全国の公立学校で、日本語支援を必要とする子どもが増えている。
文部科学省の調査では、その数は約6万9000人。過去10年で約1.9倍に増えた。
現場からは「人手が足りない」という声が上がる一方、支援の拡充だけでなく、同じ教室で学ぶ子どもたちの学びの質をどう守るかも大きな課題だ。
日本の学校習慣体験も 横浜市「ひまわり」の取り組み
横浜市の日本語支援拠点「ひまわり」には、日本に来て間もない子どもたちの“初期指導”を担う施設だ。この日は、中国・ネパール・フィリピンなど約20人の小中学生が日本語を学んでいた。日本語に加え、掃除や日直など日本の学校習慣も体験しながら学ぶのが特徴だ。
子どもたちは1カ月間、週2日は通常の学校、週3日間はひまわりで学び、困りごとを伝えるための必要最低限の日本語=“サバイバル言語”を身につける。そうすることで、友達や先生とのコミュニケーションがとりやすくなり、早く学校生活になじめるほか、担任の先生の負担軽減にも繋がっているという。
受け入れは年8回、昨年度は多い時には70人を受け入れた。来日直後の子どもを地域の拠点で支える仕組みとして、他の自治体からも注目を集めている。
“日本語ゼロ”の子どもが毎月転入
横浜市は、国の基準(日本語指導が必要な子ども18人につき1人の日本語指導教員)よりも手厚い「5人につき1人」の体制を整えている。それでも、日本語が全く分からない状態で入ってくる子どもが多い学校では、人が足りないという。
横浜市立東小学校では児童の約4割が外国籍または外国にルーツを持ち、日本語指導が必要な児童は現在約60人にのぼる。
成田玲子校長は、指導教員の配置が子どもの数に比例して自動的に増える仕組みではない点を指摘したうえで、「日本語のレベルに応じて配分を変えながら、なんとかやりくりしている状況です」と現場の苦労を語る。
さらに、国の基準については、「ほぼ日本語ゼロで来る子が多い本校では、18人に教員1人ではとてもやっていけない」と話し、特に9月に転入が集中するため、「一番大変な時期にも機能するような人的な支援が必要だ」と訴えた。
支援の充実と学びの質の両立を
こうした課題を踏まえ、文部科学省の有識者会議では、基礎的な日本語や生活習慣を学べる場を地域に作るなど「初期指導の重要性」が示された。一方で、これまで外国人の子どもが少なくノウハウがない自治体も多く、翻訳アプリなどAIも活用しながら、全国どこでも対応できる体制づくりが求められている。
松本文科相は、日本語支援の充実と教師の負担軽減が大切だとしたうえで、「日本語指導が必要な児童生徒への支援と同時に、日本人生徒の学びの質に影響が出ないようにする視点も重要だ」と話した。
日本での進学・就職めざす外国人留学生の今
兵庫県・姫路市にある私立姫路女学院は、外国人留学生の育成モデルづくりに挑戦している学校のひとつだ。

2024年4月、インドネシアから入学した2人の留学生。1年10カ月ぶりに再会した彼女たちは、学業や課外活動に励み、日本語も大幅に上達していた。
姫路女学院はインドネシアにある中学校に教師を派遣して日本語教育などを行ってきた。さらに、国や自治体の支援も受けて、高校3年間を日本で過ごした留学生の日本での就職までを一貫して支える取り組みを進めている。
この取り組みの第1期生で現在高校2年生のプテリ・アレタさんはダンス部の中心メンバーとして活躍。振り付けをチェックするなど部員を引っ張る存在に。もう一人のチェルシー・カワングさんは「将来は金融系の仕事に就きたい」と日本で働く具体的なキャリアを描き始めていた。
“親の都合で来日した高校生”が最も苦労する現実
一方で、皆が日本での進学や就職を明確に目指して来日するわけではない。
外国人児童の学習支援について研究する群馬大学の結城恵教授は、「親の都合で高校生ぐらいで来日した生徒が最も苦労する」と話す。
また、保護者が低賃金労働に従事している場合は、子ども自身がキャリアを描けないケースも多いという。子どもが日本語を話せず、学校の授業についていけなくても、親が問題ないと思っている場合も多いからだ。結果的に子どもも同じ道を辿り、生活保護に繋がることもあるという。そのため、教授は「負の連鎖を生まないためには、日本語教育と同時にキャリア教育も必要。子どもたちが自分の可能性をイメージできることが重要だ」
外国人が増える地域で必要なのは「長期の視点」
これからは、これまで外国人住民が少なかった地域にも、多くの外国人人材が入ってくることが予想される。その中で大切なのは、学校や自治体がしっかり対応できる体制を整えること。そして、短期的な労働力の確保にとどまるのではなく、次の世代の子どもたちが日本社会で活躍しながら共生できるよう、長期的な視点で支援していくことだ。

少子高齢化とともに地域社会の多様化が進む中、持続可能な共生社会をどのように築いていくのかが、今まさに問われている。
(フジテレビ社会部文部科学省・こども家庭庁担当 松川沙紀)
