福井・美浜町の水晶浜に、デコレーショントラック=通称「デコトラ」約450台が全国から集結した。中には「家が建つくらい」カスタムを繰り返したというツワモノも。デコトラの知られざる魅力を探った。
わずか1日…砂浜がトラックから放たれる光に包まれる
本格的な海水浴シーズンを前に、静けさに包まれる美浜町の水晶浜。しかし、ゴールデンウイーク期間中のわずか1日だけ、異様な熱気に包まれる。
ブロロロロ…
波音をかき消すように、低く響くエンジン音を響かせ押し寄せたのは、デコレーショントラック、通称”デコトラ”。ナンバーは、北は北海道、南は九州まで。その数、約450台。
色とりどりのデコトラが、あっという間に砂浜を埋め尽くした。
美浜町の水晶浜で開かれるデコトラのチャリティー撮影会は10年目を迎え、いまや1800人が訪れるこの時期の風物詩となっている。
子供がデコトラ好きで訪れたという三重県の親子連れ。息子は「ミラーやデコボコしたワイルドな形が好き」と目を輝かせる。
岐阜県から来た男性は「小学生の時、『デコトラ伝説』というテレビゲームをやったのがきっかけ」で20年くらいデコトラを見るのが趣味だといい「他にはないキレイさ。男のロマンやね」と夢中でスマホを向ける。
好きが高じて“デコチャリ”を作ってしまった少年も
映画「デコトラの鷲(しゅう)で哀川翔が乗車に登場した名車も登場し、世代を超えたファンたちが熱い視線を送る。
息子がデコトラ好きだという越前町の親子連れ。息子が好きなパーツは「バイザー。トラックの上に付いてるやつ」と詳しく説明してくれる。さらに彼は“デコチャリ”にハマっているという。
デコトラ好きが高じて作ったデコチャリにまたがり、さっそうとカメラの前で走って見せてくれた。
免許取得前に少しでもデコトラに乗る気分を味わいたくて、知人の力を借りながら2年前に制作。一番こだわっているのは「電飾とラッパ」だそう。
祖父がトレーラーに乗っていたことがきっかけでデコトラが好きになり「大人になったら、デコトラに乗りたい。とにかく派手な」と夢を語る。
趣味=仕事で楽しい!
一方、デコトラのオーナーたちにとっては、手塩に掛けた自慢の愛車を披露できる絶好機会だ。
デコトラ歴30年以上のオーナー(大阪在住)は今回が3回目の参加。この後、四国のイベントに“はしご”するという。デコトラの魅力は「目立つところ!」だといい「これで仕事ができているから、ありがたい。厳しい世の中になっとるけども…」と語る。「仕事と趣味がイコールでつながってたら楽しく仕事できる!」
デコトラ歴30年、兵庫県伊丹出身の男性は「昔、若い頃にできんかったことを、今ならできるかなと」夢中になっているという。
同じくデコトラ歴30年、大阪から10回ほど参加しているという男性は、これまでに2台のデコトラに…「費用は言わん…とんでもないです。まあ、家は買えるくらい。まぁコツコツなんでね。だから、あまり振り返りたくない」と豪快に笑う。
一番のこだわりは…と開いて見せてくれたのは運転席のドア。「カウンタックが好きで。カウンタックみたに開けたいけど持っているのがトラックなんで…」と鋭意リニューアル中だという。
水晶浜のPRに…地元も期待
この撮影会を主催するは、大阪に本部を置く半世紀以上続くデコトラの老舗愛好家グループ「全国浪花会」だ。会長は「デコトラを集められる場所が中々ないが、たまたま地元の方に『デコトライベントやってみんか?』と話をもらった。水晶浜は景色もいいし、夏場だけじゃなくて地域活性化できればと思って」と開催を決めたという。
会長は「やっぱり、みな恐い人ばっかりやと思って一般的には煙たがられることが多いけど、顔には似合わず優しい方が多いので、そのギャップを埋められるようにやっていけたら」と語る。
集まったデコトラの中には、全国でたった1台しかないといわれる「はしご車」のデコトラや、デコレーションしたゴミ収集車なるものも。
他にも、超高級スーパーカーも勢ぞろいするなど、さながら車のテーマパーク状態だ。地元の人は「デコトラ愛好家のネットワークは全国に及んでいるので水晶浜をPRしてくれたら、こんなに良いことはない。もっともっと活性化して、昔の水晶浜のにぎわいに戻ってほしい」と話す。
日が沈み、クライマックス。あいにくの雨は、濡れた路面を鏡に変え、トラックの光が闇夜に浮かび上がる。一夜限りの光の海だ。
午後8時。ルール重んじる彼らは、まばゆい余韻だけを残し、それぞれの日常へと走り去って行った。
