「カド番という状況になったのでかなり苦しいシリーズでもありました」——それでも、藤井聡太六冠は最後に笑った。
3月29日に鳥取市で行われた棋王戦第5局で、増田康宏八段を77手で破り、逆転防衛で4連覇を達成。公私ともに初めての鳥取訪問は、将棋ファンのみならず地域全体を巻き込んだ「藤井フィーバー」となった。そして、鉄道好きの藤井六冠が鳥取入りの移動中に乗車した特急列車や、対局の合間のおやつとして選んだ「串だんご」にまで、全国から注目度が高まることになった。
1勝2敗の「カド番」から逆転防衛
先に3勝した方がタイトルを獲得する棋王戦。藤井六冠はシリーズ途中、1勝2敗と「カド番」に追い込まれる苦しい展開を強いられた。そこから2勝2敗に盛り返し、迎えた最終第5局の舞台となったのが、鳥取市にある旧大庄屋の屋敷「有隣荘(ゆうりんそう)」だ。
対局は77手目に決着。増田八段を退け、棋王戦4連覇を果たした藤井六冠は、「それだけに防衛できたということは非常に嬉しく感じています」と安堵の表情を見せた。
鳥取市内のホテルでは大盤を使った解説会も開催され、約300人のファンが固唾をのんで戦況を見守った。観客からは「鳥取市から棋王戦の決定の瞬間に立ち会えて感慨深い」、「(鳥取県西部の)大山町から来ました。最高でした。また見たいですね、呼んでほしいです」といった声が聞かれ、会場は歓声に包まれた。
「スーパーはくと」乗車に大興奮 最終第5局へ“鉄分”チャージ
実は今回が公私ともに初めての鳥取県訪問だった藤井六冠。28日の前夜祭では、約200人の将棋ファンを前に鳥取の印象を尋ねられると、語り始めたのは名古屋から移動に使った特急列車「スーパーはくと」の感想だった。
「気動車の特急なんですけど、特に智頭急行線内は最高速度も130キロで、振り子も搭載させているということで、非常に迫力のある走りと車窓の景色も山の間を縫って行くような感じで非常に素晴らしくて、そちらも含めてとても楽しめたかなと感じています」
大の鉄道好きとして知られる藤井六冠。日本鉄道賞の選考委員を務め、受賞した「新型やくも」の車両を視察したこともある。国内屈指の性能を誇る気動車特急に初乗りし、存分に「鉄分」を補給できたことが、逆転防衛への力になったのかもしれない。
注目の「ご当地おやつ」が一気に話題に
タイトル戦で毎回注目される「ご当地おやつ」。今回の棋王戦第5局では、鳥取市の和菓子店「宝月堂」の「もちキューブ」、おなじみの「因幡の白うさぎ」、大山乳業の「白バラフルーツ」といった鳥取ならではのスイーツが並んだ。
なかでも全国的な話題を集めたのが、藤井六冠が午前のおやつに選んだ「打吹公園だんご」だ。白あん・小豆あん・抹茶あんの三色の小ぶりなだんごが串に刺さった姿は、まさに「だんご三兄弟」。おやつが提供された3月29日午前10時ごろには、藤井六冠の地元・愛知県をはじめ全国からオンラインショップへの注文が相次いだ。
製造元である倉吉市の石谷精華堂で総務部長を務める澤田由美さんは、「まさかうちの団子が、ということでとてもうれしかったです」と驚きを隠せない様子。「白あんなので『白星』につながる縁起の良いところも決めていただいた理由なのかなと思います」と笑顔で語った。
反響は店頭にも波及し、売り上げは通常の約3倍に達したという。
桜と「藤井フィーバー」が重なる鳥取の春
3月28日には鳥取市でもソメイヨシノの開花が発表され、打吹公園だんごの名前の由来でもある打吹公園もいよいよ桜シーズンを迎える。藤井フィーバーと桜便りが重なった鳥取の春は、例年以上の盛り上がりを見せている。対局は終わっても、その熱気はもうしばらく続きそうだ。
(TSKさんいん中央テレビ)
