徳光:
野球らしきものの“初め”は何ですか?

江川:
初めは石投げなんですよね。山の中なので(川幅)100メートルぐらいの川、天竜川って川があるんですよ。
徳光:
天竜川。
江川:
向こうは誰もいないですよ。時々秋になるとサルが出てくるぐらいの場所なので。
その向こう岸に誰もいないところに石を毎日こう。小学生くらいからバスで通学してましたから、バスで帰ってきて、家に帰る前に石を投げるっていうのが。
徳光:
日課みたいな。
江川:
日課だったんですよ、雨の日以外は。
で、毎日投げて少しずつ距離が伸びていくじゃないですか、1年生、2年生、3年生って。
5年生の時に、向こう岸にバーンッと着いたんですよ。
だから肩がこれでできて、たぶん100メートルぐらい、本当にあるんですよ。
徳光:
ありますよね。
江川:
でもね、100メートル石投げるって、みんな信じないんですよ。
徳光:
信じないね。
江川:
でも本当なんですけど、いまだに誰も信じていない。
平たい石で風に乗せられる石があるんですよ。
それを風に乗せて向こうの石に投げるっていうのを毎日やってたので。
徳光:
石を水面に、何度もポンポンとんじゃないんだ。上からですから、石を上、平たい石を。
江川:
はい。風に乗せる。
徳光:
平たい石を選んで。面白いね。
遠藤:
あれですか、その形、その方が回転とか、何かその後につながって…。
江川:
回転はさせないんです。平たい石をこう投げて風に乗せて飛ばすっていう。
徳光:
みんな懸命になって、向こう岸に届くように投げてたわけだ。

江川:
ほかにやってた人いないんですよ。
徳光:
えっ、1人で?
江川:
1人で。
徳光:
そのころから1人だった?
江川:
今も1人ですけど。
そのころから1人で、家に上がる前に。
だって学校が、バスで帰ってくると、みんな一緒のところにいる人とは違う時間に帰ってくるから。だから1人なんですよ。

[ 江川の家は山の中で生徒の多い学校へ越境してバスで通っていた ]
だからその時から、あんまり友達できなかったっていうのは、僕が作らなかったとかそういう話じゃなくて、時間がずれてたんですよ。性格の問題じゃないんですけど。
のちのち性格がそうだって言われてしまうっていう。
徳光:
いや、私は言ってませんよ。
それは野球選手になろうと思って投げてたの、石を?
江川:
いや全然。距離が伸びていくのが楽しいだけですね。
のちのちですね。だからその風の乗せ方が、ボールの回転が普通の人よりいいということになっていくんですけど、その時やってる時はそう思ってないです。
「プロ野球選手になる」と思ってないですから。
徳光:
当時は?
江川:
憧れがありましたけど、もう山の中ですから、プロ野球選手なんかどこ見てもいないんですよ。
1人もいませんから。なれるなんて思ってないですね。
徳光:
でね、江川さん投げるのはよくわかります.
ただ足が速かったんですよね、子ども時代ね。

江川:
はい。まずまず。
体育でソフトボール投げという競技があるんですよ。
5年生と6年生の大会があるわけですね。
たまたま3年生で投げちゃったら、5年生より記録が伸びちゃったんですよね。
3年生の時に大会出ようとしたら、学校側がやっぱり低学年の人が高学年を超えるのはよくないということになった。なったらしいです。なって出れなかったですよ。
徳光:
分かるな、でもそれは。
江川:
教育上そういうことですよね。
4年生になった時に、「去年出れなかったから出してみよう」っていうんで、5年生の大会に4年生で初めて出たわけですね。
そしたら5年生の記録抜いちゃったんですよ。それでこれはまずいと。
徳光:
教育上。

江川:
うん。教育上まずいですよね。あんまりにもいっちゃってるんで。
だからもうこれ、5年生になったらソフトボール投げはダメだと言って、幅跳びに変えてくださいって言われたんですよ。
で、幅跳び跳んだら、5年生の記録があったやつを抜いたんですよ。
5年、6年は僕幅跳びなんですよ。ボール投げ出てないんですね。
徳光:
幅跳びはだって、足が速くないとダメですよね。
江川:
速くてバネないとダメなので、それがなんとなく、結構足速かったんだなって証明になるという感じですね。
徳光:
それ遺伝ですか?
それともやっぱり河原での石投げが良かったのかな。走ってって投げるとか。
江川:
それは大きいと思いますね。石投げと、あと鉱山なので段々で家があるんですよ。
家があるまでに100段ぐらい階段上がるので、そこ2〜3段ぐらい飛び越えて上がってきましたから。
それで足腰もたぶん強くなっていったんだと思います。
徳光:
じゃあ自然児なんだ。
江川:
自然ですね。
遠藤:
体はでも、もともと大きかったんですか?
江川:
大きい方ですね。一番後ろでしたから。
前から並んでいくと一番後ろだったので。

[ 現役時代は身長183cm・体重90kg ]
徳光:
ご両親も大きくてらっしゃるんですか?
江川:
父が168cmで母が158cmですから、そんな大きくないです。
