日本にいながら様々な国のグルメが楽しめる飲食店。
海外出身の方がオーナーのお店も多く、本場の味を楽しめるのが魅力ですが、そうしたお店が今後減っていくかもしれません。
政府が2025年に改正したビザに関するルールを巡って、外国人オーナーたちは様々な決断をしています。
甘みとスパイスが効いたバターチキンに、ほうれん草味のカレー。
大きなナンとともにいただく本格的なインド料理が味わえる「サッカール」。
ネパール出身の経営者・ケーシーさんは2008年に来日し、4年後に店をオープンしました。
地元住民に愛され経営は順調でしたが、ある不安が。
ケーシーさん:
3年以内に町のカレー店がほとんど消えるかもしれないと思いました。現時点で経営(・管理)ビザを申請している大体の方が下りていないという話(を聞いた)。
町からカレー店が消えるかもしれない。
不安の理由は、ケーシーさんが持つ経営・管理ビザのルール改正です。
経営・管理ビザとは、日本で起業などをする外国人が取得する在留資格。
外国人の家族も日本で一緒に住むこともできます。
経営・管理ビザを取るには、2人以上の日本人または永住者を雇用すること、もしくは資本金500万円以上が要件でした。
しかし、2025年10月にルールが改正。
日本人や永住者を必ず雇用することに加えて、資本金はこれまでの6倍の3000万円に引き上げ。
要件が厳格化したのです。
その背景は、経営・管理ビザの悪用です。
鈴木法務大臣(2025年10月当時):
許可基準が諸外国の同様の制度と比べて緩く、一部の外国人に移住の手段として悪用されている等の指摘がされていた。
経営・管理ビザを持つ外国人の数は、4年ほど前までは横ばいでしたが、2022年末から大きく増加。
2025年末には約4万7000人と10年前と比べると倍以上になっています。
出入国在留管理庁によりますと、経営実態のないペーパーカンパニーを設立して経営・管理ビザを悪用するケースも増えています。
こうした背景もあり、厳格化されたビザの要件。
外国人経営者たちにとって特に高い壁となっているのが資本金3000万円です。
ケーシーさんにとっても6倍です。
2025年、古くなった店の冷蔵庫やエアコンなどを入れ替えたばかりですが、その時かかった約700万円は資本金に認められないといいます。
ケーシーさん:
(資本金が)500万円から3000万円になることと、日本人または永住権の方の社員を雇わないといけないことが一番厳しい。募集かけてもなかなか出てくれるかどうか分かんないし、長く続けて働いてくれるかどうか、それも全然わからない。
現在、4人の従業員は全員ネパール人。
「日本人または永住者を雇用」という要件も高いハードルです。
家族滞在ビザを持つ妻のプラティクサさん。
長男のバラン君(9)とパラスナちゃん(6)は日本生まれ。
ケーシーさんはこの先、店を続けられるか不安があるため、もしもに備え始めているといいます。
ケーシーさん:
もしビザが下りなくて帰国することになると、日本語が母国(ネパール)で使えないわけじゃないですか。今回のことによって(子供たち2人は)転校してインターナショナルスクールに行かせる。
経営・管理ビザをすでに持っている人は2028年10月までであれば、新要件を満たさなくても更新できる可能性があります。
それ以降はどうなるのか。
入管庁のガイドラインには、3000万円がなければ一律にビザを認めないわけではなく、「総合的に考慮する」とあいまいな表現です。
ケーシーさんの次回の更新は2029年。
更新は認められるのでしょうか。
ケーシーさん:
更新の時に審査が厳格化になる時期になります。私自身が人生で半分以上日本にいるので、実際に店をやっているかどうか、店の実態とか売り上げとかを見て判断していただければ助かるかな。
外国人経営者に突き付けられた厳しい要件の数々。
弁護士の資格を持ち、ビザの申請業務なども行う行政書士のもとには多くの相談が寄せられているといいます。
Global HR Strategy・杉田昌平弁護士:
(改正前に10月より前に)急いで駆け込みで申請しましょうというのもあった。今からでも3000万円用意しようとか。徐々に準備しなくちゃいけないけど、でも目の前のことが忙しいというのが多分大半の人の状態だと思います。
一方、ある決断を下した店も。
東京・練馬区にある香港がゆの専門店「3米3」です。
ランチタイムの店内は多くのお客さんでにぎわっていました。
人気の訳は、だしを効かせたスープにエビやホタテ、そして皿からはみ出るカニなどの具材がたっぷり。
健康志向のメニューで客の7割は女性。
この人気店のオーナーは香港出身のチャンさんです。
しかし、店の入り口には「閉店」の貼り紙が貼られています。
貼り紙には「正直終えることを考えていなかった」と悔しさをにじませる言葉とともに、5月20日での閉店を告げています。
チャンさん:
北京語で520は愛してるという意味。お客さんもスタッフも皆さん愛してるよという意味で、5月20日。
閉店まで残り1カ月半。
店内では多くの常連客が別れを惜しむように味わっていました。
常連客:
近くに住んでいてよく来る。引っ越してきてからすごく通っていたし、体調不良の時もすごくお世話になったので、もう寂しい。
今回、チャンさんが店を閉める決意をした理由は…。
チャンさん:
一番大きい理由は経営・管理ビザのルールが厳しくなったところ。
店の資本金900万円に対して約3倍のお金。
チャンさんにとっては厳しいものでした。
チャンさん:
このルールは新しくビザを新規で取る人たちだけではないかと、自分たちの中で思ってて、まさかすでに経営してる人たちも対象になるとはびっくりした。本当に悲しいです、すべてかけたお店だから、時間もお金も。
店をオープンしたのは2020年8月。
コロナ禍で来日できず、開店の瞬間に立ち会えなかったチャンさん。
店の様子を防犯カメラの映像で香港から見守っていたといいます。
こうした苦難を乗り越え、地元にも愛される人気店となった矢先の今回のルール改正。
チャンさん:
お客さんにも愛されてるのに、3000万円を出せないと更新できないのは本当に悲しい。今までの努力が認められていない。
店内には常連客からたくさんのメッセージが。
「閉店になると知り、とても残念です」「これからもたくさん通おうと思っていた」などの閉店を惜しむ言葉の数々に、チャンさんは「さみしい。1つ1つに本当に愛がある。離れるのが本当に悲しい。(メッセージ)持って帰る。一生の宝物」と話しました。