「実務にどう落とし込んでいくんだろう」弁護士が戦々恐々とする共同親権 DVの問題が水面下に沈む懸念 「実務にどう落とし込んでいくんだろう」弁護士が戦々恐々とする共同親権 DVの問題が水面下に沈む懸念 

4月1日から、離婚後の法制度が大きく変わります。

「共同親権」の選択が可能になり、親同士の協議なしでも養育費を請求できる「法定養育費」が新設されます。

離婚経験者からは賛否が真っ二つに割れており、弁護士からも「不安」の声が上がっています。

関西テレビ「newsランナー」は、当事者・専門家・新サービスの開発者を取材し、変わりゆく離婚の実態に迫りました。

■「縁切り坂」に人が集まる春 離婚は3月がハイシーズン

淡いピンクの桜が咲き始めた3月末。大阪市内の高津宮には多くの参拝者が訪れていました。

この神社、縁結びの場としてだけでなく、”悪縁を切る”神社としても知られています。境内にある「縁切り坂」がその象徴です。

高津宮の小谷真功宮司によると、江戸時代、この坂は「3曲がり半」と呼ばれ、昔の離縁状が”三行半”で書かれていたことになぞらえて「縁切り坂」と呼ばれてきたと言います。

【小谷真功宮司】「端的に言えば、男女の縁を切るということで、女性が願をかけて縁切り坂を下ったそうです」

坂を下って悪縁を断ち切り、向かいの階段を上ると良縁に恵まれるとのこと。

訪れた参拝者の一人は「今しんどいことがあるので、それを断ち切りたい。人は変えられないので、自分をリセットするためにというか」と話していました。

厚生労働省の調べによると、3月は離婚件数が最も多く、”離婚のハイシーズン”とも言われています。新年度の節目に合わせて関係を整理しようとする動きが、数字にも表れています。

■「ものすごい大きい転換」4月1日から選べる”共同親権”

これまで日本では、離婚後は父親か母親のどちらか一方だけが親権を持つ「単独親権」のみが認められてきました。

4月1日からは、父母双方が親権を持つ「共同親権」を選択できるようになります。また、すでに離婚している場合でも、申し立てによって共同親権への移行が可能です。

新制度のもとでは、子どもの食事や着るもの、習い事といった日常的な事柄については、これまでどおり両親のどちらか一方で決めることができます。

一方、転居や預金口座の開設など財産管理にあたる事柄については、親同士が話し合って決めることが求められます。

■「ものすごい大きい転換」だが「DVや虐待は不安要素」と弁護士

月に30件もの離婚相談を受けるみお綜合法律事務所の小川弘恵弁護士は、この制度変更を「ものすごい大きい転換」と表現します。

「今まで単独親権の場合ね、会えないから、養育費だけ払って『ちょっと何だかなあ』っていうもやもやを感じてた方もいらっしゃるわけで」

別居していても子育てに関わる権利が生まれ、子どもとの交流が増えるというメリットがある一方、懸念も示しました。

「家庭内でDVあったりとか、モラハラ暴力あったりした時に、そういう関係が続いていくんじゃないか」

家庭裁判所は、子どもへの虐待やDVなどが判明した場合、共同親権を認めないとしています。

しかし小川弁護士はその運用に疑問を呈します。

「そういうのって密室で行われることだし、なかなか証明してって言ったって、証拠出してって言ったって、ないケースが多いんですよね。そこは大きな不安要素だと思いますけどね」

