新年度予算案の審議が参院に舞台を移す国会だが、予算成立後には「国家情報会議」の設置など、高市政権が推し進める政策の実現に向けた法案審議が焦点となる。
今国会で成立するかどうか、注目される法案の一つとして挙げるのが、第2次世界大戦中の「空襲被害者」に対する補償を可能とする法案だ。
超党派の議員が作成したこの法案を巡り、高市首相が就任後の国会で、「政府として何かできるのか、しっかりと考えていく」と答弁したことから、実現を期待する向きもある。
「空襲被害者」に補償 根強い慎重論から“節目の年”は実現せず
空襲被害者の救済法案は、「戦後80年」を迎えた2025年、成立への機運が高まったが、実現しなかった。通常国会での成立を目指していた超党派の「空襲議連」の幹部は、「戦後80年という節目で実現できなかったのは非常に痛い」と無念そうに語った。

法案には、第2次世界大戦中の米軍による空襲被害者に対する「補償(一時金50万円)」に加え、「国による調査の実施」「追悼施設の設置」が盛り込まれている。しかし、空襲以外の戦争被害の補償との整合性や、財政上・実務上の課題などから慎重な意見が根強く、法案の提出にも至っていない。
自民党のいわゆる「厚労族」の議員は、「認めると他の戦争関連の補償も認めないといけなくなる。財源の問題もある」と指摘する。
議連の試算「必要財源は20億円」 調査・施設を求める被害者の声
議連の会長を務める平沢勝栄元復興相(自民党)は「1人50万円の補償として計算すると必要な財源は約20億円」と説明する。
議連が試算する額は全国で空襲の被害に遭い、身体にけがをした人を「空襲被害者」と認定した場合のもので、空襲経験者でも外傷を負っていない人は含まれない。
また、国による調査や追悼施設については、議連の会合に出席した被害者から、「国としてちゃんとした調査をしてもらえないと、この問題は終わらない」「ここまでの被害がありながら、公設の施設がないのはおかしい」といった声が相次いでいた。
石破政権から高市政権へ 「政府として何ができるか」に再び期待感
実現に向けては、戦後80年の節目に首相を務めた石破茂氏に期待する声もあった。石破氏が議連のメンバーであり、また2024年の自民党総裁選の演説で、何度も空襲について触れていたからだ。
「石破さん本人と救済法案の実現を約束した」と話す議連幹部もいたが、結局、在任中に事態が進展することはなく、「石破政権でもできなかったのだから、他の内閣では厳しい」(自民党の閣僚経験者)と、一時は悲観的な見方も広がった。
しかし、高市首相は、2025年11月の国会で、野党議員から法案について質問され、「引き続き議員立法の動きを注視しながら、政府として何かできるのか、しっかりと考えていく」と答弁。また、議連で会長代行を務めている松島みどり元法相が首相補佐官に就任したこともあり、再び期待が高まる状況となっている。
議連会長「政府がやるとさえ言ってくれれば」
ただ、議連の幹部は、「実現は困難」との見方を示す。「高市さんも心情では理解してくれているが、どうしても優先順位が高い経済対策や外交などに労力を割かざるを得ない。内閣支持率が高いとはいえ党内の反対派と無理にけんかする意味もないだろう」との理由からだ。
議連会長の平沢氏は、今後も集会を開くなどして議論が埋没するのを防ぎたい考えだ。平沢氏は「政府がやるとさえ言ってくれれば、この問題は解決する話だ」としている。
(フジテレビ政治部・菊池俊匠)
