高知出身の直木賞作家・宮尾登美子さんの生誕100年を記念した企画展が高知市で開かれています。生前、宮尾さんと親交の深かった高知出身の作家・山本一力さんが記念講演で宮尾登美子さんの思い出を語りました。
1926年、高知市に生まれ明治から昭和に至る女性の生涯を描き続けた高知市出身の作家・宮尾登美子さん。
戦前の高知の花街を描いた自伝的小説「櫂」で太宰治賞を受賞。高知の任侠の世界と、そこに渦巻く女性たちの愛憎劇を描いた「鬼龍院花子の生涯」は映画化され大ヒットしました。
県立文学館で開かれている企画展には直木賞を受賞した「一絃の琴」の直筆原稿や、宮尾さん愛用の着物などゆかりの品々約200点が展示されています。
1935年、宮尾さんが9歳のころの高知市が描かれた地図。宮尾作品に出てくる遊郭「陽暉楼」や、「鬼政」の家が配置されていて風景や場面を思い浮かべながら作品をたどることができます。
一方、芸者の紹介業を営んでいた宮尾さんの父・猛吾の日記も。日記には、天気や当時の野菜の値段、誰と会ったかなどが細かく記されていました。
県立文学館・岡本美和 主任学芸員:
「お父さんに鬼頭良之助がお金を借りに来たっていうようなことなんかも、この日記の中に書かれているようです」
その鬼頭良之助とはまさしく「鬼龍院花子の生涯」に出てくる侠客・鬼龍院政五郎のモデルとなった人物で、その人物に興味を持ち作品が生まれたということです。
県立文学館・岡本美和 主任学芸員:
「(宮尾作品の)モデルとなっているのは明治、大正、昭和と古い時代の女性ではありますけど、ほんとに自分の信じる道を丹念に生きていく女性の姿なので、今を生きる皆さんにもすごく感銘を受ける部分ってあるんじゃないかと思います。ぜひ作品に親しんでいただけたら」
この企画展にちなんだ講演会が先日行われ、高知出身の直木賞作家・山本一力さんが生前に「姐御」と慕った宮尾さんとの思い出を語りました。
山本一力さんは「あかね空」で直木賞を受賞した2年後、東京の料亭で開かれた新聞社の対談企画で宮尾さんと初めて顔を合わせました。
直木賞作家・山本一力さん:
「姐御が入ってこられて、みんなが立ち上がります。お迎えで。さんざん私正座して座ってたので立てないんです。そこでのっけのひとこと。『おまさん、きょうから舎弟やき』」
大先輩との初対面で緊張する山本さん。出版社から新しい連載のオファーを受け、何を書くべきか悩んでいたという山本さんに対し宮尾さんは、実に親し気にかつ本質を突いた言葉を投げかけたと言います。
直木賞作家・山本一力さん:
「『なんか困っちゅうことないが』と言われたんです。姐御はあるところからいきなり土佐弁になるんです。『そのテーマなら書ける』と思うことに行き当たるまで、しっかり考えなさい。『物語はひとつずつ命を込めて書くっていうことを続けなさい』。姐御は実にわかりやすい言葉で、簡単な言い方で、すっと目の前に提示してくれてたんです」
この対談の時、料亭の主が宮尾登美子さんに差し出したのが加賀・前田家に伝わる江戸時代の飛脚の帳面でした。この出会いが山本さんの後の人気作品「かんじき飛脚」につながります。
集まった人たちは、一流の作家の縁と運命の深い物語に聞き入っていました。
生誕100年記念の宮尾登美子展「生きてゆく力」は6月28日まで、県立文学館で開かれています。