2度の大火を機に大規模な再整備事業が進む北九州市小倉北区の『旦過市場』。新たな施設は、災害に強く、地域の賑わい作りの拠点にもなる商業・学術施設を目指して計画されている。しかし、物価高騰などの影響で、当初予定していた民間事業者の撤退や100年以上続く『立ち飲み』の名店など、移転・廃業を余儀なくされる店が相次いでいるのが実情だ。果たして、“新旦過市場”計画は、どうなっていくのか。

建設中の“新旦過市場”内部は?

歴史ある木造の市場から覗く鉄骨の建造物。度重なる災害、そして老朽化も目立つ旦過市場の再整備の要となる4階建ての複合商業施設だ。

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「市場の皆さんも中を見て頂いたんですけど、『高さもあって、圧迫感なくて広くていいね』という声は頂いてます」と『北九州市神嶽川旦過地区整備室』の草野尚嗣室長が内部を案内する。

市場の関係者との打ち合わせを重ねながら整備されているこの施設は、1階に市場の商店など約40店舗が入り、2階が飲食フロア、3階と4階が駐車場になる計画だ。

完成自体は2026年7月の末と話す草野室長。2025年から始まった工事は、いよいよ大詰めを迎えている。

商業施設の建設が進む一方で、市場の店主の中には大きな決断をした人もいる。

100年続く『角打ち』名店が閉店

「もうこの景色もなくなるんでしょうね。この景色が良いんですけどね。本当に壊していいのかな」と話すのは、北九州が発祥といわれる『角打ち』が楽しめる『赤壁酒店』の店主、森野敏明さん。

『赤壁酒店』店主 森野敏明さん
『赤壁酒店』店主 森野敏明さん

5代目の敏明さんは、4代目の母の秀子さんと共に100年以上続く店を守ってきた。

「旦過市場が、いまの旦過市場になる前からここに住んでたんですよ。

決まった物しか飲まないような人ばっかりだったので、『このお父さんが来たらこれよね』とか、いろいろあったね」と森野さんは、店の常連さんを思い返しながら懐かしそうに語った。

文字通り、市場と共に歩みを進めてきた赤壁酒店。旦過市場を象徴する店の1つとして大勢の人に愛されてきたが、再整備に伴い店の移転を求められた。

元の店舗から、仮設店舗に移動し、施設の完成後、商業施設に移る予定だった。

一旦、仮設店舗に移り、営業を再開した森野さんだったが、元の店舗を失った喪失感は図りしれなかった。

更に、今後、新しい施設に入居しても「そのままの安い価格を維持出来ていくのか?管理費や火災保険が商業施設になると跳ね上がる?」。商業施設に出店する初期費用は、自己負担。資金面でも森野さんの不安は拭えなかった。

「前のままだったら、そのままずっとやっていた。それが潰されて、新しいもの建てられて『ここに入りなさい』って言われても…」と森野さんの4代目の母親も納得いかない気持ちが残る。

そして、2人は悩んだ末、店を廃業することに決めたのだ。赤壁酒店は2023年3月、約100年の歴史に幕を下ろした。

「何なら自分がお金を出すから、店を続けて欲しいって人もいる。そういう店にできて良かったなぁっていう風に思います」と森野さんは胸を張る。

経費大幅アップで公募仕切り直し

市場の老舗が苦渋の決断を強いられる中、肝心の再整備事業は、遅れを余儀なくされている。最大の課題が、完成を2026年7月に控えた商業施設の2階から4階を運営する事業者が、未だに決まっていないことだ。

当初は、市場の商店主らが2階を買い取って運営する予定だったが、資金不足を理由に断念。

その後、市内の企業が市の公募に応じる意向を示したが、2026年2月24日付けで『物価高騰などの影響で収益が見込めない』との理由で応募を辞退した。

これを受け、北九州市は、最低売却価格をこれまでの12億3800万円から8億5100万円まで値下げして、事業者を再公募する方針を明らかにした。市は、議会に報告して4月20日から再公募を開始し、6月末までに優先交渉者を決めたい考えだ。

総事業費23億→57億へ大幅増

再整備にかかる総事業費が、建設資材価格の高騰などを受け、当初より23億円ほど増え、約57億円に膨らんでいる。

また、安全性を考慮して、川沿いに並ぶ建物の解体を重機から手作業に変更したことで、工期の遅れも発表された。再整備の完了は、当初より3年遅れて2030年になる見通しだ。

「建物の老朽化であったり浸水被害という防災面の課題を解決して、100年続く旦過市場をまたこれからの100年に繋いでいけるように北九州市と市場の皆さんで連携しながら全力で取り組んでいきたい」(旦過整備室 草野尚嗣室長)

北九大も資金不足 寄付金集まらず

一方、商業施設とは別に川沿いに建設予定の北九州市立大学の新学部などが入る施設の建設も2026年中に始まる予定だが、こちらも資金不足が深刻だ。

事業費の内訳では、大学の負担分、約7.5億円の内、3億円が寄付で賄われる予定だが、現在集まっているのは、わずか1500万円に留まっている。

再整備により、賑わいが増すことや災害に対する安全面の向上が期待されている旦過市場。古くからの店舗が移転や廃業を決める中、果たして、事業計画は今後、どう進むのか?市民の注目が集まっている。

(テレビ西日本)

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