学校のプールが使えない―近年の猛暑と設備の老朽化は、全国の学校が直面する課題だ。こうした状況を打開しようと、福井市では新たなプール学習が始まった。「テンション上がる」と子供たちがバスで向かったのは、市内のスポーツクラブ。学校や子供たちにとっても、受け入れる施設にとってもメリットがあるという取り組みを取材した。
プール学習はバスで10分のスポーツクラブへ
福井市の足羽小学校で、プール学習前の休み時間に子供たちが向かったのは、学校のプールではなくバス。
「楽しみ!」「テンション上がる」と口々に話す子供たちを乗せ、バスが走る事10分。
到着したのは、市内にあるスポーツクラブ「ルネッス福井西店」。この日は、足羽小の2年生から4年生のプール学習が行われた。
児童たちは、専門のインストラクターから泳ぎのレベルに応じてきめ細かな指導を受けた。
「学校のプールと比べてどう?」と尋ねると「きれい」「雨が降ってもできるっていうのがいい」「泳ぎ方を教えてもらえた」といった声が返ってきた。
猛暑で屋外プール学習は約2割が中止に
福井市教委によると、近年の猛暑の影響で、市内の小学校では2025年度のプール学習の約2割が中止となった。
担当者によると、屋外にある学校のプールでは、気温や日差しの影響で熱中症指数(WBGT)が基準を超えてしまい、授業を中止せざるを得ないという。
こうした事態を受け、福井市では2025年度から民間の屋内施設を活用したプール学習を試験的に導入。今年度は7校に拡大し、足羽小学校でも初めて実施された。
猛暑対策と並んで学校が抱える課題が、プールの老朽化だ。
足羽小学校のプールは1970年代に設置され、すでに54年が経過している。福井市内の小学校のプールの約9割は、1960年代から80年代に設置されたもの。建設資材によっても異なるが、耐用年数は45年から60年とされており、全体の約4割が改修を検討する時期を迎えている。
担当者は現状について「大規模改修が必要な学校もあるし、少なからず毎年補修をしながらやっている状況。児童の安全安心のために必要な補修はしていかないといけないので、予算もかかっている」と述べる。
維持管理にかかるコストは年々積み上がっており、学校が自前のプールを維持することが難しくなっているのだ。
「プロに教わることで子どもの上達が早い」――学校とクラブ双方にメリット
民間施設の活用は、学校側だけでなくスポーツクラブ側にもメリットが。
クラブのインストラクターは「スイミングに来ない子供たちと接する機会があって、水の楽しさを伝えられるいい機会だと思っている。学校授業では個々の泳力差が出てくるので、すべての子供が楽しんで満足感を得られるようなレッスンを心がけているので、水泳が好きになる子供が増えれば」と話す。

教員も「天候に左右されないので確実にプール学習ができるし、プロに教えてもらえるので子供たちの上達がすごく早い。我々の指導の勉強にもさせてもらいたい」という。
さらに温水プールを使うことで、夏場以外にもプール学習を実施できる可能性も広がっている。
課題はバスの時間と費用
一方で、この取り組みには課題も残る。児童をバスで移動させるための時間と費用だ。今回、足羽小学校から「ルネッス福井西店」までの移動は片道約10分だったが、学校によって条件は異なる。
福井市では今後、バス移動に伴う時間や費用をはじめとする課題を検証した上で、それぞれの学校の実情に応じたプール学習のあり方を検討していくとしている。
猛暑、施設の老朽化、そして持続可能性。複数の課題が残る中でも、全国の学校が直面する課題解決に向けた取り組みが始まっている。

