4月17日、「春の園遊会」が赤坂御苑で行われた。天皇皇后両陛下と当日引退を発表した「りくりゅう」ペアの会話が話題にのぼったほか、各界からの招待者と和やかな雰囲気で歓談された。穏やかな晴天にも恵まれたことで、両陛下や皇族方は多くの招待者と歓談され、終了予定の時刻を大幅に上回るほどの盛り上がりだった。 

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園遊会では、招待者とのやりとりなどが話題になる一方、ある象徴的なシーンがある。両陛下を先頭に、皇族方が三笠山にお出ましになり、整列すると、君が代が演奏される場面だ。それまで料理や会話を楽しんでいた招待者たちが一斉に三笠山に注目し、君が代が流れると一気に荘厳な雰囲気に。この君が代を演奏しているのが、「皇宮警察本部音楽隊」だ。 

手前で演奏するのが皇宮警察の音楽隊
手前で演奏するのが皇宮警察の音楽隊

皇宮警察は両陛下をはじめ、皇室の方々の護衛を行うほか、皇居や赤坂御用地の警備を担う警察組織だ。皇宮警察は、明治時代の1886年、宮内省に「皇宮警察署」として発足し、現在は、警察庁の附属機関の「皇宮警察本部」という名称で、今年、創設140年を迎えた。  

園遊会で演奏する皇宮警察音楽隊 
園遊会で演奏する皇宮警察音楽隊 

園遊会の会場では、両陛下や皇族方がお出ましになる前から皇宮警察の音楽隊と宮内庁楽部による演奏が行われ、招待者をもてなす。今回の園遊会では、今年が昭和100年を迎えた年でもあったため、招待者に「昭和」「平成」「令和」と3つの時代を感じてもらおうと、上皇ご夫妻の結婚を記念して作られた「祝典行進曲」(1959年)、両陛下の結婚を記念して作られた「新・祝典行進曲」(1993年)、両陛下の即位を記念して作られた奉祝行進曲「令和」(2019年)などを演奏した。

園遊会がきっかけで音楽隊が発足

皇居における音楽隊は、歴史を遡ると、明治から大正まで続いた近衛師団軍楽隊、第二次世界大戦中に活動した禁衛府皇宮奏楽隊と続く。戦後、皇宮警察に音楽隊ができる大きな契機となったのは、他ならぬ園遊会だった。

創設時の集合写真(1952年12月)
創設時の集合写真(1952年12月)

園遊会は、明治時代から始まった秋の菊を見る「観菊会」、春の桜を見る「観桜会」が起源とされていて、戦争で中止に。戦後の1953年に「園遊会」が開催されることが決まり、その前年の1952年に園遊会での演奏を担うことが後押しとなり、音楽隊が誕生した。 

音楽隊は“兼務” 任務の合間に技術磨く

音楽隊員は現在25名。多くは、学生時代に吹奏楽部など経験者揃い。新人時代に、音楽隊に“リクルート”され、長年に渡り、音楽隊に所属している護衛官もいるという。普段は皇居や赤坂御用地の警備などの仕事を担っていて、音楽隊は兼務。そのため、仕事の合間を縫って、個人での自主練習で技術を磨き、演奏の機会が近づくと、音楽隊からの要請を受け、隊員らが集まり、全体練習が行われる。 

園遊会の前に全体練習を行う隊員たち
園遊会の前に全体練習を行う隊員たち

通年では、大統領など国賓が皇居を訪問した際の送迎演奏、警察学校の入校式など警察関連行事で演奏を行っている。また一般の人が演奏を聴けるチャンスもある。定期的に皇居・東御苑で「ランチタイムコンサート」を開催。誰でも入場できる東御苑でのコンサートは、昨今、外国人観光客の姿も多く、司会が英語を交えて曲紹介を行うなど、訪れた様々な人々を楽しませている。 

そして、これまで皇室の歴史的な行事での演奏も担ってきた。 

2019年11月10日。天皇陛下の即位を祝うパレード「祝賀御列の儀」が行われた。 
両陛下が、皇居から当時のお住まいの赤坂御所まで、オープンカーで進み、沿道からの祝福を受けられた。 両陛下のお姿を見ようと沿道に集まったのは、およそ11万9千人。

赤坂御所に到着される両陛下 奥に音楽隊
赤坂御所に到着される両陛下 奥に音楽隊

4.6キロのコース上に、陸・海・空の自衛隊や警視庁、東京消防庁など様々な音楽隊が配置され、順番に演奏を行い、パレードを盛り上げた。そして赤坂御所の車寄せの前で、締めくくりの演奏を務めたのが皇宮警察の音楽隊だった。 

「ありとあらゆる音楽隊が沿道で演奏して、その最後を演奏させていただいたので、これは大変なプレッシャーでした。大きな務めだと思いました」そう話すのは、この時、指揮をした渡辺浩二楽長だ。 

指揮をしているのが渡辺浩二楽長
指揮をしているのが渡辺浩二楽長

両陛下が赤坂御所正門から御所の車寄せまで進まれている間は、奉祝行進曲「令和」を演奏。車寄せに到着すると両陛下は曲が終わるまで、しばらくじっと演奏に耳を傾けられた。「令和」の演奏が終わり、両陛下が車から降りられる。

隊員たちに向かい指揮をしていた渡辺さんは両陛下の方を向き直り、「君が代」の演奏が始まる。渡辺さんは、率直に「緊張していました」と一言。その上で、「行進曲が終わって、回れ右をした時の両陛下のお顔が、大変柔らかい笑顔でほっとしました」と当時を振り返る。

皇宮警察本部音楽隊 渡辺浩二楽長
皇宮警察本部音楽隊 渡辺浩二楽長

渡辺楽長は、音楽大学を卒業後、音楽学校の教員などを経て、2008年に楽長として皇宮警察へ。以来、18年にわたって、音楽隊を率いてきた。これまでの皇宮警察での活動について話を聞いていくと「入ってまもなくだったんですが、とてもいい印象に残っています」と話す出来事が。渡辺さんが就任してまもなく、ある記念行事があった。