開山期以外は登山道が閉鎖されている富士山で、4月に入り滑落事故が立て続けに発生したことを受け、静岡県富士宮市の須藤秀忠 市長は4月10日、閉山期における登山について「禁止するルールを作らなければならない」と訴えた。
富士山に閉山期が設けられているワケ
富士山は開山期(山梨県側:7月1日~9月10日/静岡県側:7月10日~9月10日 ※富士宮ルートの5合目~6合目に限っては6月下旬~11月上旬)を除いて、山頂へと通ずる登山道がすべて閉鎖となっている。
これは道路法に基づく安全上の措置で、通行した場合には6カ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処される可能性がある。
閉山中は救護所や山小屋が営業していないほか、気象条件の厳しい富士山では猛烈な吹雪や突風に見舞われることが多く、山岳遭難のリスクが極めて高いからだ。
このため、静岡・山梨の両県や両県警は閉山期の登山を自粛するよう呼びかけている。
“盲点”突いた閉山期登山に危機感
ただ、法律により立ち入りが制限されているのは登山道だけであり、現実には閉山期の遭難事故が毎年後を絶たない。
静岡県側では2026年に入り4件の遭難事故が起きていて、うち3件は外国人が関連していた。
こうした状況に危機感を抱いているのが富士山の麓に位置する富士宮市の須藤秀忠 市長で、「県道(登山道)を通らなければ違反にならないと言う人がいる。そこに警戒感を持っている。それで罪を逃れようとする登山者がいる」と訴える。
救助隊は命懸け 市長が叫ぶ登山禁止
須藤市長は1月にも閉山期の遭難事故を未然に防ぐために「罰則制度を徹底していくよう県に要請したい」と述べていたが、4月10日の定例記者会見でも「禁止するルールを作らなければならない」と主張した。

背景にあるのは市長として“部下を守る”責任を感じているからだ。
富士山における遭難事故を認知した場合、たとえそれが閉山期であっても「人命最優先」の観点から警察や消防の山岳遭難救助隊が出動する。
しかし、前述の通り“冬”の富士山はどんなにベテランであっても危険と隣り合わせで、須藤市長は「救助に向かう警察や消防の隊員は命懸けで救助に行く。二次遭難が起きる可能性は十分にある。市長としては危険を冒しての救助はできるだけ避けたい。(登山者が)登らなければ、そういう危険を冒さなくて済む」と話す。
救助費は“自治体負担” 市長は怒り
また、隊員が命を賭してまで現場に駆けつけても、救助に要した費用は遭難者自身ではなく地元の自治体による“持ち出し”となっている。
須藤市長は、こうした現状が閉山期の登山を“後押し”していると考えていて、「遭難しても助けてもらうのに自分の費用負担がなくて済むと考えること自体が安易すぎる。ずるい。それではいけない」と怒りをにじませる。
このような考えから、従前より「言うことを聞かず勝手に登っている。自己責任。富士山を甘く見ている」と指摘するなど、閉山期の富士山における救助有料化の必要性を訴えていて、10日の会見でも「自分(遭難者自身)で(救助費用を)持ってもらいたい。そういう覚悟をしてもらいたい」と口にしたが、「そもそも(閉山期に)登らせないこと。登山家は実績を作るためにいろいろ挑戦するのだろうけれども、それは人の迷惑を考えないでやるだけの話で、とんでもないこと」と付け加えるのを忘れなかった。
厳冬期こそ過ぎたものの、山頂は4月に入ってからも最高気温の平均が-2.9℃、最低気温の平均が-12.0℃、1日の平均気温が-7.6℃と、まだ“冬”の状態が続いている富士山。
静岡県は救助の有料化について山梨県と定期的に協議を続けているものの、現在のところ具体的な方向性は見いだせていない。
(テレビ静岡)
