夏の夜空を彩る打ち上げ花火。その「当たり前」が、いま静かに揺らいでいる。

山陰を代表する夏祭りの一つで鳥取・米子市で毎年8月に開催されている『米子がいな祭』では一時、クライマックスを飾る花火大会の休止方針が示された。そして花火を届ける製造の現場でも、コロナ前の倍にまで膨らんだコストという現実が待ち受けていた。

「予算面で大変不安」―一時休止方針が示された米子がいな祭の花火大会

米子がいな祭振興会総会(4月10日・米子市)
米子がいな祭振興会総会(4月10日・米子市)
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鳥取の夏を象徴する祭り、『米子がいな祭り』。2026年4月10日に開かれた実行委員会総会で、最終日を飾る花火大会をいったん休止する方針が打ち出された。

物価高騰が夏の風物詩にも影響
物価高騰が夏の風物詩にも影響

実行委員会の鶴田陽介委員長は、「近年様々な物が高騰していて、その予算面でも大変不安がありました」と語る。祭りの運営を長年支えてきた青年会議所の体制縮小が重なり、警備の人件費や花火の費用といった支出が大幅に増加したことが背景にある。
実行委員会はその後、資金調達の手段を検討した結果、複数の企業や市民からの寄付などの協力を得られ資金面のめどが立ったこと、また当日の運営についても協力団体の申し出があり、実施に向けた体制が整うことになり、休止の方針から一転して開催する方向となった。

「コロナ禍前の倍」――花火メーカーを直撃するコスト高騰

花火業者にも物価高騰の波が押し寄せる
花火業者にも物価高騰の波が押し寄せる

物価高騰の波は、祭りの運営側だけにとどまらない。花火を作り、打ち上げる製造現場にも、じわじわと押し寄せている。

島根・雲南市で花火の製造と打ち上げを手掛ける「灰示(はいじ)花火」。代表の平賀真人さんは、この夏も山陰地方の約30の花火大会に携わる予定で、いまは本番に向けた花火玉の確認作業に追われている。

花火玉
花火玉

花火玉は、数種類の火薬やボール紙などの材料から作られる。しかし近年、それらすべての仕入れ値が高騰を続けている。平賀代表はこう明かす。

「今年、去年、一昨年でそれぞれ20%ぐらいは上がってきている。その前も上がっていますので、おおよそコロナ前の倍ぐらいになってきている」

花火玉に使用する材料費の値上がり
花火玉に使用する材料費の値上がり

物によっては、2、3年前と比べてコストが3倍にまで跳ね上がったものもあるという。

中東情勢が追い打ち――2027年以降の花火大会に暗雲

さらに、平賀代表が頭を抱えるのが中東情勢の悪化だ。2026年夏に打ち上げる花火については、材料の仕入れはすでにほぼ完了している。しかし、2027年以降を見据えると、多くの花火大会の開催自体が危ぶまれるのではないかと危惧している。

紙や火薬もコストが膨らむ
紙や火薬もコストが膨らむ

「プラスチックとか、そういう油で何か作ったっていうのを材料としてやってるわけではないので大きくは影響ないんですけど、例えば紙でも火薬でも、それぞれの業者さんがその影響を受けた中で、やっぱり作るのに手を加えるのに値段がかかる」

花火の材料そのものが石油製品というわけではなくても、紙や火薬を作る各業者がコスト増の影響を受け、その分が積み上がって価格に反映される。サプライチェーン全体で、静かに、しかし確実にコストが膨らんでいく構造だ。

「何千発、何万発」から「内容と安全」へ――見直しの時期

こうした現状を踏まえ、平賀代表は花火大会のあり方そのものを見直す時期に来ていると話す。

「これまで何千発、何万発を売りにするような花火大会ではなく、その内容だったり、またもう安全も含めてやっぱり。ちょっと考える時期が来たのかなと思います」

花火文化そのものの持続可能性を模索
花火文化そのものの持続可能性を模索

打ち上げ数の多さで競ってきたこれまでのスタイルから、内容や安全を重視した形への転換。それは単なるコスト対策ではなく、花火文化そのものの持続可能性を問い直す提案でもある。

夏の夜空に咲く花火は、多くの人にとって「あって当たり前」の光景だった。しかしいま、その前提が静かに、しかし着実に変わりつつある。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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