新幹線の駅を挟んで北と南でにぎわいや開発に大きな差があると言われる静岡県浜松市だが、いま変化の兆しが見え始めている。どのような姿へと変貌を遂げるのか?浜松の“ミライ”を見つめる。
“静寂”の駅南地区 目覚めの時?
人口78万人を有する静岡県下最大の都市・浜松。
しかし、中心部に位置するJR浜松駅を挟んで北側と南側では、その様相は大きく異なる。

商業施設や飲食店が点在する北側エリアに対して、これまで大規模な開発が進んでこなかった南側エリア。
それがいま、変化の兆しを見せ始めている。
駅南地区は現在、ビルが立ち並んではいるものの空きテナントが目立ち、商店街はほとんどシャッターが閉められた状態で、市が2024年に実施した調査では滞留人口が駅北の半分以下だった。

これには近隣住民も「寂しいというか貧相」「発展途上というか中途半端な感じ」と自嘲気味に話す。
企業と大学が描く駅南の未来
こうした中、自動車メーカー・スズキは駅南地区に保有する土地にビルを建設した上で本社機能の一部を移転させる見通しで、2026年秋頃に着工し、2029年春に完成するとみられている。
また、JR浜松駅南口から徒歩7分の場所にある小学校の跡地にキャンパスを移転させるのが常葉大学で、新キャンパスは再来年春にも開校する見通しだ。

このため、中野祐介 市長も「キャンパス移転を起爆剤にして、街中全体のさらなるにぎわいを常葉大学のみなさんと一緒になって進めていきたい」と力を込める。
“象徴”アクトの再生とポテンシャル
一方、変貌を遂げるのは駅南地区だけではない。
浜松駅に直結し、県内で最も高い地上45階建てのアクトタワー。
3月にはセキスイハイム東海や静岡銀行など地元企業が出資するファンドが所有権を取得し、セキスイハイム東海の小林昭次 社長は「アクトタワーというのは1つの独立したビルではなく、楽器博物館、展示会場、ホールと何回も行き来する場でもあり、いろいろな意味がある。持っているポテンシャルを極力引き出していきたい」と強調する。

現在はオフィスの稼働率が高い反面、休日に訪れる人が少ないという課題を抱えていることから、テナントの入れ替えも含めて地域の活性化につながるビルへと進化させたいと意気込み、小林社長は「できれば地元企業に譲りたいという(前所有者の)思いを受け止め、今後の運営に生かしていかなければならない。街づくりや浜松の街の繁栄は当然考えている」と将来を見据えた。
共創オフィスで「つながらまいか!」
さらに遠州鉄道は1月、中央区田町に所有する旧飲食店テナントビルをリノベーションし、オフィスビルへと用途転換させる計画を発表。
丸山晃司 社長は「人が集まればいろんな交流が生まれると思うし、その交流から新たな事業の種などが生まれると思うので、我々も一緒に共創をして新しいものを作り上げていければ」と狙いを明かす。

遠州地方の方言で「とにかくやってみよう」を意味する「やらまいか」にかけて、掲げるコンセプトは「つながらまいか!」。
偶然の出会いや会話から、地域の課題解決や新たなサービスの芽が生まれる共創の場となることを目指し、若年層の流出に歯止めをかけたい考えで、丸山社長は「中心市街地の活性化、にぎわいの創出が1つの解決策になると信じているので、我々も地元の企業として頑張っていきたい」と述べた。
新たな潮流が生まれつつある浜松。
この流れを加速させ、魅力ある街にしていくためにも、民間に頼るだけでなく行政としてもしっかりとしたビジョンと下支えが求められている。
