亡くなったペットそっくりに作ってほしいと飼い主が依頼した“ぬいぐるみ”。
依頼した人の中には、15年前の東日本大震災をペットとともに乗り越えたという飼い主もいます。
依頼者と制作者の思いを取材しました。

ふわふわな毛並みにつぶらな瞳。
一見、普通の犬のぬいぐるみですが、持ち主にとっては特別な存在です。

女性が箱を開けると、声を震わせ、その目には涙が。

数年前、天国へ旅立ったペットのサラちゃん。
羊の毛だけを使い、生前のサラちゃんそっくりに。

サラちゃんと“再会”・佐々木満枝さん:
触り心地、すごくいいです。サラのお尻触ってるような感じですね。

羊毛フェルトでよみがえるペットのぬくもり。
そこには、飼い犬の特別な思いが込められていました。

「イット!」取材班がお邪魔したのは都内にある女性のお宅。
ベッドの枕元に置かれていたのは、本物そっくりの猫。

吾妻優さん:
よくこういう表情してました。(羊毛フェルトは)温かみを感じる。

吾妻優さん(25)が羊毛フェルトの猫の制作を依頼しようと決意したのは2カ月前。
小学生のころから一緒だった猫のマリちゃんが天国に旅立ったことがきっかけでした。

宮城県の実家でマリちゃんを飼い始めたのは2012年。
東日本大震災の翌年です。

吾妻優さん:
(震災当時は)小学4年生です。地割れとか断水とか停電。大変でした、不安もあったし…。(マリちゃんは)おデブちゃんだったので、大きめの余震がきても、ドスンって構えて、おなかだけめっちゃ揺れてる。クスってなっちゃいましたね、(余震は)怖かったけど。

吾妻さん自身の成長も見守ってきたマリちゃん。
天国に行っても大切な存在に変わりはありません。

吾妻優さん:
(マリちゃんを)忘れたくないです。まだそばにいてくれてる感じがするし、その当時のことを思い出します。

東日本大震災から2026年で15年。
震災をともに乗り越えたペットたちが寿命を迎えるケースが、近年、増えているといいます。

旅立ったペットとずっと一緒にいたい。
その思いをかなえているのが、羊毛フェルト作家の清野優美さん(35)です。

羊毛フェルト作家・清野優美さん:
大切なペットが急に亡くなって忘れられるわけない。「そばにいてほしい」という家族の気持ちに応えたいので。

被災者のために何かしたい。
そこで2年前から始めたのが、ペットのぬくもりを感じることができる羊毛フェルトの制作でした。

羊毛フェルト作家・清野優美さん:
持ったときに自分の手の体温が伝わって、温かさを感じられるところが羊毛フェルトの魅力的なところ。

この日、作っていたのは犬の羊毛フェルト。
東日本大震災を乗り越え、宮城県で3年前に天国に旅立ったミックス犬のサラちゃんです。

在りし日の写真と照らし合わせながら、形や手触り、表情まで丁寧に表現。

作り方は、羊毛をちぎって、丸めて、針で固める。
色付けは別の色の羊毛をちぎって、また固める。
制作時間は15時間を超えます。

羊毛フェルト作家・清野優美さん:
温かみを表現するうえで、土台はどちらかというと、ぶすぶすっと中までで刺しながらしっかり固めていくイメージ。あまりつつきすぎないように、やわらかさを保ちつつ、ちょっと浅く刺す。

そして、今回の依頼で清野さんがこだわったのは、サラちゃんの目。

羊毛フェルト作家・清野優美さん:
写真でいうと、眉毛のような部分と目の周りの茶色の部分。目にその子らしさが一番宿ると思うので、目の表情とか、目の周りの色使いというのは、とても気をつけています。

ただ似せるのではなく、ペットとの思い出を込めて作っているという清野さん。

そして、ついに体長14cmのサラちゃんが完成。
清野さんは依頼者が待つ宮城・仙台市に向かいました。

依頼したのは佐々木満枝さん(63)。
佐々木さんもサラちゃんに支えられ震災を乗り越えてきました。

そして、サラちゃんと再会の瞬間。
箱を開けると、佐々木さんの目には涙が。

サラちゃんと“再会”・佐々木さん:
そっくりに作っていただいて、ありがとうございます。もう会えないなって思ってたので…。本当に生きてるときの顔そのものです。この上目遣い、本当にこの顔がそっくり。

清野さんがこだわって作った目。
佐々木さんが手に取ると、サラちゃんと過ごした震災直後の日々がよみがえります。

サラちゃんと“再会”・佐々木さん:
(震災直後も)泣いたりしてると、この上目遣いで「大丈夫?」って感じで見てくる。(震災後も)いつもと変わらない日常をつくってくれてたので、とても大きかった、サラの存在が。本当にサラが帰ってきたなっていう感じです。

よみがえる“亡きペットのぬくもり”。
清野さんは「ペットの存在をいつまでも感じていたい」という飼い主の思いを形にし続けます。