■「実務にどう落とし込んでいくのか」

スタジオでも、ジャーナリストの浜田敬子氏が同様の懸念を語りました。

特に被害者が女性である場合、「居場所を知らせたくない、もっと言えば隠さなきゃいけないような人たちもいる」と指摘。

そうした人々にとって、相手から共同親権を主張された場合に、非常に困難な状況になりうると述べました。

弁護士の西脇亭輔氏も「戦々恐々というか、実務にどう落とし込んでいくんだろうという悩みは、今、弁護士が一番感じていること」と率直に話します。

【西脇亭輔氏】「もめたうえで裁判所に強制的に決めてもらうという立場の人が、この共同親権を使うとしたら、表に出づらいDVの問題が水面下に沈んでしまわないか」

制度の枠組みは整いつつあるものの、実務における判断の積み重ねはこれからです。

■「断っていたと思う」「選択肢として考えていた」 当事者の声は真っ二つ

取材班が街で離婚経験者に共同親権についての意見を聞くと、反応は対照的でした。

5年前に離婚し、現在は親権を持たない男性は「毎週子供とも会って、家族とも会って」と話し、「もし4月以降に離婚していたら、選択肢として考えていたと思います」と語りました。

一方、親権を持つ女性は「向こうが共同親権って言ってきても、断っていたと思う。共同親権とかの話になったら、余計にもめてたのかなって思う」と述べました。

さらに取材班は、2年間にわたる親権争いを経験したさつきさん(仮名)にも話を聞きました。元夫からのモラハラに苦しみ、家庭にお金を入れてもらえなくなったことで離婚を決意。養育費の見返りとして親権を要求されましたが、裁判所が認めませんでした。

【さつきさん(仮名)】「私はもう2度と顔を見たくない。共同親権やからと言って共同にしたいとも思わへん」

そう語る一方で、離婚後の生活についてはこう続けました。

【さつきさん(仮名)】「お金の余裕はないけれども、心の余裕が出てきたので、幸せにはなっています」

■スマホで”離婚調停” 精神的負担を減らす新サービスが続々

精神的ダメージも大きい離婚。その負担を軽減しようとする新たなサービスも相次いで登場しています。

その一つが、大日本印刷(DNP)が提供する「メタバース役所」です。

インターネット上に設けられた相談窓口で、利用者は自分の分身となるキャラクター=アバターを使い、24時間いつでも匿名でAIカウンセラーに離婚などの悩みを相談できます。

DNPの山川祐吾さんは「窓口で相談する姿を見られたくないという希望もありまして、相談するハードルが下がると考えています」と話します。

昨年は三重県桑名市など7つの自治体で実証実験が行われており、今後のさらなる拡大を目指しています。

■「平均8カ月→最短2カ月」 自身の経験が生んだ”スマホ調停”

もう一つの新サービスが、昨年11月にスタートしたスマホ調停アプリ「wakai」です。

開発したのはwakai社の的場令紋社長。自身のつらい離婚調停経験がきっかけでした。

【wakai 的場令紋社長】「実際に離婚調停を経験した時に、初めてのことだったので、制度自体にすごい不満と不便を感じて。スマホ上だと平日の夜や土日もできるから時間短縮できる。決めることを決めてお互い人生のリスタートを」

このサービスは法務大臣の認証を取得しており、弁護士が調停人として入ります。スマホ上で日時や話し合いたい内容を選びながら進める仕組みで、双方がアプリに登録することが必要です。

従来の離婚調停では平均8カ月かかるところを、このアプリを使えば最短2カ月に短縮できるとしています。費用も平均100万円ほどかかるとされているのに対し、最大30万円ほどで済むといいます。

■もう一つの新ルール「法定養育費」も4月から

今回の制度改正では、共同親権だけでなく「法定養育費」も新設されます。

これまでは親同士が協議をしないまま離婚した場合、養育費を請求することができませんでした。

4月1日からは、離婚時に取り決めをしていなくても、別居の親に対して、子ども1人につき月額2万円の法定養育費を請求できるようになります。

西脇弁護士によると、強制執行をしやすくする「先取特権」も設けられるとのことで、「調停で後々決めたあとに、過去に遡って請求もできるので、その間のつなぎとして月額2万円が取れるようになる」と説明します。

生活の安定につながるプラスの変化でありながら、やはり最大の論点は共同親権の運用がどうなるかです。

(関西テレビ「newsランナー」2026年3月31日放送)

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。