サプライズで鑑賞された上皇ご夫妻
2009年4月10日、この日は上皇ご夫妻の結婚50年の記念日(当時は天皇皇后両陛下)。
朝から祝賀行事が行われ、一般向けに宮内庁の庁舎前には記帳所が設けられた。午後、庁舎前には記帳に訪れた多くの人がいる中で、音楽隊の奉祝演奏がスタート。
しばらくすると、サプライズで上皇ご夫妻が到着される。
大きな歓声があがる中、記帳に訪れた人たちに手を振り、お二人は笑顔で言葉を交わしながら、結婚を記念して作られた「祝典行進曲」の演奏などに耳を傾けられた。

演奏が終わると立ち上がり、拍手を送り、音楽隊に「どうもありがとう」と声をかけ、またお二人で大きな拍手を送られた。この翌年、宮内庁から新年に向けての和歌が発表される。
「我が妹(いも)と過ごせし日々を顧みてうれしくも聞く祝典の曲」
上皇さまは、この時のことを和歌に詠まれていた。当時の映像を見ても、上皇さまの終始、お顔いっぱいに広がる笑顔が印象的だ。

そして、音楽隊の庁舎には写真と上皇さまの詠まれた歌が今も飾られている。
皇族方が一堂に会する記念演奏会
音楽隊には10年に1度行う記念演奏会がある。
2023年11月に皇居東御苑・桃華楽堂で行われたのは「皇宮警察音楽隊創設70周年記念演奏会」だ。
「10年に一度のホールで演奏する貴重な機会で、また聴いてくださる方々も特別な方々です」と渡辺さん。
演奏会には、両陛下、上皇ご夫妻、秋篠宮ご夫妻など9人が出席された。両陛下と上皇ご夫妻など皇族方が一堂に会されるのは、新年一般参賀以外では非常に珍しい。
演奏会では奉祝行進曲「令和」や「あの日聴いた歌」と題して、「故郷」や滝廉太郎の「花」など唱歌メドレーなどが演奏された。時折、陛下と上皇さまがことばを交わされるなど和やかな雰囲気だった。

しかし、本来2022年に演奏会を行う予定のところ、コロナ禍によって延期に。コロナ禍が明けて、およそ半年後に開催され、両陛下をはじめ、出席された皇族方や関係者は全員がマスクを着用している。
演奏会終了後には、両陛下からお声がけの機会があったという渡辺さん。「演奏についてお褒めのことばをいただきました。コロナ禍の最中は、音楽隊一切活動していなかったので、『練習はできましたか?』と大変ご心配いただきました」。
両陛下は、常々、皇室の護衛や皇居などの警備を担う皇宮警察を大切に思っていて、(側近によりますと)この演奏会の際にも、コロナという難しい状況においても、日々の勤務と並行して音楽隊として練習を重ねてきた隊員を労われたという。渡辺さんも、両陛下などからのお声がけや労いのことばは、隊員たちの大きな励みになっていると話す。
来年3月で楽長を勇退
実は渡辺さんは、来年の3月で楽長を勇退することが決まっている。春の園遊会前に取材した際、「春の園遊会としては最後の演奏になるが、意気込みは?」と質問をぶつけてみた。
渡辺さんは「いつも意気込みも持っていますし、なにかしら秘めたものはあるとは思うが、それはよく言われる質問(笑)うまく答えられたことはありません(笑)」と大笑い。
残り10カ月あまりの楽長生活の中でも、国賓の送迎演奏のほか、都内のデパートで行われる皇宮警察140周年を記念したイベントでの演奏、秋の園遊会など、今後も演奏機会が控えている。
渡辺さんは笑みを見せながら、最後にこう述べた…。
「(他の仕事と兼務の)隊員の練習時間はとても限られています。その中で1番いい演奏ができればなと思っています。また聴いている方々に喜んでいただければ1番いいかなと思っています」
