フォレストデジタルは、プロジェクターやLEDを活用し、壁や天井に360度の映像を投影することで、没入感のある空間を創出する空間VR「uralaa(ウララ)」を提供しています。これにより、すべての人がどこにいても、体に何もつけずに全く新しいイマーシブ体験ができる世界を創造します。代表取締役CEOの辻木勇二さんに、その独自のテクノロジーと、北海道から世界へ広がる未来への取り組みについて聞きました。
――空間VR「uralaa(ウララ)」とはどのようなものですか ?
「森に包まれるような、デジタル技術で自然や海の中にいるような気持ちになれるものです。インターネットやクラウドを通じて、部屋や空間に包み込まれるような映像を配信しています。遠くにいても森の中にいるような、どこか遠くに行けない場所へも行けるような体験を届けています」
――どのような効果があるのですか?
「国立の森林総合研究所様と一緒にエビデンスを取得したのですが、『uralaa(ウララ)』の森の中に20分間包まれていると、心拍が安定したり、副交感神経活動が上がったりという生理的心理的な回復効果があることがわかりました。疲れていてなかなか眠れない時でも、そこにいると自然にそのような効果があるのです」
うなぎ屋の次男坊から国際機関へ
――辻木さんの幼少期について教えてください。
「私は東京で生まれ、実家はもうすぐ創業100年になるうなぎ屋でした。次男だったため、父から「好きなことをやれ」と常に言われて育ちました。高校生の頃に開発途上国の経済格差に関する本を読み、衝撃を受けて開発経済の道に進みたいと思い、大学時代もその勉強をしていました」
――国際機関での経験について聞かせてください。
「初めに勤めた東京銀行(現三菱UFJ銀行)では、外国為替の専門銀行として海外のプロジェクトに携わることができました。2年目からは中国政府やインド政府向けの資金調達案件を担当し、ゆくゆくは国際機関で働きたいと考えていました。欧米の大学院に行く必要があると知り、銀行の制度を利用して留学しました。その後、フィリピンにあるアジア開発銀行という国際機関に運良く出向させていただきました。国際機関の仕事は本当に面白く、ベトナム、カンボジア、ラオスで高速道路や発電所を作るプロジェクトに携わりました。日本人、インド人のエンジニア、インドネシア人の弁護士、バングラデシュの地域住民スペシャリスト、フランス人など、世界中の人たちが集まって2週間現地に滞在し、調査や現地の方との対話を行いました。約5年半続け、自分の夢がかなった時でした」
財務省からIT業界、そして北海道へ
――北海道とつながったきっかけは何ですか?
「アジア開発銀行の次に、財務省に中途採用で入省し、地球環境問題や気候変動問題を担当しました。当時、iPhoneの登場やインターネットの普及が進む中で、テクノロジーを使って多くの人の課題解決ができるのではないかと感じました。橋や発電所を作ることも重要ですが、新しい分野に飛び込みたいという気持ちが高まり、財務省を辞めてIT業界へ転身しました。GREE、ヤフー、メルカリの3社を経験してから起業しました。ヤフーに勤めている頃に、十勝の浦幌町との結びつきができました。浦幌町で地域課題を解決するボランティアの募集があり、地域創生に携わりたいと考えていた私も手を挙げました。実は、今のフォレストデジタルのCTOである原田もそのボランティアに参加していました。そうして浦幌町でみんなが集まったのです」
浦幌町でのスピード起業
――浦幌町で起業したのはなぜですか?
「ITを使って課題を解決したいという思いがあり、自分で会社を作って起業する必要があると感じていました。『uralaa(ウララ)』という森に包まれる空間のプロダクト開発とプレテストを行い、事業としていけるという手応えを感じました。いよいよ会社を作ろうという時、浦幌の皆様と仲が良かったので、東京で起業しようかと考えていることを話しました。すると、浦幌町の林業パートナーである北村林業の北村さんが、『それなら浦幌町で会社を作ったらどう?』と言ってくださったのです。浦幌には住んでいないと伝えると、すぐに町長に話してくださり、午前中に話をしてお昼には町長から承諾を得て、午後にはお願いするという、歴史的なスピード感で浦幌町での本社設立が決まりました。会社創業の2ヶ月ほど前のことでした」
「wowとHappiness」を世界中へ
――現在、特に力を入れていることは何ですか?
「『uralaa(ウララ)』というイマーシブ空間では、これまで森や自然、観光資源といったアーカイブ(撮影・編集された映像)からスタートしてきましたが、昨年1年ほどかけてライブ配信の開発ができました。具体的には、昨年の夏に勝毎花火大会をライブ上映し、十勝の花火を東京のショールームで皆様に見ていただきました。ビールを飲みながら楽しんでいただくなど、地域のお祭りや花火大会、スポーツ、音楽、エンターテインメントといった分野に広げていきたいと考えています。森林浴のようなリラックス効果だけでなく、包まれることによる臨場感、興奮、熱狂といった体験にもVRは活用できるのです」
――辻木さんが描く「ボス」とはどのようなものですか?
「初めは3人で創業するのですが、本当に小さなボートを漕いでいるような感覚です。大きな荒海の中で、いつ転覆してもおかしくないような状況で、みんなで船を漕いでいます。その中で、『俺たちはこっちに進むんだ』とみんなに言いながら一生懸命漕ぐ、船頭役のようなイメージです」
――今後の展望について聞かせてください。
「私たちの会社のミッションは『wow and happiness anywhere in the world』です。感動や幸せを世界中のどこにでも届けていくことを目指しています。『uralaa(ウララ)』は、体に何もつけなくていいのが特徴です。ヘッドマウントディスプレイやVRゴーグルが不要なので、小さなお子さんから車椅子に乗られているお年寄りの方まで、誰もが体験できます。言葉がなくても、包まれることで感じることができるという利点もあります。例えば、以前私が携わっていたカンボジアの小学校にイマーシブ空間を作り、なかなか行けない日本の農業の世界を見たり、世界中の文化を知ったりと、何かを学び、きっかけになるようなものを作りたいと考えています」
北海道の活性化を目指すボス達と北海道の未来と経営を楽しく真剣に語り合うUHB「#BOSSTALK」(ボストーク)。廣岡俊光キャスターがBOSSの本音に迫ります。