温暖化に伴い三ヶ日みかんを栽培する環境の悪化が懸念される中、浜松市は産地の維持を図りつつ、新たに熱帯作物の特産化に向けた支援を始めるなど農業の未来を模索している。
浜松が誇る特産品に迫る危機
高い糖度とコクのある味わいが特徴の三ヶ日みかん。

出荷量は年間3万トンと全国有数で、浜松市内の生産者はおよそ1500軒近くに上る。
しかし7年前、国から「21世紀末には三ヶ日の地でミカンの栽培ができなくなる可能性がある」とのシミュレーション結果が示され、浜松市農業水産課の岩田貴子 副技監は「大変驚いた。何か対策をしなければならないと思った」と振り返る。
木を蝕む猛暑と豪雨
背景にあるのは地球温暖化。
異常気象は近年、もはや異常とは言えない状況になっていて、祖父の代から続くミカン農家を継いで11年目になる夏目芳彬さんは「生産者としてはどうすることもできない」と嘆く。

夏目さんは現在、約4000本ものミカンを育てているが、異常気象がもたらす悪影響を感じる場面が増えているといい、「夏場の高温や乾燥、雨が降ったとしても一気にたくさん降るだけで木にとってはあまりよいことがなく、かなりのダメージを負って最終的には部分的に枯れていく」と肩を落とした。
ミカンは苗を植えてから安定して収穫できるまで少なくとも15年は必要と言われているが、途中で枯れてしまうと再び苗を植え直すところから始めなければならない。
また、他にも頭を悩ませているのが浮皮と呼ばれる生理現象だ。
皮と実が著しく分離した状態を指し、腐敗しやすいことから価格の下落につながるが、三ヶ日地域では直近3年、猛暑などが影響して浮皮が相次いで確認されている。

このため、夏目さんは暑さに強い品種の栽培に着手するなどリスクの軽減を図っていて、「『自然相手だから仕方ない』で終わってはいけない。いま何をすべきなのか、今後を見据えてどう動くのか産地として一丸となって考える必要がある」と強調した。
新たな特産品の“発掘”へ
こうした中、浜松市は三ヶ日みかんの持続的な栽培を目指しつつ、新たな農作物の特産化を模索する取り組みを始めていて、前出の岩田副技監は「三ヶ日みかんは重要な特産品なので引き続き支援したいと考えているが、国のデータで30年後には(ミカン栽培の)最適地から外れるというデータもあるので、1つの検討として熱帯作物を考えてほしい」と説明する。
具体的にはバナナやマンゴーといった熱帯作物23品目を育てる農家に対して、苗木の購入費など最大で10万円を補助。
栽培に関わるノウハウなどを蓄積するため5年間のデータ共有を義務付けている。

村松敏夫さんは5年ほど前から趣味でバナナの栽培を始めたが、今では約40品種まで増やし、ハウスと露地の両方で育てながら浜松の地に適した品種や栽培方法を研究している。
村松さんによれば、バナナは気温が5℃を下回ると成長が鈍くなり、温暖な浜松であっても最低気温が0℃近くなる冬をいかにして越せるのかが一番の課題ということだが、一方で雪はほぼ降らないだけに、熱帯作物の栽培には比較的条件が良いという手応えも少なからずつかんでいて、「5年間で得たノウハウが多少あるので、バナナを育ててみたい人がいれば、情報を共有しながら協力したい」と話す。

三ヶ日ミカンの消滅を回避しながら新たな特産を生み出そうとしてる浜松市。
地球温暖化が深刻化する中で、今まさに分岐点に立たされている。
