2026年3月、福井・坂井市の三国防波堤でベトナム人技能実習生が波にさらわれ、2人が死亡する事故があった。これほど悲惨な事故が起きた現場にもかかわらず、2カ月後に撮影された写真には大勢の人が釣りをする姿が写っていた。
2人が死亡後も…現場に立ち入る釣り人たち
事故が起きたのは、3月21日の未明。
坂井市の三国港から伸びる三国防波堤で、釣りに来ていたベトナム人技能実習生5人が波にさらわれ海に転落した。うち1人は救助されたが、2人が死亡。残る2人はいまだ行方不明のままだ。
この防波堤は、県が立ち入りを禁止しているエリアである。
事故後も、釣り目的で立ち入る人が後を絶たない。
そこで県は、具体的な対策工事に乗り出した。
まず、防波堤内部にある侵入防止用のコンクリート擁壁を0.5メートル引き上げ、高さ1.8メートルに。
次に、その擁壁に日本語・英語・ベトナム語など8言語で「立入禁止」と記した看板を新たに設置する。さらに、防波堤の入り口にも高さ1.1メートルの侵入防止柵を設置する予定だ。

工事は6月上旬に完成する見込みである。
「文化財だから来る人も」
県福井港湾事務所の担当者は、侵入者が絶えない背景についてこう語る。
「国の重要文化財ということもあって、そういった観点から来られる方もいるのかなと」
実は、三国防波堤の一部は国の重要文化財に指定されている。明治時代に国がオランダから招いた技師・エッセルが設計したことから、「エッセル堤」とも呼ばれ、「明治三大築港」と称されるため、観光や見学目的で訪れる人も少なくないとみられる。
しかし、そうした動機があったとしても、防波堤が立入禁止区域であることに変わりはない。
「三国防波堤は立ち入り禁止区域で、波が高いときもある。転落した場合は大変危険なため、絶対に入らないでいただきたい」と担当者は強調する。
過去にも転落事故…でも「大丈夫と思う人が多い」
対策工事が始まる前、事故から2カ月後の5月に撮影された防波堤の写真には、大勢の人が釣りをしている様子が映っていた。2人が亡くなり、2人がいまだ行方不明となっているにもかかわらず「大丈夫だと思っている人が多いようだ」と担当者。

しかし、三国防波堤では今回の事故以前にも、釣り客が転落する事故が起きているという。
ハード面の対策に加え、県は今後、福井海上保安署との合同パトロールによる注意喚起も実施していく方針だ。

柵や看板は、危険を知らせるための手段にすぎない。最後に命を守るのは、入らないという一人一人の判断だ。
