか」の皮
東御市の菓子店「花岡」。数ある商品の中で人気の一つがもなかです。
くるみやリスの形をしたもなかの皮に、あんをつめて作ります。多い時で一日に2000個ほど作るといいます。
特に人気のもなかが、こちらの「くるみるく」。くるみの実の形をした皮の中には砕いたくるみを混ぜたキャラメル風味のあんが詰まっています。
客:
「おいしいよ、くるみが入っていて。粒のくるみ」
「初めて見て、かわいいなと思って(買った)」
菓子処花岡 田中本店・仲澤智美店長:
「一度食べた方のリピーターというか、お土産にしろ自分で食べるにしろ、すごく売れています」
人気商品のもなかですが、実はこの「皮」、別の企業が作っています。
■創業116年「もなかの皮」一筋
小諸駅の近くにある「種兵」。もなかの皮の製造一筋で創業116年を迎えた老舗です。
初代の兵八さんが小諸に店を構えたのは1910年。もなかの皮は「最中種」と呼ばれ、会社名は、この「種」と兵八さんの名前からつけられています。
皮づくりは朝の仕込みから。作るのは5代目の土屋壮亮さん(40)です。高校卒業後、家業を継ぐ決心をし、祖父で3代目の末八さんのもとで修業。4代目の母から引継ぎ、現在は両親と妻、パート従業員のあわせて7人で店を支えています。
種兵 5代目・土屋壮亮さん:
「自分が継がないとこの道が終わってしまうというところで、もなかの皮を利用している方が困ってしまうのかなと思い、自分がやろうと決断した」
■国産もち米100%のこだわり
皮の原料はもち米を粉にした「最中粉」。
種兵では「国産のもち米100%」にこだわっています。
土屋壮亮さん:
「昔ながらのもち米100%で作られているもなかは、香ばしさやサクサク感はもちろん、上あごにくっつくこともなく、おいしくいただける」
■出来栄えの8割決める「仕込み」
最中粉に水を加え混ぜ合わせますが、「水分量」が大きなポイントになります。
土屋壮亮さん:
「水分量でもなかの硬さ、軟らかさが変わってしまうので、その日の気温とか湿度によって、水分を若干調整している」
水と混ぜ合わせたら高温の蒸気で蒸します。
土屋壮亮さん:
「蒸気の量を調整している。蒸気の量を一定にしないとおもちが変わってしまうので」
蒸したもちを粘り気が出るように3分ほどついたら仕込みが完了。皮の出来栄えは「仕込みで8割決まる」といいます。
土屋壮亮さん:
「おもちが硬すぎると、もなかが硬くなってしまうし、軟らかすぎるともなかがスカスカになってしまうので、自分が納得して一人でできるようになったのは、5年くらいかかったかなと思う」
■1万枚を焼く熟練の火加減
次は仕込んだもちを切り分け、一つ一つ真ちゅうでできた型に入れて専用の機械で焼き上げます。
一日で焼く皮の枚数は多い時で1万枚を超え、火加減を調整しながら焼いています。
土屋壮亮さん:
「火を強くすれば色が濃くなるし、火を弱くすれば白くなるので、その時の気温とかによって、少しずつ色を見ながら調整している」
250℃ほどの火で焼くため、焼き場は高温に。冷たい水が循環する「水冷服」を白衣の中に着て、暑さ対策をしながら作業にあたります。
土屋壮亮さん:
「夏場だと45℃とかにこの中がなるので、これがないと真夏は過酷ですね」
この日は約4000枚を焼き上げました。
■オーダーメイドも 約40種類の型
ところで、もなかの皮の形は何種類あるのでしょうか―。
土屋壮亮さん:
「うちで40種類くらいありますね」
「梅の形の型です」
梅や栗、もみじの他、兜などの複雑な形の型もあり、全部で約40種類。取引先ごとのオーダーメイドにも応じています。
土屋壮亮さん:
「お菓子屋さんによってはオリジナルの形をつくりたいって方もいらっしゃるので、そういうところは、そのお菓子屋さん専用につくっている」
仕上げの「検品作業」では、異物が入っていないか、傷がないかなどを、一つ一つ確認します。もちの空気が抜けるときにできる小さな突起も手作業で丁寧に取り除きます。
皮の納品先は県内外の約30社。花岡をはじめ、小布施町の栗菓子店など多くが菓子店ですが、最近はレストランや居酒屋などからの発注も増えているといいます。
土屋壮亮さん:
「甘いものだけではなくて、しょっぱい系とかいろいろなものに利用いただいて楽しめる。料理の素材の一つとして、可能性があるのかなと考えている」
■家でおすすめの食べ方は?
また、2025年秋からはオンラインショップでの販売もスタート。少量から注文でき、家庭用に購入されることもあるといいます。
家でのおすすめの食べ方は?
土屋壮亮さん:
「一番おすすめしているのはアイスを入れて食べていただくのがいいかな。料理でチーズを入れて食べたりとか、ジャムをあわせて食べていただいてもおいしい」
■後継者不足の業界を支えたい
気温や水分量、火加減など、細かい部分まで神経をとがらせて作る「もなかの皮」。作るには経験と熟練の技術が必要ですが、担い手不足などから同業者が減っているといいます。
土屋壮亮さん:
「後継者がいなくてやめてしまう同業者も増えている。今まで取引していたもなか屋さんがやめてしまって、困っているという声も聞くようになった。困っている方にアプローチをして、多くの方に今まで通りもなかを楽しめる環境をつくっていきたい」
■「本物のもなか」を伝えたい
もなかの皮一筋で116年。壮亮さんはこの先も代々受け継がれてきた技術を守り、多くの人に「本物のもなか」を知ってもらいたいと話します。
種兵 5代目・土屋壮亮さん:
「もなかに命をかけている部分もあります。昔ながらの作り方にこだわりを持ってやっていくことで、続けられているのかなと思っていますし、本物のもなかを知っていただくということが私の一番大きい思い。その上で、もなかを少しでも身近に感じてもらえればうれしいなと」