ホルムズ海峡の封鎖状態に解消のめどが立たないなか、原油先物価格は、再び1バレル=100ドルの大台を突破した。

代替となる植物油や肥料にも価格上昇の懸念が拡大し、値上がりの波が食品の広い範囲に及ぶ可能性が出てきた。
小麦が1年9か月ぶり高値
アメリカ・シカゴの商品取引所では、9日、小麦の先物価格が、一時、1プッシェル=6.4ドル台と2024年6月以来の高い水準をつけた。
関係者の間では、アメリカの天候不良で収穫量が減るうえに、原油高などにより輸送や生産コストが膨らむ懸念が広がっている。

4月からの輸入小麦の政府売り渡し価格は、3年ぶりに引き上げられた。
価格改定は半年に1回で、今回の引き上げに、中東情勢悪化の影響は反映されていないが、製粉業界からは、「情勢悪化が長期に及んだ場合、政府売り渡し価格が上昇し、販売価格を引き上げせざるを得なくなる可能性もある」との声が上がっていて、小麦粉を原料とするパンや麺類の価格にも影響が及んでいく可能性がある。
12日に取材した都内のベーカリーは、「大きさは変えたくないので、値段を上げていくような形にならざるを得ないおそれがある」と話し、来店客のひとりは、値上がりした場合「食費が直接的にダメージを受ける」と心配していた。
植物油の代替需要は
食用油のメーカーも原油供給の動向に高い関心を寄せている。
アメリカではトランプ政権がバイオ燃料推進策を打ち出すなか、ガソリンやディーゼル燃料に大豆油などのバイオ燃料を一定量混合することが義務づけられている。

需要が伸びるとみられる大豆油の価格は上昇基調を強めていて、アメリカ・シカゴ商品取引所の先物価格は2年半ぶりの高値圏にある。
原油の供給量の減少が続いた場合、代替としてのバイオ燃料需要はさらに増えることが見込まれ、食用油の原料となる大豆油や菜種油をはじめとした植物油の価格を一段と押し上げる方向に働く可能性が指摘されている。
ある食用油メーカーは「オイル市場は世界的に不安定な状況が見込まれ、さらなる価格改定をせざるを得ない場面も想定される」と話しているほか、外食チェーンからは「影響は植物油だけでなくラードなどにも広がって、揚げ物全般に波及する事態が心配される」との声があがる。
肥料ショックは再来するか
農業生産に欠かせない肥料にも中東情勢が影を落とす。
化学肥料は、植物に必要な栄養素を化学的に合成するなどした肥料だ。
尿素や硫安(硫黄と窒素を含む硫酸アンモニウム)などがあり、石油や天然ガスを原料とし、製造の過程で硫黄が使われるケースもある。
中東は世界有数の化学肥料やその原料の生産地域だ。
英調査会社Argus Mediaによると、尿素は世界輸出シェアの約34%を、硫黄は約50%を中東が占める。
ホルムズ海峡封鎖で輸送が難航しているうえに、カタールが天然ガスの生産を一時停止したことで、相場には上昇圧力がかかっている。数日で尿素価格が10%以上急騰する場面も見られるなど、世界的に警戒レベルが跳ね上がっていて、影響の大きさが2022年のロシアによるウクライナ侵攻時の歴史的な肥料高を上回るおそれが出ている。
JA全農の担当者は、「化学肥料原料を多く輸入しているマレーシアなどからの調達は安定していて、当面急激なひっ迫はないだろう」としているが、国内の肥料業界からは、夏以降十分な量を供給できるのか、懸念の声も聞かれるようになってきた。
原油高による重油や農業資材の値上がりに、肥料高が追いうちをかけ、野菜や果物、コメなどの農産物価格にも波及していくことになるのか、注視していく必要がありそうだ。
中東情勢が混迷の度合いを深め、景気への逆風が強まるなか、食の安全保障をめぐっても影響を軽視できない事態を招来するおそれが広がりつつある。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)
