京都府南丹市で、11歳の男子児童の遺体を遺棄した疑いで父親が逮捕された事件で、逮捕前の任意の調べに対して父親が「衝動的に首を絞めて殺してしまった」という趣旨の供述をしていることが新たにわかりました。

関西テレビ「newsランナー」では、千葉県警捜査一課に14年間在籍し、凶悪事件の捜査に従事してきた元警部・田野重徳氏が出演。

「殺人を認める供述」をしていたとしても、立証するためには関係者の証言や、死因につながるような物的証拠や「犯人しか知りえない情報を容疑者が明かす=秘密の暴露」といったことが必要で「大きな壁がある」と指摘しました。

また元テレビ朝日アナウンサーの西脇亨輔弁護士は「死体遺棄容疑で身柄を拘束する20日間と、おそらく再逮捕するであろう殺人容疑での勾留の“40日間”で証拠を集める必要がある」と述べ「40日間の正念場」と述べました。

■「取り調べは順調、ただし鵜呑みにしてはいけない」

安達容疑者が16日未明に逮捕され、殺害についても認める供述をしていることが明らかになりました。

この点について田野氏んは、「殺害についても認めているということは、かなり取り調べが順調にいっているんだとは思う」と評価しする一方で、「裏付け捜査」の重要性を指摘しました。

【元千葉県警警部 田野重徳氏】「注意しなければいけないのは、すべて容疑者の言うことを鵜呑みにしないで、すべてに裏付けをとっていくことが必要」

■供述調書の意味と”40日間の正念場”

西脇弁護士は、今回の供述が「非常に大きな意味を持つ」としながら、同時に厳しい現実も指摘しました。

【西脇亨輔弁護士】「裁判の場でこれを翻したとしても、あの時にこういった供述調書を作ったという事実は残って、それを証拠として申請することができる。

大きな一歩ではあるが、ここから証拠を積み重ねていかないといけない。ここから約40日間が捜査の正念場になる」

西脇弁護士は、「40日」という期間について、「今回の死体遺棄容疑での逮捕で勾留が始まると、最大20日間の身柄拘束が続き、その後に殺人罪で再逮捕されれば、さらに23日間拘束されます。そして最終日に起訴か不起訴かの判断が下される。その時までに証拠を集めないといけない」と説明。

さらに「日本の法律では、裁判を有罪にするために、自白だけでは足りません。いかにしてこの周辺の証拠を固めていくのかが大きなポイントになってきます」と強調しました。

■まだわかっていないこと

現時点で捜査には複数の”空白”が残っています。

・結希さんの死因(司法解剖の結果:不詳)
・死亡した場所
・犯行の動機
・死体遺棄における共犯者の有無

警察は共犯者について「供述なし」と説明していますが、田野氏は「共犯者はいません、と言っているわけではないように感じる」と述べ、引き続き慎重に見ていく必要性を示唆しました。

■「衝動的」という言葉の重さ

安達容疑者は「衝動的に首を絞めて殺害した」という趣旨の供述したとされています。

動機については、田野氏は「本人の供述に加えて、同居の親族、その他の親族、同僚、少年の同級生からの話などからも犯行動機を推察できる」と語ります。

一方、多くの刑事弁護にも取り組んできた西脇弁護士は、「衝動的に」という趣旨で話していたとしても、「さかのぼって調べないと全容は見えない」と指摘します。

【西脇亨輔弁護士】「刑事事件の弁護では、動機が『計画的』なものか、『衝動的』なものか、『計画的』な方が重い情状になりやすい傾向があり、弁護側は『衝動的なものだった』と言うこともあります。

この事件は、仮に直接手を出したとしても、『手を出した瞬間』が『衝動的』だったとしても、それまでに色んな経緯があるのではないか。父と子の間でこれまで何があったのか、さかのぼらないと全容は見えない」

■「殺人」立証への3つのカギ

そして田野氏は、殺人を立証するには、「『なぜ亡くなったのか』ということが犯罪を構成する上で重要だが、今回の事件は死因が『不詳』ということで、険しい捜査になる」と「高い壁がある」と指摘。

その上で立証への「3つの鍵」を示ししました。

1.「物的証拠の積み上げ」
安達容疑者の「首を絞めた」という趣旨の供述に対し、田野氏が最も重要視するのは、被害者の身体に残る痕跡です。

「被害者の爪と爪の間に、犯人の肉片や皮膚片が入っている状況があれば、かなり重要な証拠になる」と説明します。

首を絞めると、被害者は抵抗して相手の手をつかもうとします。その際に爪の間に皮膚片が残る可能性があるといいます。同時に、安達容疑者の腕に傷がないかどうかも重要になると指摘しました。

■「親族・関係者すべての供述を総合的に汲み上げる」

2.「安達容疑者の行動を裏付ける人的証拠の積み上げ」

【元千葉県警警部 田野重徳氏】「容疑者の供述だけでなく、同居・非同居の親族、関係者全員の供述を広く集めてくみ上げ、状況を把握することが必要だと思います」

一方、西脇弁護士は関係者の証言の積み上げの重要性とともに、「物的証拠」の重要性にも触れ、「遺体についてこれからどれぐらいのことがわかるかが重要だ」と言及しました。

首を絞めたという場合、「舌のつけ根の”舌骨”や甲状軟骨(喉仏)が骨折するケースがある。骨は時間がたっても変化が残る可能性があり、容疑者の供述と突き合わせて矛盾がないかなどを積み重ねていくことになると思う」と述べました。

■「真犯人しか知りえない事実を犯人が供述し、裏付けられること」

3.「秘密の暴露」

これは「犯人でなければ知りえない事実を容疑者が話して、さらにそれが裏付けること」を意味します。

田野氏は具体例を挙げました。

【元千葉県警警部 田野重徳氏】「例えば殺人であれば、『Aという地点で首を絞めて殺した』と容疑者が言って、そのAという地点を調べたら尿のあとなどの死体反応が出たというのが、秘密の暴露的なものになる」

西脇弁護士も「捜査官が『そうだったのか』と初めて分かったことが秘密の暴露。ピンポイントでここだと示して、そこから何か反応が出れば、証拠価値が非常に上がる」と解説しました。

そして最後に田野氏は、今後の捜査の基本方針をこう整理しました。

【元千葉県警警部 田野重徳氏】「今は死体遺棄の勾留中なので、死体遺棄については刑事裁判に耐えられる証拠を収集する。それと並行して、殺人罪で逮捕できるようにそれぞれ証拠を収集していくということが基本方針になると思います」

(関西テレビ「newsランナー」2026年4月17日放送)

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