保育所などに通っていない子どもを、親の就業状況に関わらず月に最大10時間預けられる「こども誰でも通園制度」が4月から全国の自治体でスタートした。通院やリフレッシュタイムなどのひとり時間の確保、さらには「人見知りが強くて心配」という我が子を同世代の子どもたちと触れ合わせたいといったニーズに応える制度だ。富山市では全国に先行して昨年10月から導入しており、利用者の声や現場の実態を取材した。

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「来月で2歳になるのに人見知りが強くて」 利用のきっかけは親の切実な思い

富山市に住む佐幸由希さんは、1歳の長女・咲奈ちゃんと一緒に大沢野地区にある認定こども園「クレヨン」を訪れた。佐幸さんが利用したのが、まさにこの「こども誰でも通園制度」だ。

「5月で子どもが2歳になるが人見知りが強くてこれから大丈夫かなと思っていた時に、この『こども誰でも通園制度』を知ってぜひ利用したいと思ったのがきっかけ」と佐幸さんは話す。

普段は自宅で咲奈ちゃんをみている佐幸さんにとって、子どもを社会的な環境に慣れさせたいという思いは切実だ。お母さんと離れている間、咲奈ちゃんは1歳児のお友達と一緒に散歩へ出かけた。その間、佐幸さんは近くのスーパーで買い物を済ませ、約1時間後に迎えに戻った。

子どもにも親にもメリット 同世代との関わりが成長を後押し

受け入れを担うクレヨンの吉野愛希先生は、制度の意義をこう語る。「普段家にいると大人との関わりが多いと思う。『誰通』にくると同じ年代の友達と関わることができ、いいのではないか」。

「誰通」とは「こども誰でも通園制度」の略称として現場で使われている呼び方だ。家庭で過ごす子どもが同世代と触れ合う機会を得られるという点で、子どもにとっても大きなメリットがある。

一方、保護者にとっても活用の幅は広い。富山市の事例を見ると、保護者が病院に通う際の預け先として利用したり、一人の時間を確保してリフレッシュする目的で活用するケースが多いという。佐幸さんのように子どもを保育園の環境に慣れさせる目的のほか、入園前に複数の保育園を見て比べる「おためし」感覚で利用するケースもあるという。

富山市では昨年10月から先行スタート 利用は今年2月末までにのべ172回

富山市は全国の自治体に先行して昨年10月から制度を導入しており、今年2月末までにのべ172回の利用があった。今年度からは登録施設が新たに6カ所増え、21カ所となった。

富山市内で実績を積み重ねてきた制度が、4月からいよいよ全国に広がったことで、子育て中の家庭にとっての選択肢は大きく広がる可能性がある。

課題は保育士不足 「部屋に余裕があるときに受け入れができるという感じ」

一方で、制度の拡充に伴う課題も浮き彫りになっている。入園児を迎える4月は保育士不足を背景に、受け入れを見合わせる施設もあるのが現状だ。

佐幸さんが利用したクレヨンでも、保育士の数が十分ではなく、利用者を毎日受け入れられるわけではないという。村上まゆみ園長はその実情をこう明かす。「職員の数が足りないので部屋に余裕があるときに受入れができるという感じ。私も現場に入っていくという形しかいまはとれない」。

園長自らが現場に立つことで何とか受け入れを続けている状況であり、サービスの継続性という観点からは不安定な面も否めない。

取材の最後、佐幸さんが次回の予約を確認する場面があった。「次回の予約15日、空いていますか?水曜日だと思うんですけど」という問いに、村上園長は「水曜日なら大丈夫です」と応じた。こうしたやり取りの中に、制度への現場の苦労がにじんでいた。

制度の定着へ 保育士の人材確保が急務

「こども誰でも通園制度」は、専業で子育てをしている家庭や、保育所に通わせていない家庭にとって、これまでなかった支援の受け皿となる。子どもの社会性の育成、保護者の負担軽減、保育施設の体験利用といった多様なニーズに応えられる制度であることは、富山市の先行事例が示している。

しかし、制度が絵に描いた餅にならないためには、受け入れ側の保育施設の体制整備が欠かせない。サービスの拡充と並行して、保育士の人材確保に引き続き取り組むことが急務である。全国展開を機に、制度の理念が地域の現場でしっかりと根付くよう、継続的な支援と環境整備が求められる。

(富山テレビ放送)

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